幼児のポジティブ・ディシプリン、どういう意味で何をする?
「何度言ったらわかるの!」と声を荒らげて、あとで落ちこむ。しつけについての悩みの裏には、この子の育ちは大丈夫か、自分のやりかたがまちがっているのでは、という心配があることが多いものです。まずは、子どもの今の力と、その場面が求めることと、安全の心配を分けて考えてみましょう。そのうえで、家族が恥ずかしさも無理な期待もなくくり返せる対応を1つ選びます。
ひと言でいうと
ポジティブ・ディシプリンは、あたたかさと、はっきりした線引きと、積極的に教えることを組み合わせます。言いなりになることではなく、ふつうのことの一つひとつにごほうびを用意することでもありません。幼児には、危ない行動を止め、環境を整え、代わりの行動を何度も見せてくれる大人が必要です。そうしてはじめて、ストレスのかかる場面でも、その行動を使えるようになります。
実際には
具体的な指示、限られた選択肢、筋の通った対応を使いましょう。子どもがいっぱいいっぱいのときは、まずつながることから。ただし安全の線はゆずりません。協力できたことは具体的に気づいて伝え、大人がまちがえたらやりなおしをします。おどし、はずかしめ、たたくことは、その場では行動を止めても、安心を損ない、代わりに何をすればいいかは教えてくれません。
はじめに見ておきたいこと
しつけで困る場面をいくつか見てみましょう。直前に何があったか、子どもがどう伝えたか、大人がどうしたか、落ち着くまでにどれくらいかかったか。眠さ、体調、まわりの音、人の多さ、預け先の変化も気にとめておきましょう。1回の大変な場面やほかの子とのくらべっこより、場面をこえたパターンのほうが多くを教えてくれます。
毎日の4つの実践
- 指示を出す前に、そばに寄る。
- してはいけないことだけでなく、していいことを伝える。
- 落ち着いて、言ったことをやりとおす。
- 衝突のあとは、つながりなおす。
しつけの出来をはかるテストではなく、小さな実験として。まずは、つまずきを防げそうな工夫から。遠くから「走らない!」と叫ぶのではなく、そばに行って目を見て「ここは歩こうね。手をつなごう」。必要な線引きは短く、代わりの行動の練習は、子どもが落ち着いて学べるときに。
よくある質問
ポジティブ・ディシプリンは、「だめ」と言わないこと?
いいえ。はっきりした線引きは、ポジティブ・ディシプリンの一部です。
筋の通った対応とは?
行動に直接つながった対応のことです。たとえば、おもちゃを何度も人に投げるなら、少しのあいだそのおもちゃをしまう、といったことです。
どなるのは効果がある?
どなると、その場では行動が止まるかもしれませんが、足りない力を確かに教えることはできず、こわさや、いっそうの激しさを生むことがあります。
家族や保育園と、そろえる
パートナーや祖父母、保育士さんとも、同じように気づいてくり返せる対応を決めておきましょう。たとえば「指示の前にそばに寄る」と「していいことを伝える」。子どもがどれだけ早く変わるかではなく、大人が何をするかを約束します。性格まで同じでなくていいのです。同じ伝えかたが通じて、同じ大事な線引きが続くことが、子どもの助けになります。
1週間でふり返る
保育園の日、忙しい日、家でゆっくりする日をふくむ1週間で、しつけの場面をふり返りましょう。書くのは、次の判断に役立つことだけ。引き金になったこと、子どもの伝えかた、大人の対応、安全、落ち着くまでの様子。採点や細かい記録はいりません。
1週間たったら、困る場面が前より安全に、予測しやすく、子どもが気持ちを伝えやすくなったかを考えます。効いたことを続け、誰も続けられないことは簡単にし、変化がない、発達全体が気になるときは、具体的な場面を持って専門家に相談しましょう。
安全と、子どもの尊厳
しつけの場面では、教えるより安全が先です。近くに寄って、最小限の力で危ないことを止め、話すのは少しだけ。みんなが落ち着いたら、つながりなおして、より安全な行動を練習します。あたたかさは必要な線引きをなくすことではなく、きっぱりすることに、はずかしめ、おどし、たたくことは決して必要ありません。
つまずきやすいこと
- 言うことを聞くことを、なぐさめやつながりをもらうための合格テストにしてしまう。
- 子どもがいっぱいいっぱいなのに、お説教を続ける。
- 一度にいくつもの対応を変える。
- アプリで裏づけがとれるまで、相談を待ってしまう。
よい変化の見つけかた
しつけの前進は、まず、行動の前にひと呼吸おく、合図がはっきりする、手助けを受け入れる、激しさが小さくなる、立ちなおりが早くなる、といった形で現れることがあります。1〜2週間ほどで流れを見て、子どもの今の力をこえることば、がまん、自立を求めていると感じたら、やりかたを見なおしましょう。
相談したいとき
困った行動が、けがにつながる、どこでも続く、毎日の暮らしに大きくさしつかえる、あるいは聞こえ、コミュニケーション、体の動き、人との関わりの心配や、できていたことの消失をともなうときは、小児科医、保健師、発達の専門家に相談しましょう。今まさに危ない、急な体調の変化がある、というときは、すぐに119番など急ぎの窓口に連絡を。
覚えておきたいこと
しつけは、その子の今の力に合わせて。うまくいきやすい環境をつくり、使える代わりの行動を見せ、安全の線ははっきり保ち、発達を子どもや親への評価にしないこと。それでも変化、毎日の暮らし、発達全体に心配が残るなら、専門家の評価が次の一歩になります。
ポイント: しつけは、いちばん安全で役に立つ次の一歩を選び、くり返せる形にしましょう。