プレッシャーをかけずに、幼児のことばを伸ばす関わりかた
「ほら、『ちょうだい』って言って」。早くしゃべってほしい気持ちから、つい言わせようとしてしまう。ことばを促したいときの悩みの裏には、ちゃんと育っているのか、関わりかたが足りないのでは、という心配がひそんでいます。まずは子どもの今の力、その場面が求めていること、安全の心配を分けて考え、家族が恥ずかしさや無理な期待なしにくり返せる関わりを1つ選びましょう。
ひと言でいうと
ことばは、練習ドリルではなく、こたえ合うやりとりのなかで育ちます。大人が子どもの興味についていき、短くコメントして、少し間をとると、子どもには伝える理由と、伝えるすきまが生まれます。次々と質問を重ねるとテストのように感じられ、シンプルな実況より、かえってことばが少なくなることがあります。
実際には
子どもの音やことばをくり返し、そこに役立つひと言を足しましょう。「ぶーぶ」なら「あかいぶーぶ」「ぶーぶ、いったね」。見る、指さす、話す、どれでも答えられる選択肢を出し、はっきりした合図はすべて、伝えたこととして受けとめます。絵本、歌、毎日の流れは、自然なくり返しをつくってくれます。決めたことばを言うまで、食べものや手助けをおあずけにするのはやめましょう。
はじめに見ておきたいこと
ふだんのやりとりをいくつか見てみましょう。直前に何があったか、子どもがどう伝えたか、大人がどうこたえたか、もどかしさから立ちなおるまでどれくらいかかったか。眠気、体調、まわりの音、人の多さ、預け先の変化も見ておきます。1回の場面やほかの子とのくらべっこより、場面をこえたパターンのほうがよくわかります。
毎日の4つの関わり
- 今の子どものことばより、少しだけ先のかんたんなことばで話す。
- くり返しの多い歌を歌う。
- 「りんごとバナナ、どっち?」と選択肢を出す。
- 絵本を読み、子どもにリードさせる。
ことばの成果をはかるテストではなく、小さな実験として。まずは、いちばん伝えやすくなる工夫から。「げんこつやまのたぬきさん」のように、同じフレーズがくり返される手遊び歌は、子どもが一部を言いたくなる入り口になります。必要な線引きは短く、新しい言いかたの練習は落ち着いているときに。
よくある質問
ことばをくり返し言わせたほうがいい?
ことばを見せるのはかまいませんが、「言って」とくり返し求めると、プレッシャーになることがあります。身ぶりや、それらしいことばも受けとめながら、ことばを見せつづけましょう。
フラッシュカードは役に立つ?
カードのくり返し練習より、毎日のやりとり、同じものをいっしょに見ること、意味のあることばのほうが、自然な学びの機会になることが多いものです。
発音はなおしたほうがいい?
小さな子には、何度も「ちがうよ」と言うより、正しいことばを自然に聞かせるほうがたいていよいでしょう。
まわりの大人とも同じように
祖父母や保育士さんとも、同じように気づいてくり返せる関わりを分かち合いましょう。たとえば「少しだけ先のかんたんなことばで話す」、そして「くり返しの多い歌を歌う」。子どもがいつ話しはじめるかを約束するのではなく、大人が何をするかを決めておきます。関わる人の個性はそれぞれでいいのです。子どもの伝えかたが同じように受けとめられることが大切です。
1週間、様子を見る
保育園の日も、家でのんびりする日もある、ふつうの1週間で、ことばの様子をふり返りましょう。書きとめるのは、次の判断を変えそうなことだけ。きっかけ、子どもが使えた伝えかた、大人のこたえかた、安全、立ちなおり。子どもを採点したり、何もかも記録したりはしなくて大丈夫です。
1週間後、伝えることが前より楽そうか、やりとりが予測しやすくなったかを考えます。役立ったことを続け、続けにくいことはもっとシンプルに。変化が見られない、発達全体が気になるときは、具体例を持って専門家に相談しましょう。
話す気持ちを守る
ことばを、食べもの、なぐさめ、手助け、愛情の条件にしないでください。はっきりした身ぶりにはこたえ、人前で言わせるのはさけましょう。ことばの伸び、理解、人とのやりとりが気になるとき、なかでも話せていたことばが消えたときは、聞こえやことばの検査を頼みましょう。
つまずきやすいこと
- 話すことを、なぐさめやつながりをもらうためのテストにしてしまう。
- 子どもがいっぱいいっぱいなのに、さらにことばを重ねる。
- 一度にいくつもの関わりを変える。
- アプリが「心配」と言うまで待つ。
よい変化の見つけかた
ことばの前進は、話すことばだけでなく、音の種類がふえる、身ぶりがふえる、同じものをいっしょに見る時間が長くなる、といった形でも見えてきます。何週間かかけて、自分から伝えようとする、新しく言ってみる、やりとりが続きやすくなる、を見ましょう。方向がはっきりしない、もどかしさが強い、聞こえが心配、伝える力が一つでも消えた、というときは評価を。
相談したいとき
ことばの悩みが、けがにつながる、どこにいても続く、毎日に大きくさしつかえる、聞こえ、コミュニケーション、体の動き、人との関わりの心配や、できていたことの消失をともなうときは、小児科医、保健師、言語聴覚士など発達の専門家に相談しましょう。今すぐ危険がある、急に具合が悪そう、というときは119番など急ぎの窓口へ。
覚えておきたいこと
ことばを伸ばす関わりは、その子の今の力に合わせて。伝えやすい環境をつくり、使える言いかたを見せ、安全の線ははっきり保つ。ことばの育ちを、子どもや親への評価にしないことです。伸び、暮らし、発達全体がまだ心配なら、専門家にみてもらうのが次の一歩です。
ポイント: ことばを伸ばすには、いちばん安全で役に立つ次の一歩を選び、くり返せる形にしましょう。