幼児の分離不安、親が知っておきたいこと
保育園の玄関で、先生にだっこされながら手をのばして泣きさけぶ。毎朝のその姿に、胸がしめつけられる親は多いでしょう。その裏には、この子は大丈夫なのか、預けかたがまずいのでは、という心配があるかもしれません。子どもが今できること、その場面が求めること、安全の心配。この3つを分けて考え、家族が責めあわずにくり返せる対応を1つに決めましょう。
ひと言でいうと
離れるときのつらさは、親とのきずなと、親が離れていくことがわかるようになった成長の表れです。病気、新しい預け先、旅行、家族の変化のころには強くなりがちです。さよならで泣く子も、そのあとすぐに落ち着いて遊びはじめることがあります。玄関での様子で一日全体を判断せず、立ちなおりがどうだったかを先生に聞いてみましょう。
実際には
さよならは短く、正直に。子どもにわかる、予測できる「戻ってくる合図」を使いましょう。「おやつを食べたら、おむかえに来るね」のように。こっそりいなくなると、次からの別れが信頼しにくくなることがあります。なじみの物、くり返しの朝の流れ、急がない再会が助けになります。つらさが極端、信頼できる人といても落ち着かない、家族のふつうの暮らしがまわらない、というときは相談しましょう。
はじめに見ておきたいこと
別れの場面をいくつか見てみましょう。直前に何があったか、子どもがどう伝えたか、大人がどうしたか、落ち着くまでどれくらいかかったか。眠気や体調、騒がしさ、人ごみ、預け先が変わったことも関係していないか見てみます。1回の大泣きやほかの子とのくらべっこより、場面をこえたパターンのほうが多くを教えてくれます。
別れの4つのステップ
- これから何が起きるかを、かんたんなことばで前もって話す。
- さよならは、あたたかく、短く。
- 預け先の大人に、なじみの遊びで子どもを迎えてもらう。
- おむかえでは、落ち着いてつながりなおす。
別れの出来をはかるテストではなく、小さな実験として。まずは、つまずきを防げそうな工夫から。前の晩に「明日は保育園。お昼寝して、おやつを食べたら、おむかえね」と話しておき、朝は玄関で一度ぎゅっとして「いってらっしゃい、またあとでね」。必要な線引きは短く、新しい流れの練習は落ち着いているときに。
よくある質問
泣かないように、こっそり出ていったほうがいい?
予告なしにいなくなるより、予測できるさよならのほうが、たいてい信頼を支えます。
分離不安が急にぶり返したのはなぜ?
ストレス、病気、発達の変化、生活の流れの変化で、一時的に甘えが強くなることがあります。
強くするために、無理にでも離れたほうがいい?
圧倒されるような体験より、少しずつ、予測できる練習のほうが、一般に子どもを支えます。
保育園や家族と、同じ流れを
保育士さんや祖父母とも、同じように気づいてくり返せる流れを決めておきましょう。たとえば「何が起きるかを前もって話す」と「さよならはあたたかく短く」。どれだけ早く泣かなくなるかではなく、大人が何をするかを約束します。性格は違っても、同じ伝えかたが通じて、同じ大事な線引きが続くことが子どもの安心になります。
1週間で見直す
登園の日も、家ですごす日もあるふつうの1週間で、別れの場面をふり返りましょう。書くのは、判断を変えそうなことだけ。何がきっかけだったか、子どもが使えた伝えかた、大人の対応、安全、どう立ちなおったか。採点や細かな記録はいりません。
1週間たったら、別れが前より安全に、予測しやすく、子どもが気持ちを伝えやすくなったかを考えます。役に立ったことは残し、誰にも続けられないことはもっと簡単に。変化がない、発達全体が気がかり、というときは、具体的な場面を持って専門家へ。
安全と、子どもの尊厳
別れの場面でも安全が先です。泣いて暴れるならそばに寄り、必要最小限の力で危険を止め、ことばは少なく。落ち着きが戻ったら、まずつながりなおし、それからより安全な行動を練習します。あたたかくすることは、必要な線引きをなくすことではありません。そして、きっぱりするのに、はずかしめも、おどしも、たたくことも必要ありません。
つまずきやすいこと
- 泣かずに別れることを、なぐさめやつながりをもらうための合格テストにしてしまう。
- 子どもがいっぱいいっぱいなのに、言いきかせを続ける。
- 一度にいくつも変える。
- アプリにお墨付きをもらうまで、心配をそのままにする。
よい変化の見つけかた
分離不安がやわらいでいくしるしは、まず、泣く前にひと呼吸おく、合図がはっきりする、先生の手助けを受け入れる、泣きかたが小さくなる、立ちなおりが早くなる、といった形で現れることがあります。1〜2週間で方向を見て、今の子どもが使えるより多くのことば、がまん、自立を求めているようなら、やりかたを変えましょう。
相談したいとき
分離不安が、けがにつながる、どこでも続く、毎日の暮らしに大きくさしつかえる、あるいは聞こえ、コミュニケーション、体の動き、人との関わりの心配や、できていたことの消失をともなうときは、小児科医、保健師、発達の専門家に相談しましょう。誰かに今すぐ危険がある、子どもが急に具合が悪そうに見える、というときは、119番など急ぎの窓口へ。
覚えておきたいこと
分離不安への関わりは、その子の今の力に合わせて。安心しやすい環境をつくり、使える流れを見せ、安全の線ははっきり保ち、泣くことを子どもや親への評価にしないこと。変化や暮らしぶり、発達の全体像がまだ気になるなら、次は専門家にみてもらう番です。
ポイント: 別れの場面は、いちばん安全で役に立つ次の一歩を選び、くり返せる形にしましょう。