「赤ちゃん、いらない」と上の子に言われたら

「赤ちゃん、病院に返してきて」「もういらない」。上の子のこんなひと言に、どきっとしたり、悲しくなったりする親は少なくありません。でも、きょうだいの関係には、愛情も、いらいらも、張りあいも、仲なおりも、ときには数分のうちにぜんぶ入っているものです。安全を守り、どちらの子にもお世話が行きわたるようにするのは大人の仕事です。そして子どもには、決まった役を押しつけられずに、複雑な気持ちのままでいられる余地がいります。まずは、その気持ちを、賛成はせずに受けとめましょう。

ひと言でいうと

このことばはたいてい、赤ちゃんを傷つけるつもりではなく、前の家族の形に戻りたいという気持ちを伝えています。気持ちと現実の両方にこたえましょう。親が前のようにそばにいてくれないのがさみしいこと、赤ちゃんはずっとうちにいること、そして大人がみんなを安全に守ること。

実際には

言ったことを取り消させたり、感謝すべき理由を並べたりはしないようにしましょう。「赤ちゃんがきらい」という正直な気持ちの居場所はつくりながら、行動には線を引き、そのうえで、上の子が頼りにできる具体的なつながりの時間を差しだします。

はじめに見ておきたいこと

上の子の様子では、親といられる時間、生活の流れ、睡眠、自分でできること、話しかた、遊びかたの変化に注目します。うまくいっている瞬間にも目を向けます。ふたりだけの小さなならわしをつくるときも、上の子の今の発達と、つながりを求める気持ちに合わせます。赤ちゃんをすぐかわいがることも、ありがたく思うことも、求める必要はありません。

声かけのプラン

  • 気持ちは受けとめるけれど、賛成はしない。
  • 赤ちゃんはずっとうちにいると、かんたんに伝える。
  • 今、何がいちばん大変かを聞いてみる。
  • ふたりだけの、小さなつながりのならわしをつくる。

まずは、気持ちを受けとめることと、赤ちゃんはずっといると伝えることから。「赤ちゃんが来て、ママとふたりの時間が減って、いやになっちゃったんだね。赤ちゃんはずっとうちの子だよ。それから、あなたもずっとママの大事な子だよ」。説明は具体的に、安全の線はその場ですぐに。小さな選択肢をわたし、なじみの流れを残し、親とつながれる見通しのある時間をつくりましょう。抱っこやお手伝いを無理にさせなくても、興味は少しずつ育ちます。

4つのステップのつながり

最初は、賛成はせずに気持ちを受けとめること。次に、赤ちゃんはずっといるとかんたんに伝えること。それから、今いちばん大変なことを聞くこと。最後に、ふたりだけの小さなならわしをつくること。もし手が出るようなことがあれば、まず赤ちゃんを守り、話すのは落ち着いてからにします。

ほかの大人とそろえておくこと

パートナーや祖父母とは、最初のふたつ、気持ちを受けとめることと、赤ちゃんはずっといると伝えることをそろえておきましょう。「そんなこと言っちゃだめ」と叱る大人がいると、上の子は気持ちを隠すようになります。同じことばでなくても、上の子にとって見ればわかる対応にします。赤ちゃんを守るのは誰か、落ち着いたあとにどんな現実的な仲なおりをするかも決めておきます。

ためしてみる期間

気持ちを受けとめる声かけは、一度言われたときの反応だけで判断せず、何回かの場面を重ねてためしましょう。どんなときにそのことばが出たか、上の子の反応、家族の毎日の回りぐあいを短くメモします。書くことが負担にならない、ほんの数行でかまいません。

ふり返りでは、今いちばん大変なことを聞けたときの答えとくらべてみましょう。上の子が安心できた工夫は残し、家族が続けられないことはかんたんに。変えるのは一度にひとつ。ただ、健康や安全、発達に気がかりがあるなら、まず専門家に相談するのが先です。

大人にできることと、できないこと

赤ちゃんはずっといると伝えることは、大人にしかできないことです。見守る、注意の向けかたを工夫する、上の子のリズムを守る。そこは大人が動かせる部分です。でも、上の子に毎日赤ちゃんを喜べとか、いつもお姉ちゃんらしくいろとは求められません。やきもちも赤ちゃん返りも、気持ちを伝えるサインとして受けとめていい。でも、それは人を傷つけていいという意味ではありません。

安全と、子どもの尊厳

ふたりだけのならわしをつくりながらも、大人の安全の計画はそのままに。赤ちゃんと小さな子をふたりきりにしない、たたいたり乱暴にさわったりしたらすぐに止める、そして上の子に赤ちゃんを守ったりお世話したりする役目をいつも負わせない。正直な気持ちを口にしたことで、上の子をはずかしめないようにしましょう。

つまずきやすいこと

気持ちを受けとめていても、「お兄ちゃんなんだから、そんなこと言わないの」とずっと同じ役を押しつける、赤ちゃんへのチューやすぐのごめんなさいを無理にさせる、まったく同じにすることだけを公平と呼ぶ、危なさや力の差があるのに子どもどうしで解決させる、といったことで、くずれてしまうことがあります。

よい変化の見つけかた

上の子が前より早く気持ちを立てなおす、「ママとふたりがいい」とことばでまっすぐ求めてくる、少しのあいだなら親が赤ちゃんにかかりきりでも待てる、プレッシャーなしに赤ちゃんに近づく。そうした様子が前進です。愛情にむらがあってもかまいません。安全と、少しずつ育つ信頼をものさしにしましょう。

メモをとるなら、そのことばが出たきっかけ、ふたりの力の差、大人の対応、どう落ち着いたかを。上の子を責める証拠ではなく、家族が使えるパターンを見つけるための記録にしましょう。

もっと支えが必要なとき

けがが続く、ひどくこわがったりつらそうにしたりする、上の子がひきこもったままになる、できていたことができなくなる、眠りや毎日の暮らしが大きく乱れる、大人が安全に対応しきれない、という場合は、小児科医や地域の保健師さんなど専門家に相談しましょう。親が心配だということ自体が、家族が追いつめられる前にたずねる、じゅうぶんな理由です。

覚えておきたいこと

めざすのは、言うことを完璧に聞く子や、完璧な家の毎日ではありません。賛成はせずに気持ちを受けとめるところから始めて、つながりと安全を大切にし、時間をかけて方向を見守りましょう。一般論ではわからないことは、わが子をみてくれる専門家といっしょに考えればいいのです。

ポイント: まずは、賛成はせずに、気持ちを受けとめることから。続けやすい形にしたら、あとは変化をふり返るだけです。

American Academy of Pediatrics, Preparing an older child for a new baby

American Academy of Pediatrics, Positive discipline