効果音で楽しむ、音楽のおはなし遊び
ふつうに語るおはなしも悪くありません。でも、巨人の足音に太鼓、風に口笛、ふる雨にマラカスがついたおはなしは、忘れられないものになります。おはなしに音を足すのは、小さな子といっしょにできる、いちばん夢中になれることのひとつで、準備はほとんどいりません。幼児期の音楽のおはなし遊びは、読み聞かせやつくり話を、ことば、聞く力、想像力をいっぺんに育てる、ゆたかな体全体の冒険に変えてくれます。
音がおはなしを生き生きさせる理由
幼児はドラマチックなことと、自分も参加できることが大好きです。聞こえて、自分でも出せる音があると、おはなしはただ受けとるものではなく、自分がその一部になるものに変わります。その参加が注意を深め、おはなしを記憶に残します。効果音は、目に見えないことばに手ざわりのあるとっかかりもくれます。巨人の足音をドシンドシンと足ぶみした子は、「とても大きい」「おもたい」を耳だけでなく体でわかります。だから音楽のおはなし遊びには、楽しさと同じくらいたくさんの学びがつまっているのです。
家にある絵本から
特別な教材はいりません。お気に入りの絵本と、ちょっとお芝居をする気持ちがあればじゅうぶん。読みながら、大事な場面に音を足しましょう。だれかがドアをノックしたら床をコンコン。風をヒューッ。登場人物が走ったら速い拍をトントン。大きくてこわいものは低くドーン、小さくてはずかしがりのものはささやき声で。子どもはすぐに音を予想しはじめ、やがて自分もいっしょに出したがるようになります。
音を子どもにまかせる
子どもが効果音係になると、本当の魔法が始まります。
- 役をまかせる。「あなたはかみなりね。わたしはおはなしを読むよ」
- どの登場人物にどの音をつけるか、子どもに選ばせる。
- 間をあけて待ち、来るとわかっている音で子どもにうめてもらう。
- かんたんな楽器を足す。雨にマラカス、足音に太鼓、かける馬にスプーン。
子どもが音を入れるのを待つのはとくにいい方法です。ちょうどいい瞬間に、聞いて、覚えて、こたえることを求めるからです。純粋な遊びの服を着た、注意力と、会話のやりとりのしっかりした練習です。
いっしょにおはなしをつくる
やり方がわかったら、絵本なしで、その場でおはなしをつくることもできます。かんたんな形があると助けになります。登場人物が旅に出て、とちゅうでいろいろなものに出会い、それぞれに音がある。「森の中を歩いていると」とゆっくり拍をたたきながら、「あれ、あの音はなんだろう?」。何にするかは子どもに決めてもらい、音をつけましょう。つくり話では、音だけでなくおはなしのすじも子どもがにぎれるので、ことばと想像力をすばらしく後押ししてくれます。
声を楽器にする
楽器はすてきですが、なくてもまったくかまいません。声だけでオーケストラになれます。ねずみは高くキーキー、くまは低くゆっくり、妖精は歌うように。登場人物ごとに声を変えると、だれが話しているかついていきやすくなり、話しことばの抑揚や表情のお手本にもなります。くり返し出てくることばには、リズミカルなとなえ歌を。同じ一節がめぐってくるたびに同じ小さなふしをつけると、子どもは喜んでいっしょにとなえます。
確かなことばの学びを織りこむ
音楽のおはなし遊びは、子どもの話す力やわかる力を、ひそかにたくさん育てます。新しいことばがドラマと音につつまれてやってくるので、覚えやすくなります。くり返しのフレーズで、話す自信がつきます。音を出す番を待つことで、会話のリズムを練習します。そして、大きい、小さい、速い、ゆっくり、とげとげ、なめらか、と音を言いあらわすことで、語彙がしぜんに広がります。どれも、だれかが教えようとしたからではなく、おはなしが楽しいから起きることです。
柔軟に、子どもにまかせて
いちばんいい時間は、子どもについていきます。10分ずっとかみなりでいたいなら、そうさせて。結末を変えたら、それに乗って。半分で興味をなくしたら、明るくやめましょう。音楽のおはなし遊びは、やりとげるべき発表ではなく、いっしょに楽しむ遊びで、無理に最後まで行くとつまらなくなります。短く、にぎやかで、子どもがかじをとる時間なら、幼児は「もっと」とせがみます。それこそが望むところです。
いっしょに楽しむことについて、ひと言
たいていの幼児は、音とおはなしに喜んで飛びこみます。いつも大人の声や音に反応しない、長いあいだおはなしやごっこ遊びにほとんど興味を示さない、あったことばがなくなっていくように見える、ということに気づいたら、乳幼児健診などのいつもの機会に伝えましょう。どれも気軽に話してみるきっかけで、あわてる理由ではありません。ほとんどの子にとって、おはなしに音を足すのは、ただただ楽しい20分の過ごし方です。
長く残るきらめき
おはなしに音楽をつけると、子どもに身を乗りだし、よく聞き、思いきり想像する理由をあげられます。音楽のおはなし遊びにかかるのは、ドーン、ヒューッ、キーキーと言ってみる気持ちだけ。そのかわりに、ゆたかなことば、するどい注意力、そして絵本やおはなしは世界でいちばんすてきなもののひとつだと思う子どもが返ってきます。今夜、お気に入りのおはなしを手にとって、にぎやかにしてみましょう。
ポイント: 音楽のおはなし遊びは、ことばと想像力を育てます。絵本やつくり話に効果音を足し、そして音は子どもにまかせましょう。