無理やり貸させずに、幼児に「貸し借り」を教えるには
公園の砂場で、ほかの子のスコップをぐいっと取る。自分のバケツは「だめ!」とかかえこむ。そのたびに「貸してあげなさい」と言っていいものか迷いますね。その裏には、この子は思いやりがないのでは、しつけがまずいのでは、という心配があるかもしれません。まずは3つを分けてみましょう。子どもの今の力、その場面のむずかしさ、安全の心配。そして、家族が無理なく、恥ずかしさなしにくり返せる対応を1つ選びます。
ひと言でいうと
貸すことには、いくつもの育ちつつある力が必要です。誰の物かがわかる、待つのをがまんできる、相手が何をしたいかを想像できる、そして物がまた戻ってくると信じられること。小さな幼児は、気前よく貸し借りできるようになる前に、まず並んで別々に遊ぶことが多いものです。無理やり手放させると、言うことは聞いても、そうした力は何も育たないことがあります。
実際には
とくに人気のおもちゃは同じ物を2つ用意し、特別な持ち物はいくつか守ってあげて、大人が手伝いながら短い順番を言葉にしましょう。大人が貸してあげる姿を見せ、命令ではなく「貸してくれる?」と頼みます。子どもが「いや」と言ったら、別のおもちゃや、時間を決めた順番で遊びを続けられることがあります。「トラックを渡せたね」と具体的な行動をほめ、一人をいい子、もう一人をいじわる、と決めつけないようにしましょう。
はじめに見ておきたいこと
取り合いの場面をいくつか見てみましょう。その直前の出来事、子どもの伝えかた、大人の対応、落ち着くまでにかかった時間。眠い、具合が悪い、うるさい、人が多い、預け先が変わった、といった事情にも目を配ります。1回の取り合いやほかの子とのくらべっこより、場面をこえたパターンのほうが多くを教えてくれます。
貸し借りを育てる4つのこと
- とくに人気のおもちゃには、タイマーを使う。
- 練習のはじめは、できれば同じ物を2つ用意する。
- 取る前に「貸して」と聞く姿を見せる。
- お客さんが来る前に、特別なおもちゃを1つか2つ、子どもに選んでしまわせる。
貸せるかどうかのテストではなく、小さな実験として。まずは環境から。友だちが来る前に「これは大事だから、しまっておこうか」と、子どもと一緒に選んでしまい、人気のおもちゃは「タイマーが鳴ったら交代ね」と時間で区切ります。必要な線引きは短く、新しいやりかたの練習は落ち着いているときに。
よくある質問
何歳になったら貸せるようになる?
個人差がとても大きいです。順番や協力して遊ぶ力は、ある誕生日に突然現れるのではなく、少しずつ育っていきます。
きょうだいは何でも共有しないといけない?
いいえ。自分だけの物があると、もめごとが減り、自分から貸すこともしやすくなります。
おもちゃをひったくったら?
ひったくりを止め、必要ならおもちゃを返し、かんたんな頼みかたや順番の流れを手伝って教えましょう。
まわりの大人と、そろえる
祖父母や保育士さんとも、同じように気づいてくり返せる対応を決めておきましょう。たとえば「人気のおもちゃにはタイマー」と「同じ物を2つ用意する」。どれだけ早く貸せるようになるかではなく、大人が何をするかを約束します。性格は違っても、同じ伝えかたが通じて、同じ大事な線引きがあることが子どもの助けになります。
1週間でふり返る
保育園の日、友だちと遊ぶ日、家ですごす日をふくむ1週間で、貸し借りの場面をふり返りましょう。書くのは、次の判断を変えそうなことだけ。きっかけ、子どもが使えた合図やことば、大人がどうしたか、安全面、立ちなおるまで。採点や細かな記録はいりません。
1週間たったら、取り合いの場面が前より安全に、予測しやすく、子どもが気持ちを伝えやすくなったかを考えます。効いた工夫は続け、無理のあるものはシンプルにします。変わらない、発達全体が心配、というときは、実際の場面をメモして専門家に相談を。
安全と、自分の物を大切にする気持ち
貸し借りの練習のあいだも、年齢に合った見守りと安全の線は保ち、そのうえで、できる範囲の自立は認めましょう。予想できる危険は環境で防ぎ、もどかしさがあふれる前に手を貸します。恥をかかせる、無理にだきしめさせる、つながりを引っこめる、を教えかたにしないでください。
つまずきやすいこと
- 貸せることを、なぐさめやつながりをもらうための合格テストにしてしまう。
- 子どもがいっぱいいっぱいなのに、言いきかせを続ける。
- いくつもの工夫を、同時に始めてしまう。
- アプリが「心配」と判定するまで、相談を先のばしにする。
よい変化の見つけかた
貸し借りの前進は、まず、取る前にひと呼吸おく、「貸して」の身ぶりがはっきりする、大人の手助けを受け入れる、取り合いの激しさが小さくなる、立ちなおりが早くなる、といった形で現れることがあります。1〜2週間かけて向きを見て、今の子どもが使える以上のことば、がまん、自立を求めているなら、やりかたのほうを変えます。
相談したいとき
取り合いが、けがにつながる、どこでも続く、毎日の暮らしに大きくさしつかえる、あるいは聞こえ、コミュニケーション、体の動き、人との関わりの心配や、できていたことの消失をともなうときは、小児科医、保健師、発達の専門家に相談しましょう。目の前に危険がある、急に体調が悪そう、というときは、迷わず119番などへ。
覚えておきたいこと
貸し借りは、その子の今の力に合わせて教えましょう。貸しやすい環境をつくり、使える言いかたを見せ、安全の線ははっきり保ち、育ちを子どもや親への評価にしないこと。変化、暮らし、発達全体がまだ心配なら、専門家にみてもらうのが次の一歩です。
ポイント: 貸し借りは、いちばん安全で役に立つ次の一歩を選び、くり返せる形にしましょう。