動画の自動再生をオフにして、やめどきを取りもどす

家の中の画面をめぐる苦労の多くを、静かに動かしている小さな機能があります。子どもの意志の弱さでも、親の意志の弱さでもありません。自動再生です。前の動画が終わる前に、もう次の動画を読みこんでしまう設定のこと。家族の暮らしをひっくり返さずに自動再生をオフにするのは、スクリーンタイムのためにできる、いちばん手間が少なく、いちばん効果の大きい変化の一つです。自然なやめどきを、親の手に戻してくれるからです。

自動再生が本当にしていること

自動再生は、人に見つづけてもらうためにあり、実際にそのとおりに働きます。1本が終わって次が始まるまでの間をなくすことで、子どもが自然に立ちあがって別のことをするかもしれない瞬間を消してしまうのです。気づくすきまも、「番組が終わったよ」という合図もなく、ただなめらかに次へとすべっていく。ちょっと1本のはずが1時間になりがちなのも、消すことが子どもにとってあれほどつらいのも、このためです。親は、サービスがわざと一度も止めない流れを、途中で断ち切っているのです。

こう考えると、バトルの見えかたががらりと変わります。子どもはただわがままを言っているのではありません。止まることをくつがえすように設計された仕組みと向き合っているのです。小さな人に抵抗しろというのは、なかなかの注文です。

まずは設定を見つける

子どもといっしょに何かを変える前に、親がこっそり設定を変えておきましょう。たいていの動画アプリや配信サービスには、自動再生の切りかえスイッチがあります。設定や再生のオプションの中にあることが多く、少し奥にかくれていることもあります。端末によっては、「次のエピソードを自動再生」をオフにできるものもあります。数分かけて、子どもが使うアプリのそれぞれでオフにし、子ども向けモードがあればそちらに切りかえましょう。子ども向けモードは、最初から穏やかな設定になっていることが多いからです。

前もって、落ち着いて、親ひとりでしておけば、変化はその場の交渉ではなく、もう決まっていることになります。

さらっと始める

大げさに発表する必要はありません。自動再生がオフなら、画面は番組が終わるごとに自然に止まるので、それをふつうのこととして扱えばいいのです。子どもに「なんで止まったの?」と聞かれたら、さらっと答えましょう。「このお話は終わったよ。もう1つ選ぶ?それとも、おりて遊ぶ?」。止まることは、親がかけた罰ではなく、見ることのあたりまえの一部になります。

最初の何回かは、子どもは次を見たがるでしょう。勝手に出てくるのに慣れているからです。毎回同じように、あたたかく、短く答えていれば、新しいパターンはすぐに落ち着きます。

止まった瞬間を、決める瞬間に

自動再生をオフにしてもらえる贈りものは、この「止まる瞬間」です。そのすきまで、やさしく方向を変えられます。番組が終わって何も始まらないとき、それは自然に「今のが最後だったね。何かつくりに行こう」「あと1つ見たら、歯みがきね」と言える瞬間です。流れの途中で画面を取りあげるのではなく、内容が用意してくれた区切りに、親が入っていけばいいのです。

短い予告は、ここでも役に立ちます。「今日は2つね」と前もって決め、最後の1つを知らせておけば、最後の止まる瞬間は不意打ちではなく、予想どおりのものになります。

ほかの暮らしは、楽なままで

家族の暮らしをひっくり返さずに、というのは、これで生活がむずかしくなるのではなく、シンプルになるべきだという意味です。画面を禁止するわけでも、毎秒を見張ると約束するわけでもありません。人をあやつる機能を1つとりのぞき、昔はあたりまえにあったやめどきを取りもどすだけです。多くの家庭では、この1つの変化だけで、画面をめぐるもめごとが目に見えて減ります。設定さえしてしまえば、ほとんど手間はかかりません。

体調の悪い日や長い移動など、長めに見る必要があるときは、もちろんそうしてかまいません。自動再生がオフというのは、いつ長くするかをサービスではなく親が決める、というだけのことです。

あわせて役立つ小さな習慣

切りかえスイッチと合わせて、次の小さな工夫が、自然な終わりを後押ししてくれます。

  • 終わりのないおすすめの流れではなく、番組をまるごと選ぶ。
  • 終わりのある短い再生リストをつくり、リストそのものに終わりをもたせる。
  • 端末はかくさず、親がちらりと見られる場所に置く。
  • 止まる瞬間に、おやつ、お手伝い、外遊びなど、次に向かう先をつなげる。

どれも劇的なことではありませんが、合わせると、スクリーンタイムの流れが静かに変わります。

もめごとの根がもっと深いとき

自動再生をオフにすると、毎日の小さな綱引きの多くはやわらぎます。でも、いろいろな場面で、画面を消すたびに極端で、なかなかおさまらない苦しさが出る、画面だけが子どもを落ち着かせたり夢中にさせたりしているように見える、というときは、かかりつけの小児科医や地域の保健師に気軽に相談してみましょう。よくある相談で、話すだけでほっとすることも多いものです。

自動再生をオフにするのは、数分の手間で毎日報われる、子育てのなかでもめずらしい「勝ち」です。こっそりオフにし、自然に止まることをふつうとして扱い、そのすきまで方向を変える。サービスがうばっていたやめどきを、大さわぎなしに取りもどせます。家の中の画面の悩みが全部解決するわけではありませんが、毎日の苦労のいちばん大きなかくれた原因の一つがなくなり、ほかのことがずっと楽になります。

ポイント: 自動再生をオフにすると、番組と番組のあいだの自然な「ひと息」が戻ります。家族の暮らしをほとんど変えずに、やめどきが親の手に戻ってきます。

AAP HealthyChildren, Healthy digital media use habits for babies, toddlers and preschoolers

WHO, Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under five years of age