「残さず食べなさい」は必要?完食ルールを見直す
「お百姓さんに悪いから、全部食べようね」。自分もそう言われて育った、という方も多いかもしれません。完食ルールを見直すなら、まず盛る量をほどほどにするところから。食べることには、食欲、栄養、口の動き、感覚、食卓の雰囲気がかかわっています。大人は安全でバランスのよい食事を決まった時間に出し、食べるかどうか、どれだけ食べるかは子どもが決めます。医師から個別の指示がある場合は、それに従ってください。
完食ルールが教えてしまうこと
「全部食べる」というルールは、自分のおなかのすき具合や満腹に気づくより、外から決められた量に従うことを子どもに求めます。食欲は食事ごとに変わるものです。大人がお皿の見た目だけで、その子の体に必要な量を正確に知ることはできません。
量と、もったいないの工夫
少なめに盛って、おかわりできるようにし、「全部食べたら終わっていい」ではなく、子どもが自分で終われるようにしましょう。食べ残しを減らすのは、盛る量と、安全に残り物をとっておくことで。プレッシャーで減らすのではありません。いつもとても少ししか食べない子には、無理にひと口ではなく、食べかた全体を専門家にみてもらうことが必要です。
はじめに見ておきたいこと
何日分かの食事を通して、食べられた物と食感、牛乳やおやつの時間、体重、元気さ、水分、食べるときの気持ちを見てみましょう。あわせて、痛み、便秘、せきこみ、つまりかけ、飲みこんだあとのゴロゴロした声、発疹、吐いたことも残しておきます。こうした様子は、新しい食べものへのふつうの用心とは別に考えるべきサインです。1皿ではなく時間をかけて食べる物の幅を見るという最後のステップは、そうした変化に気づくための見かたでもあります。
4つの見直しポイント
- 盛る量はほどほどに。
- 「おかわり」と言われたら出す。
- 食べた量をほめない。
- 食べる物の幅を、長い目で見る。
一度に全部変えず、食事が食事のままでいられる範囲で。まず盛る量を減らし、次に「おかわり」にこたえます。大人のひと言は「えらいね、全部食べたね」ではなく、ふつうの会話に。満腹やいやがる様子が見えたら、そこで終わりに。交換条件は出さずに片づけて、次の食事やおやつでまたいろいろな物を出しましょう。
ポイントのつながり
ほどほどに盛り、おかわりにこたえ、量でほめるのをやめ、食べる物の幅を長い目で見る。この流れで、子どもは自分のおなかの声を聞きやすくなります。やめたいときは取引なしでやめてよく、次の決まった時間にまた出しましょう。
祖父母や保育園とそろえる
「全部食べなさい」は、祖父母世代にとってはあたりまえの言葉かもしれません。「ほどほどに盛る」「おかわりにこたえる」の2つだけでも、先に共有しておきましょう。言いかたまでそろえる必要はありません。いすの位置、窒息しやすい物への注意、やめどきの合図、ごちそうさまの流れは、誰がみていても同じに。
しばらく様子を見る
ほどほどに盛る工夫は、1回の食事で判断せず、ふつうの食事で何回か続けてみましょう。状況、子どもの反応、家族の負担を短くメモするくらいで十分です。記録が親子の新しいプレッシャーにならないように。
ふり返りでは、量をほめずにいられたかも見てみます。うまく食卓に参加できた工夫は続け、負担なことはシンプルにし、変化は1回に1つにとどめます。体調、安全、発達の心配があれば、工夫より先に専門家へ。
大人が決めること、体が決めること
おかわりにこたえるのは、大人の側の役目です。何を出すか、いつどこで食べるか、調理と見守りは大人が決め、食欲と、食べるかどうかは子どもの体が決めます。役割を分けておくと食卓の圧が減り、体重や痛み、飲みこみの問題もごほうびで覆い隠されません。
安全と、子どもの尊厳
長い目で見ることと合わせて、まっすぐすわる、そばで見守る、今のかむ力に合った形とかたさにする、年齢に合った応急手当を学んでおく、を続けましょう。窒息やひどいアレルギー反応が疑われたら、調べものはあとにして、すぐ119番へ。体重、水分、痛み、飲みこみの心配は、早めに医療者に相談を。
ありがちなつまずき
盛る量を減らしても、「あと一口」とせかす、同じ食事で別の物を次々出す、食べた量でごほうびをあげる、残すのはわがままだと考える。こうしたことで見直しは崩れがちです。痛み、成長、アレルギー、飲みこみの心配は、説得を強めるより、みてもらうべきことです。
前に進んでいるサイン
完食ルールをやめたあとに見たいのは、近くの食べものをいやがらない、さわる、新しい食感に慣れる、「もういらない」「もっと」をはっきり伝える、食べる物の幅が広がる、といった変化です。1皿でなく何週間かで見ていきましょう。ただし体重、水分、痛み、アレルギー、飲みこみに心配があるなら、待たずに相談を。
相談したいとき
体重が伸びない、脱水っぽい、痛がる、むせることがたびたびある、のどにつまりかける、飲みこんだあとに声がゴロゴロする、アレルギーが疑われる、食べられる物がみるみる減る、食事のたびに強くいやがって食卓にならない。こうしたときは医師や栄養士に相談しましょう。小さな子は自分の体の感覚をうまく説明できません。保護者の心配だけで、十分に相談の理由になります。
最後に
目指すのは、きれいに完食する子でも、完璧な食卓でもありません。ほどほどに盛ることから始め、つながりと安全を守り、変化の向きを長い目で見ていきましょう。ふつうの情報では足りないと感じたら、専門家にその子をみてもらいましょう。
ポイント: 盛る量をほどほどにすることから。無理なく続けて、変化を見ていきましょう。