段ボール箱で、のびのび創作遊び
高いおもちゃを買ったのに、子どもは箱で遊んでいる。親ならだれもが知る笑い話です。でもそこには本当のことがあります。ただの段ボール箱は、用意できるなかでいちばんゆたかで安い創作の材料のひとつで、子どもの想像とともに育ちます。箱は何にでもなれて、それを決めるのはメーカーではなく子ども。だから子どもは何度でも箱にもどってくるのです。
おもちゃより箱がいい理由
完成したおもちゃはたいていひとつのことしかせず、遊び方を覚えると新鮮さは消えていきます。箱はそれだけでは何もしません。それこそが強みです。日によって車にも、船にも、秘密基地にも、お店にも、ロボットにも、くまのベッドにもなります。この自由さが、考えだす、計画する、ごっこをする力を誘い、ボタンを押すよりずっとゆたかな遊びになります。いちばんいい段ボール遊びは、まるごと子どもの考えで動いています。
遊びに合う箱を
大きさによって、思いつく遊びがちがいます。家電の大きな箱は、中に入れる家やかくれがに。中くらいの箱は車、電車の車両、宝箱に。小さな箱はおもちゃのベッド、ポスト、積み木に。宅配の荷物が届いたら、いくつかの大きさをとっておけば、いつでも出せます。何も準備しなくてかまいません。箱をわたすことそれだけが、お誘いのすべてになることもよくあります。
変身させるのは子どもにまかせる
つい大人が手のこんだ段ボールのお城をつくりたくなりますが、子どもが進めたほうが遊びはゆたかになります。何にするかは大人が決めず、「この箱、何にする?」と聞きましょう。宇宙船だと言えば、ついていって、頼まれた物を足していく。全部を先につくってしまうと、それは大人の作品になります。子どもが想像して手を加えていくとき、創造、工夫、おはなしづくりを練習していて、それこそが茶色い箱にかくれた本当の価値です。
箱をもう少し広げるかんたんな方法
箱遊びを広げるのに、工作の腕前はいりません。子どもが見ている前でドアや窓を切りぬく、ふたつの箱をテープでつないで長い乗り物にする、紙皿のハンドルをつける。クレヨン、シール、水で落ちる絵の具で子どもに飾ってもらいましょう。中に懐中電灯を入れれば、居心地のいい秘密基地に。上から毛布をかければ、どうくつに。子どもが選んだ小さな足し物ひとつずつが、大人がりっぱな物をつくらなくても、新しい可能性を開きます。
ほかの遊びと組みあわせる
段ボールは、今あるおもちゃや遊びとすばらしくなじみます。箱がミニカーの車庫に、動物のおもちゃの小屋に、人形劇の舞台に。細い穴を切れば、手づくりのお手紙のポストに。いくつか並べて電車にし、ぬいぐるみを乗せる。こうしてまぜると遊びは新鮮なままで、子どもが今夢中なものに箱を織りこめて、箱もほかのおもちゃも長く楽しめます。
箱の安全について
箱は危険の少ない材料ですが、いくつか確かめておきましょう。ドアや窓を切るにははさみやカッターが必要なので、刃物は子どもから遠ざけ、切るのは大人が。遊ぶ前にホチキスの針、金属のふちがあるテープ、荷造りのバンドは取りのぞきます。大きな箱の中に入る子は、出られなくなったり暑くなりすぎたりしないよう見守り、いつでもかんたんに出られるようにしておいて。階段や暖房器具からは離し、しめったり汚れたりした箱は資源ごみに出しましょう。
場所のとりすぎに気をつける
大きな箱はすてきですがかさばり、せまい家では本当に悩みどころです。ずっととっておく必要はありません。1、2週間楽しんだらたたんで資源ごみへ。次の宅配が次の箱を運んできてくれます。お気に入りの箱なら、たたんでたんすの裏にしまうこともできます。箱は一時的なものと考えれば、段ボールに部屋を占領されずに楽しさは残せます。
飾ったり、描いたりも
何も描いていない箱は大きなキャンバスで、喜ぶ子はたくさんいます。クレヨン、マーカー、シール、水で落ちる絵の具でおおってもらいましょう。秘密基地や車を飾ると遊びはぐんとのび、描くのが苦手な子にも線を描く理由ができます。その線には目的があるからです。ほかの造形と同じように、きれいなデザインへ導かず、好きなように飾らせて。ゆがんで描きこみすぎたできあがりこそがその子のもので、それが大事なのです。
箱遊びで育つもの
シンプルな楽しさのうしろで、段ボール遊びはたくさんの発達を支えています。出たり入ったりで体を動かす力。切る、貼る、飾るで指先の力。ごっこやおはなしでことばと想像。箱を何にするか決め、計画がうまくいかないときに手を加えることで工夫する力。どれも、捨ててしまうはずだった物から、子ども自身の創造の力で生まれます。
長く残る学び
新しいおもちゃのかわりに箱をわたすことは、楽しむのに新しくてぴかぴかの物はいらないと、そっと子どもに教えます。想像こそがおもちゃで、ありふれた箱がひとつあれば、それは動きだす。育つうえですてきなメッセージで、しかもただで、地球にやさしく、何度でもくり返せます。段ボール箱は、家の中で最高の遊びの材料のひとつです。
ポイント: ただの段ボール箱は、子どもが想像するものに何でもなります。わたしたら変身は子どもにまかせ、刃物で切るのは大人の役目に。