ことばは理解しているのに話さない幼児、心配したほうがいい?
「おくつ持ってきて」と言えば持ってくるし、絵本の動物も指させる。なのに、ことばはなかなか出てこない。そんなとき、様子を見ていいのか迷いますね。その裏には、この子の育ちは大丈夫か、関わりが足りないのでは、という心配があるかもしれません。まずは子どもの今の力、その場面が求めていること、安全の心配を分けて考え、家族が無理なくくり返せる関わりを1つ選びましょう。
ひと言でいうと
話せるよりも多くを理解しているのは、ことばの発達の初期にはよくあることです。でも、理解がしっかりしているからといって、それだけで、話すこと、ことば、聞こえのむずかしさがないとは言いきれません。身ぶり、同じものをいっしょに見ること、遊び、出せる音の種類、まねしようとするか、話しことばが着実にふえているかを見てみましょう。
実際には
指さしや、物を持ってくることにこたえ、その身ぶりに1〜2語のことばを重ねましょう。質問攻めにせずにことばを見せ、たっぷり間をとります。聞こえの検査と、言語聴覚士による評価で、全体の様子がはっきりします。伸びが限られている、もどかしさが強い、ほかのコミュニケーションの力が心配、できていたことができなくなった、というときは、みてもらいましょう。
はじめに見ておきたいこと
ふだんのやりとりをいくつか見てみましょう。直前に何があったか、子どもがどう伝えたか、大人がどうこたえたか、もどかしさからどれくらいで立ちなおったか。眠気や体調、騒がしさ、人ごみ、預け先が変わったことも関係していないか見てみます。1回の出来事やほかの子とのくらべっこより、場面をまたいで見えるパターンのほうが、ずっと多くを教えてくれます。
毎日の4つの関わり
- くり返しを求めずに、かんたんなことばを見せる。
- 身ぶりを、伝えたこととして受けとめる。
- 身ぶりに、ことばを重ねる。
- 絵本、歌、予測できる毎日の流れを使う。
話せるかどうかのテストではなく、小さな実験として。まずは、伝えやすくなる工夫から。子どもがコップを指さしたら「おちゃ、ね」と言いながら渡し、毎朝同じ「おはよう」の歌で始める。必要な線引きは短く、新しい言いかたの練習は、落ち着いて楽しめるときに。
よくある質問
幼児は、話せるより多くを理解できる?
はい。理解できることばの数は、話せることばの数を上回ることが多いものです。ただ、差がとても大きい、伸びがゆっくり、というときは、気になれば相談しましょう。
音に反応していても、聞こえの問題はありうる?
ありえます。聞こえの心配はわかりにくいことがあり、話す発達が遅れているときは、専門家による聞こえの検査が役立つことがあります。
このまま待っていればいい?
気になるなら、今相談しましょう。経過を見てもらうことや専門家の評価は、何かがおかしいと決めつけることとは違います。
まわりの大人と分かち合う
祖父母や保育士さんとも、同じように気づいてくり返せる関わりを分かち合いましょう。たとえば「くり返しを求めずにことばを見せる」と「身ぶりを伝えたこととして受けとめる」。いつ話すかを約束するのではなく、大人が何をするかを決めておきます。関わる人の個性はそれぞれで大丈夫。子どもの伝えかたを同じように受けとめてもらえることが助けになります。
1週間ふり返る
保育園の日、忙しい日、のんびりした日をふくむ1週間で、やりとりの様子をふり返りましょう。メモするのは、次の判断を変えそうなことだけ。きっかけ、子どもが使えた合図やことば、大人がどうしたか、安全面、立ちなおるまで。採点や細かな記録はいりません。
1週間後、伝えるのが楽になってきたか、やりとりが予測しやすくなったかを考えます。効いたことを続け、続けにくいことはもっと簡単に。伸びが見られない、発達全体が気がかりなときは、具体例を持って専門家に相談しましょう。
伝える気持ちを守る
話すことを、食べもの、なぐさめ、手助け、愛情の条件にしないでください。はっきりした身ぶりにはそのままこたえ、人前でことばを言わせるのはやめましょう。ことばの伸び、理解、人とのやりとりが心配なとき、とくにできていたことができなくなったときは、聞こえやことばの検査をお願いしましょう。
つまずきやすいこと
- 話すことを、なぐさめやつながりをもらうための合格テストにしてしまう。
- 気持ちがあふれている子に、さらにことばをかぶせる。
- 一度にいくつもの関わりを変える。
- アプリが「心配」と言うまで、相談を待つ。
よい変化の見つけかた
ことばの前進は、話すことばだけでなく、音の種類がふえる、身ぶりがふえる、同じものをいっしょに見る時間がふえる、といった形でも現れます。何週間かかけて、自分から伝える、新しく言ってみる、やりとりが続く、を見ましょう。方向がはっきりしない、もどかしさが強い、聞こえが心配、伝える力が一つでも消えたときは、評価をお願いしてください。
相談したいとき
ことばのことで、けがにつながる、どこでも続く、暮らしに大きくさしつかえる、聞こえ、コミュニケーション、体の動き、人との関わりの心配や、できていたことの消失をともなうときは、小児科医、保健師、言語聴覚士など発達の専門家に相談しましょう。目の前に危険がある、急に体調が悪そう、というときは、迷わず119番などへ。
覚えておきたいこと
理解が先に進んでいる子への関わりは、その子の今の力に合わせて。伝えやすい環境をつくり、使える言いかたを見せ、安全の線ははっきり保ち、ことばの育ちを子どもや親への評価にしないことです。伸び、暮らし、発達全体がまだ心配なら、専門家にみてもらいましょう。
ポイント: 理解が先にある子には、いちばん安全で役に立つ次の一歩を選び、くり返せる形にしましょう。