バイリンガルで育てると、ことばが遅れる?

家では親の母語、保育園では日本語。ふたつのことばで育つ子どもは、日本でも増えています。「ことばがまざって遅れるのでは」「日本語だけにしたほうがいい?」と迷う保護者もいるでしょう。出発点は、すべてのことばで伝える力を数えること。伝える力には、ことばの数だけでなく、理解、しぐさ、声、発音、遊び、人とのやりとりがふくまれます。子どもに何かをやってみせてもらう必要はありません。ふだんのコミュニケーションを知り、気になるときは評価につなげましょう。

ひと言でいうと

いくつものことばを学ぶことが、発音やことばの障害の原因になることはありません。語彙はそれぞれのことばに分かれているので、ひとつのことばだけを数えると、子どもが知っていることを少なく見積もってしまいます。本当にむずかしさがあるときは、たいてい、子どもが使うどのことばでも伝える力に影響が出ます。

実際にはどうするか

家族は、豊かに、自然につながれることばを使いましょう。評価をしないまま家庭のことばをやめてしまわないことが大切です。評価では、すべてのことばを考えに入れ、必要に応じて通訳や、ふたつのことばにくわしい専門家の力を借りましょう。日本語だけの結果を、子どもの力のすべてと見なさないでください。

はじめに見ておきたいこと

家庭のどのことばでも、どの場面でも、自分から伝えたことを数えましょう。いつも同じように使う「それらしいことば」、しぐさ、理解、遊び、同じものをいっしょに見る力もふくめます。「ふたつのことばにくわしい評価を受ける」ときは、ふたつのことばにくわしい専門家や通訳の力を借りて、ことばの力全体を見てもらいましょう。日本語だけの結果を、その子の力のすべてとしないことが大切です。

ふたつのことばで育てるときの手順

  • すべてのことばで、伝える力を数えましょう。
  • 家族がいちばん豊かに話せることばを、使い続けましょう。
  • 評価をせずに、ことばをやめないようにしましょう。
  • ふたつのことばにくわしい評価を受けましょう。

ふだんの流れの中で、「すべてのことばで伝える力を数える」と「家族がいちばん豊かに話せることばを使い続ける」からはじめましょう。それぞれの大人が、いちばん豊かにつながれることばで話してかまいません。子どもの関心についていき、意味のあるサインを待って、自然にことばを広げます。訳して言わせたり、ためしに家庭のことばをやめたりはしないでください。

4つのステップのつながり

「すべてのことばで、伝える力を数える」が出発点。「家族がいちばん豊かに話せることばを使い続ける」「評価をせずに、ことばをやめない」と続けて、「ふたつのことばにくわしい評価を受ける」で仕上げます。どの場面でも、子どもの反応をそのまま受けとめ、次の一歩をひとつ、お手本として見せてあげましょう。発表させる必要はありません。

家族や保育園と、そろえておくこと

最初の2つ、「すべてのことばで、伝える力を数える」と「家族がいちばん豊かに話せることばを使い続ける」だけは、家族や保育園とそろえておきましょう。同じことばでなくても、子どもがいつもわかるこたえを受けとれれば十分です。どの大人も、しぐさと家庭のすべてのことばを数に入れて、話す力が育つのを見守りましょう。

しばらく続けて、ふり返る

工夫の効果は、1日では見えません。いつもの場面で何度か試し、そのときの状況、子どもの反応、家族の暮らしへの影響を、観察が新しいプレッシャーにならない程度にメモしましょう。

しばらくたったら、3つめのステップの様子をふり返りましょう。うまくいったことは続け、無理のあることは軽くして、変えるのは一度に1つ。もし体調や安全、発達に心配があれば、家での工夫より先に、専門家の評価を受けてください。

大人にできること、できないこと

「家族がいちばん豊かに話せることばを使い続ける」は、家族が決められることです。大人は、自分がいちばん得意なことばで、豊かに、こたえ合うやりとりをすることができます。けれど、子どもに決まったことばを言わせることはできません。いくつものことばを使っても障害が生まれるわけではなく、本当に心配なことがあるなら、すべてのことばをふまえた評価を受けましょう。

安全と、子どもの尊厳を守る

「ふたつのことばにくわしい評価を受ける」ときは、資格のある言語聴覚士や聞こえの専門家に、必要なら通訳やふたつのことばを話せる専門家の力を借りてみてもらいましょう。人前でのクイズ、無理なくり返し、そしてその子の家庭のことばでの力を確かめないまま、大切なことばをやめるようすすめるアドバイスは避けましょう。

うまくいかなくなる理由

工夫をはじめても、会話より質問が多くなる、言い直しを求める、わかっているしぐさをわからないふりをする、停滞しているのに待ち続ける、といったことで台なしになりがちです。日々のやりとりと専門家の評価は別の役割で、どちらもテストではありません。

前進のしるし

新しいしぐさ、理解、ことば、二語文を、すべてのことばを合わせて数えましょう。それぞれのことばの語彙が同じくらいであることを期待しなくてかまいません。全体の数が増えていればよいしるしですが、どのことばでもむずかしさがある、聞こえがはっきりしない、できていたことができなくなった、といったときは、やはり専門家にみてもらいましょう。

メモは、回数よりも、場面と参加のようすが大切です。そうしておくと、のちの判断が、うながされたテストではなく、日常のコミュニケーションを反映したものになります。

専門家に相談したいとき

理解や表現、発音、なめらかさ、やりとりの力が伸び悩んでいる、聞こえに不安がある、いらだちが強い、何かの力が消えた、といったときは、小児科や言語聴覚士へ。相談に、診断名も、正確な基準での不合格も必要ありません。評価には、子どもが使うすべてのことばを反映してもらいましょう。

覚えておきたいこと

完璧な子どもや、完璧な家庭の流れを目指す必要はありません。最初の一歩をふみ出し、つながりと安全を守り、変化の方向をじっくり見守り、一般的な情報だけでは見えないときは、その子に合った専門家の評価を受けましょう。

ポイント: 「すべてのことばで、伝える力を数える」からスタートし、できる形に整えて、変化を確かめていきましょう。

ASHA, Communication milestones

ASHA, Learning more than one language

CDC, Developmental milestones