バランス感覚は、毎日の外遊びで育つ

バランスは、あるかないかのひとつの技ではありません。何千回もの小さなぐらぐら、ふんばり、立てなおしを重ねてできあがる、静かなしくみのまとまりです。お子さまが縁石の上をよちよち歩くたび、走っているとちゅうで何かを見に立ちどまるたび、片足立ちで長ぐつをぬぐたび、体は自分が空間のどこにいるかを感じとり、調整することを学んでいます。うれしいことに、そのために教室も体育館もいりません。ふだんの外遊びが、もうその仕事をしてくれています。

バランスの正体

目に見えるぐらぐらの下では、いくつかのしくみが協力しています。動きを感じとる耳の奥、地平線を追う目、自分の位置を知らせる筋肉や関節。小さな子は、くり返すことでこの3つをこまかく調整していきます。外でのバランス遊びがとても効果的なのはそのためです。でこぼこの地面、ゆるやかな坂、またぐもの。そうしたものは、平らな室内の床よりずっと豊かで、予想しにくい課題を体にくれます。

バランスは、のちに大切になる力の土台でもあります。じっとすわって鉛筆をもつこと、ボールをキャッチすること、にぎやかな公園を安全に動きまわること。いまぐらぐらしている時間は、学びからの寄り道ではありません。学びの土台なのです。

いつも通りすぎている、毎日のチャンス

バランスの練習を計画する必要は、ほとんどありません。ゆっくりして、そこにあるものをお子さまに使わせてあげればいいのです。低い縁石は、大人の手を手すりにして歩く平均台に。歩道にかかれた線は、つなわたりのつなに。木の根っこ、ゆるやかな草の土手、平たい石のならび。どれも、安定した体をつくる小さな調整を引きだしてくれます。

いつもの道を、チャレンジのメニューにしてみましょう。大きくゆっくり歩く巨人歩き、「ストップ」でかたまる銅像ごっこ、ねむっている怪獣の横をつま先立ちでそっと通る、歩道のタイルからタイルへジャンプ。ひとつひとつが、少しずつちがう体のコントロールをもとめ、子どもはたいてい、練習しているとは気づきもしません。

チェックリストではなく、ゆるやかな順番

バランスはだいたいの順番で育っていき、時間割よりお子さまの準備ができているかどうかについていくほうが大切です。はじめは、手をつないで、ほんの少し高いところやでこぼこしたところを歩くだけでじゅうぶん。次は小さな段差をのぼりおりすること、それから細い線の上をひとりで歩くこと、そして片足立ちのようなポーズを数秒保つこと。そのあとにけんけん、さらに、バケツを運びながらなど、何かをしながらバランスをとることが続きます。

次のチャレンジは軽く差しだし、お子さまが断ってもかまわないようにしましょう。自信は、子どもが自分でやってみようと決めたときに育ち、ぐらぐらがプレッシャーのもとになると、しぼんでしまいます。今日はあきらかにむずかしそうなら、ひとつ前にもどって、やさしい版を楽しみましょう。急ぐことはありません。

訓練ではなく、遊びで安定を

子どもの注意は、指示より遊びのほうがずっと長く続きます。チョークでかいた丸を飛び石にする、庭に障害物コースをつくる、丸太をこえて土手をのぼる「先頭についてこい」、何かを落とさずに芝生の向こうまで運ぶ。どれもバランスの練習を楽しみに変えます。ペダルなし自転車やキックボードも、動きながらたえず小さな調整をするので、とてもいい練習になります。

こうした外でのバランス遊びは、毎日の体の動き全体のなかにすんなりおさまります。小さな子の目安では、一日のなかにたっぷりと体を動かす時間をちりばめることがすすめられていて、このような変化のある元気な遊びは、そのまま全部その時間に数えられます。しかも、決まった運動だけでは育ちにくい、体をじょうずに動かす力まで育ててくれます。

小さな転びは、起こさせてあげる

腕を広げてそばにはりつき、つまずくたびに受けとめたくなるものです。少しならそれは愛情で、かしこいことでもあります。でもやりすぎると、お子さまに必要な体験そのものを取りあげてしまいます。ぐらっとして立てなおす、やわらかい芝生にどすんとしりもちをつく、小さな転びならだいじょうぶだと知る。そうやってバランスのしくみは自分を調整し、自信は手に入っていきます。

子どもではなく、場所を整えましょう。むずかしいチャレンジにはやわらかい地面を選び、本当に高いところやかたい段差には近づけないようにして、あとは安全なふちを自由に試させてあげます。よく選んだ場所での、ほどよいリスクは、危険ではなく贈りものです。

もう少し注意して見たいとき

バランスが身につく速さは子どもによってとても大きくちがい、慎重な子やちょっと不器用な子は、たいてい自分のペースで進んでいるだけです。それでも、前にできていたことができなくなってきた、転び方がよくなるどころかひどくなっている、体重をかけられない、動くと痛そうにする、幼児期になってもでこぼこ道をふつうに歩くのがまわりの子とくらべてとてもむずかしそう、という場合は、かかりつけの小児科医や地域の保健師さんに気軽に相談してみてください。ほとんどの場合は安心して終わりますし、早めのアドバイスは、ずっと心配を抱えているより、いつでも楽です。

大多数の子にとって、作り方はとてもシンプルです。外に出て、ゆっくりして、縁石、土手、根っこ、地面の線を遊び道具にする。ぐらぐらは、さけるべき問題ではありません。それこそが練習なのです。

要点: バランスは、でこぼこ道での毎日のぐらぐらで育ちます。ゆっくり歩き、縁石や線をやさしいチャレンジに変えて、安全な小さな転びは見守りましょう。

NHS, Physical activity guidelines for children under 5

WHO, Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under 5