しかる前に、まずつながる。その場で何をすればいいのか
このことばを聞いたことがあるかもしれません。たいていは自信たっぷりに、でもくわしいことはほとんどなしに語られます。「しかる前に、まずつながる」。ポスターにすればすてきですが、2歳の子がお豆を投げている、4歳の子がきょうだいをたたいている、という現実のまっただなかでは、それが実際に何を意味するのか、なかなか思いえがけません。ここでは、実際にどう働くのか、そして同じくらい大事な、それが何を意味しないのかを見ていきます。
この考え方が本当に言っていること
「しかる前に、まずつながる」の芯は、やさしさの話ではなく、順番の話です。大きな気持ちにのみこまれている子は、頭の中の考える部分にアクセスできません。お説教も、罰も、説明もはね返ってしまいます。受けとれる状態にないからです。だからまず子どもが落ち着いて安心できるように手を貸し、それから行動を導く、という考え方です。しかることを飛ばすのではありません。しかることが届くようにしているのです。
つながることは、賛成することではない
いちばん大きな誤解は、つながることを認めることだと思ってしまうことです。そうではありません。まったくあたたかく、まったくぶれずに、同時にいられます。「すごく怒ってるのはわかるよ。でも、たたくのはさせないよ」。この一文は両方を持っています。つながりは、親の落ち着いたそばにいることと、気持ちを受けとめること。しかることは、行動へのはっきりした線引きです。しかる前につながるとは、線引きはちゃんとくるけれど、最初ではなく、怒りからでもない、ということです。
その場では、こんなふうに
4歳の子が、お姉ちゃんがつくったタワーをわざとたおして、今さけんでいるところを思いうかべてください。つながりから入るこたえ方は、こんなふうに進むかもしれません。
- 子どもの目の高さまでかがみ、声を大きくするのではなく、低くする。
- 見えたことをことばにする。「お姉ちゃんが入れてくれなくて、すごく怒ってるんだね」
- そばにいて、お説教はせずに、嵐が少しおさまるのを待つ。
- 体が落ち着いてきたら、行動にふれる。「たおしたのは、よくなかったね。これからどうするか、いっしょに考えよう」
ぜんぶで2分くらいかもしれません。行動は、ちゃんと正されています。ただ、つながりの瞬間の代わりではなく、そのあとにくるだけです。
まず落ち着かせると、うまくいくわけ
ストレスのスイッチが入っている子は、ことばより先に声の調子を聞きます。かんしゃくに、親の大きな声と指示の連続でこたえると、火に油をそそぐことになります。代わりに落ち着きをさしだすと、子どもの神経は親の落ち着きを借りられます。これは「いっしょに気持ちを整える」と呼ばれることもあります。落ち着いてはじめて、子どもは教えを受けとれるのです。だから、しかる前につながることは甘やかしではありません。小さな脳のつくりに沿っているだけなのです。
約束ごとは、そのままに
あたたかさから入ると、伝えたいことがうやむやになるのでは、と心配する親もいます。子どもが落ち着いたあとに、ちゃんとしかることを実行すれば、そうはなりません。順番は「つながって、それから導く」で、「導くかわりにつながる」ではありません。子どもが誰かを傷つけたなら、線はそのままで、合う場面ならあやまったりなおしたりもします。違いは、子どもが今、それを理解して覚えていられる状態にあることです。
親自身が落ち着いていないとき
ここは正直に言いましょう。持っていないつながりは、さしだせません。もう限界というときは、何かを言う前に、まずみんなの安全を確保して、ひと呼吸おくのがいちばんやさしい第一歩かもしれません。「ちょっと待ってね」と言って数秒下がるのは、はずかしいことではありません。いっぱいいっぱいのときに間をおく姿を見せること、それ自体が力強い教えになりますし、あとで後悔するようなきつい叱り方をしないように、親自身も守ってくれます。
年齢によって、形は変わる
2歳前後の子なら、つながりは主に体を通したものかもしれません。落ち着いた体、やさしい手、ごく少ないことば。3歳から5歳くらいなら、気持ちのかんたんな名前づけを足せます。もっと大きな子なら、何がまずかったのかを話す前に、「味方だよ」と伝わるようなまなざしひとつがつながりになることもあります。考え方は同じまま、表し方が子どもといっしょに育っていきます。
行動が、もっと深いことのサインのとき
困った行動のほとんどはふつうのことで、ゆるがないあたたかな線引きのなかでおさまっていきます。でも、ときには旗が立っていることもあります。子ども自身もこわがっているように見える乱暴がたびたびある、かんしゃくがとても激しく、とても長く、イヤイヤ期をとうに過ぎても一日に何度も起きる、行動や気分や発達に急な変化がある、という場合は、地域の保健師さん、かかりつけ医、園や学校に話してみましょう。相談することは失敗を認めることではありません。子どもを大切に考えることの一部です。
いちばん大事なこと
「しかる前に、まずつながる」は、子どもを言いなりにさせる技でも、何でも見のがしていいという許可でもありません。子どもは、こわい人からではなく、安心できる人からいちばんよく学ぶ、ということを思いだすためのものです。関係から入り、落ち着きが戻ったら線をしっかり守る。そうするうちに子どもは、自分の気持ちは受けとめてもらえること、そしてふるまいには越えてはいけない線があることの両方を学んでいきます。あたたかさとぶれなさがいっしょにあること。それが、子どもを育てていきます。
ポイント: まず落ち着いてつながると、子どもは教えを受けとれるようになります。線引きはそのまま。あたたかさの代わりではなく、そのあとにくるだけです。