幼児が叩くのはなぜ?親にできること

「いや!」と言いながら親の顔をペチン。公園でおもちゃを取られて友だちをバシッ。叩かれた痛みより、この先どうなるのかという不安のほうが大きいかもしれません。その裏には、乱暴な子になるのでは、自分の対応が悪いのでは、という心配があるでしょう。まずは子どもの今の力、その場面が求めていること、安全の心配を分けて考え、家族が恥ずかしさや無理な期待なしにくり返せる対応を1つ選びましょう。

ひと言でいうと

叩くのはたいてい、幼児がことばや自分をおさえる力より大きな気持ちを抱えた瞬間の、すばやい行動です。人が多いとき、おもちゃの取り合い、大人の「だめ」、興奮、疲れ。そのどれのあとに起きるかに目を向けましょう。きっかけがあるからといって、傷つけていいわけではありません。でも、どの力とどんな環境の工夫がいちばん役立ちそうかを、大人に教えてくれます。

実際には

今すぐの仕事は、手を止めて、相手を守ることです。教えるのはそのあと。みんなが落ち着いているときに、やさしくふれる、「やめて」の身ぶり、その場を離れる、助けを求める、を練習しましょう。誰かがけがをしたら、まずその子を気づかい、おおげさな謝罪を無理にさせずに、かんたんなやりなおしに幼児を加わらせます。

はじめに見ておきたいこと

叩いた場面をいくつか見てみましょう。直前に何があったか、子どもがどう伝えたか、大人がどうしたか、落ち着くまでどれくらいかかったか。眠い、具合が悪い、うるさい、人が多い、預け先が変わった、といった事情にも目を配ります。1回の出来事やほかの子とのくらべっこより、場面をこえたパターンのほうが多くを教えてくれます。

叩いたときの4つのこと

  • そばに寄り、子どもを傷つけたりこわがらせたりせずに、叩く手を止める。
  • 短いひと言で。「叩くと痛いよ。叩かせないよ」。
  • 気持ちに名前をつける手伝いを。「おもちゃを取られて、怒ったんだね」。
  • 次にどうするかを練習する。「『かして』って言うか、呼びにきてね」。

叩かずにいられるかのテストではなく、小さな実験として。まずは、つまずきを防げそうな工夫から。疲れている夕方は人の多い場所をさけ、取り合いになりやすいおもちゃは2つ用意する。必要な線引きは短く、代わりの行動の練習は落ち着いて学べるときに。

よくある質問

「ごめんなさい」を言わせたほうがいい?

無理にあやまらせると、やりなおすことより、「ごめんね」を言うふりを教えてしまうことがあります。まず落ち着かせてから、相手の様子を見にいく、くずれた積み木をいっしょに積みなおす、といったやりなおしを見せましょう。

幼児が叩くのはふつう?

ことばや自分で気持ちを整える力が育つあいだは、体を使った行動が出ることがあります。回数、激しさ、場面、全体の発達が大切です。

叩いたら罰を与えるべき?

はずかしめや体罰より、落ち着いた安全の線引きと、代わりの行動を教えることのほうが役に立ちます。

家族や保育園と、そろえる

パートナーや祖父母、保育士さんとも、同じように気づいてくり返せる対応を決めておきましょう。たとえば「そばに寄って、傷つけずに叩く手を止める」と「叩くと痛いよ、叩かせないよ、と短く伝える」。どれだけ早くなくなるかではなく、大人が何をするかを約束します。性格は違っても、同じ伝えかたが通じて、同じ大事な線引きがあることが子どもの助けになります。

1週間で見直す

保育園の日、忙しい日、のんびりした日をふくむ1週間で、叩いた場面をふり返りましょう。書くのは、次の判断を変えそうなことだけ。引き金になったこと、子どもの伝えかた、大人の対応、安全、落ち着くまでの様子。採点や細かな記録はいりません。

1週間たったら、叩きそうな場面が前より安全に、予測しやすく、子どもが気持ちを伝えやすくなったかを考えます。役に立ったことは残し、誰にも続けられないことはもっと簡単に。変化がない、発達全体が気がかり、というときは、具体的な場面を持って専門家へ。

安全と、子どもの尊厳

叩いたときは、教えるより安全が先です。そばに寄り、必要最小限の力で止め、ことばは少なく。みんなが落ち着いたら、つながりなおして、より安全な行動を練習しましょう。あたたかさは必要な線引きをなくすことではなく、きっぱりすることに、はずかしめ、おどし、たたくことは決して必要ありません。

つまずきやすいこと

  • 叩かずにいることを、なぐさめやつながりをもらうための合格テストにしてしまう。
  • 子どもがいっぱいいっぱいなのに、お説教を続ける。
  • 一度にいくつもの対応を変える。
  • アプリにお墨付きをもらうまで、心配をそのままにする。

よい変化の見つけかた

叩くことへの前進は、まず、手が出る前にひと呼吸おく、「やめて」の合図がはっきりする、大人の手助けを受け入れる、激しさが小さくなる、立ちなおりが早くなる、といった形で現れることがあります。方向は1〜2週間で見ましょう。今の子どもにできる以上のことばやがまんや自立を求めているようなら、工夫を変える合図です。

相談したいとき

叩くことが、けがにつながる、どこでも続く、毎日の暮らしに大きくさしつかえる、あるいは聞こえ、コミュニケーション、体の動き、人との関わりの心配や、できていたことの消失をともなうときは、小児科医、保健師、発達の専門家に相談しましょう。今まさに危ない、急な体調の変化がある、というときは、すぐに119番など急ぎの窓口に連絡を。

覚えておきたいこと

叩くことへの関わりは、その子の今の力に合わせて。手が出にくい環境をつくり、使える代わりの行動を見せ、安全の線ははっきり保ち、叩くことを子どもや親への評価にしないこと。変化や暮らしぶり、発達の全体像がまだ気になるなら、次は専門家にみてもらう番です。

ポイント: 叩くことには、いちばん安全で役に立つ次の一歩を選び、くり返せる形にしましょう。

American Academy of Pediatrics, Positive discipline

CDC, Developmental Milestones