しぐさは、ことばの前のコミュニケーションを支える

窓の外を指さして「あっ!」。お気に入りのくまを持ってきて、こちらに差しだす。話しはじめる前の子どもは、体じゅうで伝えようとしています。出発点は、しぐさを意味のあるメッセージとして受けとること。ことばの力は、話せる単語の数だけでははかれません。わかること、しぐさ、声、発音、遊び、人とのやりとりまでふくめて見ていきましょう。言わせることが目的ではなく、ふだんの伝えかたを知り、成長や聞こえ、保護者の心配があれば評価につなげていくことが大切です。

ひと言でいうと

指さし、見せる、手をのばす、バイバイ、何かを表すしぐさ。こうしたしぐさがあるから、子どもは話しことばがなめらかになる前から、関心や意味を人と分かち合えます。しぐさにこたえても、話すのが遅れることはありません。伝わったという手ごたえになり、大人がしぐさとことばを組み合わせる自然なきっかけにもなります。

実際にはどうするか

実際の生活の場面で役に立つしぐさをやってみせ、子どもの手を動かしてサインをさせるのではなく、何かこたえるのを待ちましょう。しぐさが少ない、同じものをいっしょに見ることが少ない、伝える力が後戻りした、といったことは、発達の専門家に相談するときの大切な情報になります。

はじめに見ておきたいこと

子どもが今いちばん興味をもっているもの、自然に出てくるしぐさ、声、ことば、そしてやりとりがとぎれやすい場面。この3つを見ておくと、手がかりが見えてきます。どの工夫も、絵本や歌、ごっこ遊び、生活の場面を、言わせるための練習にしないように使いましょう。

しぐさを育てる工夫

  • しぐさを、意味のあるメッセージとして受けとりましょう。
  • しぐさに、役に立つことばを添えましょう。
  • 指さしたり見せたりする、自然な理由をつくりましょう。
  • 話せるようになってからも、しぐさを受けとめ続けましょう。

ポイントは、楽しい日課に組みこむこと。「しぐさを意味のあるメッセージとして受けとる」と「しぐさに役立つことばを添える」を試しながら、子どもがはっきりこたえたら間をあけて、その意味にこたえ、ことばを少し足しましょう。動きまわる、しぐさを使う、ページをめくる、まねをしない。どれも子どもなりの参加です。

4つのステップのつながり

流れはこうです。まず「しぐさを意味のあるメッセージとして受けとる」。それから「しぐさに役立つことばを添える」、続いて「指さしたり見せたりする自然な理由をつくる」。そして「話せるようになっても、しぐさを受けとめ続ける」。子どもがどうこたえても受けとめ、役に立つ一歩をお手本で見せましょう。言わせようとしないことが大切です。

家族や保育園と、そろえておくこと

「しぐさを意味のあるメッセージとして受けとる」と「しぐさに役立つことばを添える」を、家族や先生との共通の一歩にしましょう。ことば選びは人それぞれでかまいませんが、子どもには毎回わかりやすいこたえが返るように。話しことばが伸びていく間は、しぐさや家で使うどのことばも、立派な伝える力として数えてください。

しばらく続けて、ふり返る

ふだんの数回の場面で、最初のステップを試してみましょう。たまたま楽だった日や大変だった日だけで決めないことが大切です。状況、子どものこたえ、家族の暮らしへの影響を、負担にならない短さで書きとめておきます。

ふり返るときは、3つめのステップと照らし合わせてみましょう。参加が安全に、はっきりしてきたことは残し、家で続かないことはシンプルにし、一度に変えるのは1つだけ。健康、安全、発達の心配があるなら、まず専門家にみてもらいましょう。

大人にできること、できないこと

大人の手の中にあるのは、やりとりの質です。関心に寄りそい、はっきりしたことばで話し、待って、こたえましょう。どの工夫もそのためのものですが、どんな遊びでも子どもに特定のことばを言わせることはできず、成長がはっきりしないときは評価が必要です。

安全と、子どもの尊厳を守る

がんばらせないことが大切です。絵本のために体をおさえる、ことばを言わないと必要なものをもらえない、確かなやりとりは画面だけ、という状態はつくらないでください。聞こえの心配、失われた力、大きないらだちがあれば、専門家にみてもらいましょう。

うまくいかなくなる理由

せっかくはじめた工夫も、話しかけるより質問ばかりになる、くり返しを求める、はっきりしたしぐさをわからないふりをする、伸びが止まっているのにいつまでも待つ、といったことでくずれてしまいます。こたえるやりとりと専門家の評価は役割が違い、どちらも発表の場にしてはいけません。

前進のしるし

数週間単位で、いっしょに見ることが増えたか、しぐさや声の種類が広がったか、自分から伝えようとすることが増えたか、会話の往復が楽になったかを見ます。楽しんで参加できているかも大事な指標です。大人のことばをそのまままねできたかは、成功の物差しではありません。

書きとめるときは、頻度だけでなく、場面と、子どもがどう参加していたかも。次の判断をするとき、言わせた1回ではなく、ふだんの伝えかたにもとづいて決められます。

専門家に相談したいとき

次のようなときは、小児科や言語聴覚士に相談しましょう。わかる力、伝える力、発音、話のなめらかさ、人とのやりとりが進まない。聞こえがはっきりしない。いらだちが強い。できていたことができなくなった。診断名や基準からの遅れがはっきりしていなくても、相談していいのです。評価は、家庭で使うすべてのことばをふまえてもらいましょう。

覚えておきたいこと

大切なのは、従順さでも完璧な日課でもなく、子どもとのつながりです。最初の一歩からはじめ、安全を守り、時間をかけて流れを見て、一般的なガイドで答えが出ないときは、その子のための専門家の評価を使いましょう。

ポイント: 最初の一歩は「しぐさを意味のあるメッセージとして受けとる」。家族が続けられる形に整えて、何が変わったかを見直しましょう。

ASHA, Communication milestones

ASHA, Learning more than one language

CDC, Developmental milestones