テレビや動画を消すと泣くのはなぜ?子どもの脳で起きていること

ふだんはにこにこしている幼い子が、タブレットが暗くなった瞬間、泣きくずれる。自分のやりかたがまちがっているのか、うちの子は特別に画面に夢中なのか、と考えたこともあるでしょう。どちらも、たぶんちがいます。画面を消すと子どもが泣く理由がわかると、その瞬間のつらさはずいぶんやわらぎます。実際に何が起きているかが見えると、意地の張り合いではなく、親が手を貸せることに見えてくるからです。

小さな脳にとっての大きな切りかえ

画面は、小さな脳を本当にとりこにする刺激を、絶えず届けます。明るくて、速くて、楽しくて、いつまでも新しい。消すということは、その夢中な状態から、ふだんのゆっくりした現実のペースへ、いきなり移ってと子どもに頼むことです。大人にとっては簡単な切りかえでも、自分の気持ちや注意をコントロールする力がまだ育っている途中の小さな子には、ガクンとくる、つらいものにさえ感じられます。泣くのは、かけひきをしているのではなく、ギアを変えようと神経ががんばっている姿です。

楽しいことをやめるのは、何歳でもむずかしい

夢中で見ていたドラマが、いいところで「つづく」になったときの気持ちを思いだしてみてください。ちくっと、いらだちが走ります。その気持ちを、大人が何十年もかけて身につけてきた自分をおさえる力なしで味わうところを想像してみましょう。それが、画面を消された瞬間の幼い子です。もっと見たかった、でも見られない、そしてがっかりをやわらげる心の道具を、まだ持っていない。だから涙やかんしゃくになって出てくるのです。それは、ほかのやりかたを覚える前の、大きな気持ちのごくふつうの姿です。

つくりが、子どもに不利にはたらく

はっきり言っておく価値があるのは、こうした端末は中立ではないということです。子ども向けの内容やサービスの多くは、注意を引きとめ、自然な区切りをなくすようにつくられていて、1本の動画が次へと流れていきます。子どもはただ楽しい遊びから離れるのではなく、離れにくいようにわざとつくられたものから引きはがされているのです。それを知っていると、自分をだめな親だと感じることが減り、本当にむずかしい場面を乗りきる子どもを手伝っているのだと思えるようになります。

消すときの荒れかたに差がある理由

反応が日によってまったく違うことに気づくかもしれません。たいてい理由があります。

  • 疲れ、空腹、刺激の多さは、どんながっかりにも耐える力を小さくする。
  • 予告なしにいきなり消すと、予想していたときより衝撃が大きい。
  • 何もないところへ移るより、楽しそうな何かへ移るほうが楽。
  • 速くて刺激の強い内容ほど、穏やかでゆっくりした番組より、落ちこみが大きくなりやすい。

こうしたパターンに気づけば、嵐に身がまえるだけでなく、条件そのものをやわらげられます。

親のこたえかたが、大切なことを教える

見かたががらりと変わるのはここです。こうした涙の一つひとつは、子どもが気持ちを整える力を育てるチャンスです。親が落ち着いて、気持ちに名前をつけ、制限をあたたかく守るとき、がっかりしても乗りこえられること、大きな気持ちは過ぎていくことを教えています。「もっと見たかったね。でも今はおしまい。つらいよね」。やさしく、いつも同じように言えば、涙をさけるよりずっと長く役に立ちます。目指すのは、まったく気にしない子ではなく、気になる気持ちと少しずつつきあえるようになる子です。

大事なのは、制限が守られてこそ、ということです。十分に泣けばときどき画面が戻ってくるなら、子どもは泣くことが画面を増やす道だと学び、反応は大きくなっていきます。あたたかさと、きっぱりさ。その組み合わせが助けになります。

その瞬間に、本当に役立つこと

理由がわかれば、何が効くかもまっすぐ見えてきます。消す前に予告して、変化を予想できるものにする。空っぽではなく、向かう先を用意する。消すときはそばにいて、落ち着いている。子どもは親の落ち着きを借りるからです。言葉は少なく。気持ちがあふれている子は、お説教を受けとめられません。そして嵐が過ぎたら、お説教ではなく、だっこでつながりなおす。どれもすべてのかんしゃくを止めるわけではありませんが、時間とともに小さくしてくれます。

ふつうの範囲を超えているように見えるとき

画面を消して泣くのは、小さな子にはまったくふつうのことです。でも、次のような様子は、かかりつけの小児科医や地域の保健師に伝えておきましょう。いろいろな場面で、反応が極端で、とても長く続き、なかなか落ち着かない。画面がまったくないと落ち着けないように見える。気分、行動、睡眠、発達について、広い意味で心配がある。よくある相談で、早めに聞くのはおおげさではなく、賢明なことです。

画面を消すと子どもが泣くのは、親が弱いからでも、子どもがわがままだからでもありません。夢中になれて、わざと離れにくくつくられたもの、ゆっくりした現実へのいきなりの切りかえ、そしてがっかりの扱いかたをまだ学んでいない脳。その3つがぶつかっているのです。そう見えるようになると、その瞬間は戦いではなく、やさしく、何度でも、向き合いかたを教えるチャンスになります。そしていつか、画面を消すことが、それほどおおごとではなくなる日が来ます。

ポイント: 涙は反抗ではなく、わざと夢中にさせるものから離れようと、育ちざかりの脳ががんばっている姿。穏やかで、あたたかく、ぶれない制限が、少しずつ乗りこえる力を育てます。

AAP HealthyChildren, Media and children

WHO, Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under five years of age