家の中に「スマホを使わない場所」をつくる

スクリーンタイムの話になると、たいてい「何分まで」「何時間まで」と時計の話になります。でも、多くの家庭にとってもっと動かしやすいレバーがあります。時間ではなく、場所です。家の中に画面を使わない場所を決めておくと、「あとどれくらい」という毎日の交渉の多くがなくなり、家族の暮らしのなかでいちばん大切な部分を、そっと守ってくれます。

時間より場所のほうが楽な理由

時間で区切るルールは、毎回の判断が必要です。今日はあと20分いいかな、さっきのでもう2本目だったっけ。そのたびに新しい判断が生まれ、判断のたびに交渉が始まります。場所のルールは違います。決まっていて、目に見えるからです。食卓には画面を持ってこない。寝室には持ちこまない。話し合う余地がありません。「どれくらい」ではなく「どこで」の話で、場所は親の気分や疲れでは変わらないからです。子どもは目に見える境界をすぐに覚えますし、ほかの大人にも伝わりやすいのです。

まずは大事な2か所から

ほかに何もしなくても、2つの場所だけは守りましょう。ごはんを食べる場所と、寝る場所です。画面がいちばん静かに悪さをするのがこの2か所で、取りのぞいたときの効果もいちばん大きい場所です。

食事のときに画面がなければ、食べること、会話、家族で食卓を囲むことのつながりが守られます。寝室に画面がなければ、睡眠が守られます。寝る前の画面は子どもの頭をさえさせて、寝つきをじゃましてしまうからです。この2つさえ押さえておけば、家じゅうを見張らなくても、肝心なところはカバーできます。

わが家に合う場所を選ぶ

食事と睡眠のほかにも、間取りや暮らしかたに合わせて、画面を使わない場所を足していけます。おもちゃのある部屋を「遊ぶだけの部屋」にする家庭もあれば、近所への短いドライブでは車の中を画面なしにして、チャイルドシートにすわったとたん動画、という流れにしない家庭もあります。たとえば、こんな場所が考えられます。

  • 食事のときのダイニングテーブルと台所。
  • すべての寝室。とくに寝る前の時間。
  • 近所への短い移動の車内。画面は本当に長い移動のときだけに。
  • タブレットではなく、手で遊ぶおもちゃを置いた遊びコーナー。

全部やる必要はありません。わが家が大事にしたいことを守れる場所を選び、あとは気にしなくて大丈夫です。

境界を目に見える形で、みんなで

画面を使わない場所は、みんながそれを知っていて、守りやすいときにいちばんうまくいきます。充電器や端末は、守りたい部屋の外に置きましょう。そこにあるだけで、誰でもつい手がのびてしまいます。祖父母やほかの大人にも、はっきり伝えます。「食卓と寝室では画面を使わないことにしています」。覚えやすく、守りやすいルールです。親の頭の中だけでなく、家の間取りそのものに組みこまれた境界のほうが、ずっと長続きします。

大人もルールの中に

画面を使わない場所が公平に感じられ、実際にうまくいくためには、親をふくめて全員に当てはまることが必要です。「食卓でスマホはだめ」と言いながら、親がメッセージを確認していたら、子どもは混乱し、ルールそのものが崩れてしまいます。大人も守りたい場所にスマホを持ちこまなければ、子どもは「この場所はそういうところ」と受けとめ、自分だけへの制限とは感じません。親にとっても、目の前の子どもと向き合える時間が手に入ります。これは小さくないおまけです。

はじめは、やさしく続ける

新しい場所を決めると、最初は少し試されます。朝ごはんでタブレット、布団の中で動画、に慣れていた子は、きっとねだってきます。落ち着いて、毎回同じように返しましょう。「テーブルには画面は持ってこないよ。こっちに来て、いっしょにすわろう」。1〜2週間もすれば、その場所はもめごとの種ではなくなり、「この部屋はそういうところ」になっていきます。定着させるのは、強く言うことではなく、毎回同じであることです。

現実的に

画面を使わない場所は、守れたか守れなかったかを競うテストではなく、暮らしの枠組みです。リビングで家族で映画を見る夜もあれば、誰かが体調をくずして食卓で画面を見ることもあるでしょう。それで仕組みが壊れるわけではありません。大事なのは、たいていの日に大切な場所を守ってくれる、頼れる「いつもの形」です。続けられない細かな時間ルールよりも、しっかり守れる場所が2つあるほうが、家族の暮らしにはずっと役立ちます。

気になることがあるときは

画面をどこで使うかは暮らしの習慣で、医療の問題ではありません。でも、画面だけが子どもを落ち着かせる唯一の手段になっている、睡眠や行動に影響が出ている、発達がゆっくりに思える、といった心配があれば、かかりつけの小児科医や地域の保健師に気軽に相談してみましょう。よくある相談で、話してほっとすることも多いものです。

家の中に画面を使わない場所をつくるのは、画面とのバランスをとる方法のなかでも、いちばんシンプルで長続きするものの一つです。時間をめぐる終わりのない交渉を、誰でも守れるわかりやすい場所のルールに置きかえられるからです。まずは食卓と寝室を守り、わが家に合う場所を足し、大人もルールの中に入り、やさしく続けていく。そうすれば、食事、睡眠、遊び、そして家族どうしの時間のための場所が、いつも確かにある家になります。

ポイント: 食卓と寝室から、「画面を使わない場所」を決めましょう。時間の交渉なしに、家族のいちばん大切な時間が守られます。

NHS, Sleep and young children

AAP HealthyChildren, Healthy digital media use habits for babies, toddlers and preschoolers