毎日の暮らしで、ことばの力を育てるには
「ことばを伸ばすには、何か教室に通わせたほうがいい?」。そう考える保護者もいますが、実はことばを育てる材料は、毎日の暮らしの中にたくさんあります。出発点は、子どもがもう知っている毎日の流れを使うこと。話すことばは、伝える力のほんの一部です。わかっていること、しぐさ、声、発音、遊び、やりとりも、みんな伝える力。ここでのねらいは子どもに言わせることではなく、ふだんの姿を知って、成長や聞こえ、保護者の心配に応じて専門家につなぐことです。
ひと言でいうと
毎日の流れには、目に見える意味と自然なくり返しがあります。着がえなら体の部分の名前や選ぶこと、料理なら動きや順番、お散歩なら音や、いっしょに見つける発見。ワークブックや高い教材がなくても、こうしたやりとりはちゃんと意味があります。
実際にはどうするか
短く声をかけて、間をとり、子どものしぐさや声を「ひとつの番」として受けとめましょう。子どもが伝えたことにことばを1つ足し、その場面でくり返します。決まった時間に教えるより、毎日の流れの中で2分つながるほうが、ずっと続けやすいものです。
はじめに見ておきたいこと
まずは、子どもが今どんなことに夢中になっているか、どんなしぐさや声、ことばが自然に出てくるか、どんなときにやりとりがとぎれるかを見てみましょう。これから紹介する工夫も、絵本や歌、ごっこ遊び、毎日の流れを、くり返しのテストにするためではなく、やりとりの機会を増やすためのものです。
暮らしの中でできること
- 子どもがもう知っている、毎日の流れを使いましょう。
- 今していることを、短いことばで言いましょう。
- 次に何が来るかわかる場面で、間をとりましょう。
- 役に立つことばを、1日の中で何度もくり返しましょう。
練習は、楽しい時間にとけこませるのがいちばんです。「子どもがもう知っている毎日の流れを使う」「今していることを短いことばで言う」を生活の中で試し、子どもから何かこたえが返ってきたら間をとって、その意味を受けとめ、ことばをひとつ添えましょう。体を動かしても、しぐさで伝えても、ページをめくってしまっても、まねしなくても大丈夫です。
4つのステップのつながり
はじめに「子どもがもう知っている毎日の流れを使う」、次に「今していることを短いことばで言う」、その次に「次がわかる場面で間をとる」、最後に「役に立つことばを1日の中で何度もくり返す」。子どものこたえをありのまま受けとり、役立つ次のことばや動きをひとつ見せるだけで十分です。言ってみせることは求めません。
家族や保育園と、そろえておくこと
家族や保育園とは、最初のふたつ、「子どもがもう知っている毎日の流れを使う」と「今していることを短いことばで言う」をそろえておきましょう。大人みんなが同じことばを使う必要はありませんが、子どもがわかりやすいこたえが返ってくるようにします。話すことばが育つ間は、どの大人も、しぐさと家庭で使うすべてのことばを数に入れましょう。
しばらく続けて、ふり返る
いつもの暮らしの中で、何回か最初のステップを試してみましょう。特別な1日で判断しないのがコツです。状況、子どものこたえ、家族の回しやすさを、短く記録しておきます。記録が負担になっては本末転倒です。
見直すときは、3つめのステップでの様子とくらべてみましょう。参加しやすくなった、わかりやすくなったことは続け、家族が続けられないことはシンプルにし、変えるのは一度に1つだけ。ただし、健康、安全、発達の心配があるなら、先に専門家の評価を受けましょう。
大人にできること、できないこと
大人がコントロールできるのは、やりとりの質です。子どもの関心についていき、はっきりしたことばを使い、間をとって、こたえること。ここで紹介した工夫もそのつながりを支えるものですが、どんな遊びも、子どもに決まったことばを言わせることはできませんし、成長がはっきりしないときに評価の代わりにはなりません。
安全と、子どもの尊厳を守る
どの工夫も、プレッシャーなしで。絵本のために動きまわる子を押さえつける、ことばを言うまで必要なものを渡さない、画面だけを確かなやりとりの相手にする、といったことはやめましょう。聞こえがはっきりしない、できていたことができなくなった、強いいらだちがあるときは、専門家にみてもらいましょう。
うまくいかなくなる理由
工夫をじゃましやすいのは、問題を出すほうが会話より多くなること、くり返しを要求すること、伝わっているしぐさを無視すること、伸びが止まっても待ちすぎること。こたえるやりとりと専門家の評価はそれぞれ別の仕事で、どちらも発表会にしないでください。
前進のしるし
前進は、いっしょに見る、しぐさ、いろいろな声、自分からの一言、会話の往復といった形で、数週間かけてあらわれます。楽しさと参加もふくめて見ましょう。大人のお手本を正確にまねすることが、成功のしるしではありません。
短いメモには、回数だけでなく、どんな場面でどう参加したかも書いておきましょう。そうすれば、あとで何かを決めるとき、言わせたテストではなく、ふだんのコミュニケーションをもとに考えられます。
専門家に相談したいとき
小児科や言語聴覚士に相談したいのは、理解、表現、発音、なめらかさ、人とのかかわりが進まないとき、聞こえがはっきりしないとき、いらだちが大きいとき、できていた力がなくなったときです。相談の前に診断や基準の確認はいりません。評価は、子どものすべてのことばをふまえて行われるべきです。
覚えておきたいこと
目指すのは、言うことをよく聞く子でも、完璧な家の日課でもありません。最初の一歩からはじめて、つながりと安全を守り、時間をかけて向かう方向を見守り、一般的な情報ではわからないときは、その子のための専門家の評価を活用しましょう。
ポイント: はじめは「子どもがもう知っている毎日の流れを使う」。続けられる形にして、どう変わったかを見直しましょう。
ASHA, Communication milestones