時間のない朝こそ、ひと言のつながりで子どもが動きだす

小さな子との朝は、いつも少しずつ負けているレースのようです。靴は消え、朝ごはんはいやと言われ、時計は、ゆっくり進んでほしいときにかぎって速くなる。そのまっただなかで、子どもとつながるなんて、とても手の届かないぜいたくに感じるかもしれません。でも、一日の始めのほんの少しのあたたかさは、「早くして」をもう一回言うより、混乱をなめらかにしてくれることがよくあります。

必死の朝が裏目に出るわけ

朝がストレスで回っていると、子どもはそれを感じとります。ぴりぴりして、用事のことで頭がいっぱいの親を前にすると、子どもはたいてい、ますますゆっくり、かたくなになります。急かされて、つながれていないと感じた小さな人は、協力するより、ふんばってしまうことが多いのです。もっと押したくなりますが、それでにらみあいはたいていひどくなります。忙しい朝に子どもとつながろうとするのは、甘いことでも、甘やかしでもありません。いちばん早く玄関を出る道であることが多いのです。

つながりに、時間を足す必要はない

うれしいことに、近さは時間の量ではなく、気持ちの向け方の質で決まります。すきまのない時間割に、20分の抱っこを足すのではありません。もうしていることのやり方を、少し変えるだけです。あたたかい「おはよう」、シリアルを渡すときに目を合わせること、まるごと向き合う一瞬。どれも、いつもの流れの中でできます。

違いを生む、小さな瞬間

ひとつかふたつ、余計な仕事としてではなく、流れの中に織りこんでみましょう。

  • 顔を合わせて一日を迎える。何かの用事より先に、ひざをついて目を合わせ、会えて本当にうれしいという顔で「おはよう」と言う。
  • 小さな選択肢をわたす。「赤いくつした?青いくつした?」と聞くと、自分で決められる感覚が生まれて、いやいやがやわらぐ。
  • ふたりのおなじみのことばを使う。毎日同じところで言うへんてこな決めぜりふや、ちょっとしたくすぐりが、なじみの錨になる。
  • いっしょに実況する。命令ではなくチームとして「よし、歯みがきして、それから靴。いけるいける」と言うと、協力をさそえる。

あたたかさを先にわたす

用事が始まってからではなく、始まる前に気持ちを向けると楽になる、と感じる親はたくさんいます。子どもが目をさましたばかりのときの、数分の近さ。くっつく、夢の話をする、窓から天気を見る。それで心のコップがじゅうぶん満たされて、そのあとの用事でいやいやが少なくなることがあります。朝がいきなりの大あわてで始まらないように、子どもをいつもより数分早く起こすのが、いちばん役に立つ変化になることもあります。

指示は、やさしく、はっきり

急いでいる朝は、きつい命令をつぎつぎ出したくなるもので、子どもは10回目にはもう聞いていません。ことばは少なく、あたたかく伝えたほうが届きます。「ほら、もう遅れるよ」をくり返すかわりに、次のひとつの手順だけを言って、少し待ってみましょう。指示に、軽いふれあいや笑顔をそえると、お願いがおしかりのように聞こえず、急いでいるあいだも子どもとつながっていられます。

さよならを守る

どんなにばたばたの出だしでも、別れる瞬間は大切です。急いで、うわの空のさよならは、小さな子を何時間も落ち着かなくさせることがあります。送りのときの、見通しのある小さな習慣。とくべつな手のふり方、手をぎゅっとにぎること、いつも言う3つのことば。そうしたものが、子どもにしっかりにぎれるものをくれます。数秒ですみますし、離れていてもつながりはいっしょについていくのだと、子どもを安心させます。

かっとなってしまったとき

うまくいかない朝もあります。きつく当たったり、あたたかさのかけらもなく追いたてたりして、車の中で落ちこむこともあるでしょう。それはふつうの子育てで、失敗ではありません。子どもに必要なのは完璧な記録ではなく、確かなやりなおしです。おむかえのときに「今朝はママ、ふきげんだったね。あなたのせいじゃないよ。大好きだよ」とひと言そえれば、糸はつくろえます。大変な朝のあとのやりなおしは、関係はしなっても元に戻れるのだと子どもに教えます。それは、完璧な出だしよりずっと価値のある教えです。

朝がいつも戦いになるとき

送りのたびにひどく取りみだす、ほとんど毎朝その日のことを不安がっている、何週間かたつうちに別れが楽になるどころかつらくなっている、という場合は、その下にあるものをやさしく見てみましょう。園や学校の先生に話し、心配そうな様子、おなかの痛み、眠りの変化もあるなら、地域の保健師さんやかかりつけ医にも伝えてください。ずっと続く朝のゆううつは、ひとりで押しきる習慣ではなく、耳をかたむけるべきサインです。

積みあがっていくパターン

すべての朝を変えることはできませんし、変えなくていいのです。たいていの日に、小さくくり返せる形で、忙しい朝でも子どもとつながることをめざし、うまくいかなかった朝は流しましょう。そうした小さなあたたかさの貯金が重なるうちに、子どもにとってより安心で、親にとってより落ち着いた一日の始まりができていきます。そして、ふしぎなことに、靴も少し早く見つかるようになるのです。

ポイント: 急いでいる朝ほど、数秒の、顔を合わせたあたたかいまなざしのほうが、「早くして」をもう一回言うより、子どもを動かしてくれます。

CDC, Positive Parenting Tips

NHS, Children and young people's mental health: advice for parents