遠くに住む祖父母を、孫が忘れないように
小さな子は「今ここ」をめいっぱい生きていて、記憶は短く、すぐにほかのことで押しだされてしまいます。年に1、2回しか会えない祖父母は、そんなつもりはなくても、会えないあいだに知らない人のようになってしまうことがあり、みんなにとって胸の痛むことです。でも、この年ごろの記憶は、くり返しと手がかりによく反応します。だから毎日の小さな習慣がいくつかあれば、遠くの祖父母を生き生きと、大好きなままにしておけます。
ひと言でいうと
遠くに住む祖父母を子どもが覚えていられるようにするには、写真、ことばにする名前、定期的な連絡で、祖父母の顔と声と名前を毎日の暮らしの中に置いておくことです。小さな子の記憶をつくるのは、前回の訪問の大きさではなく、小さく、たびたびの思い出しです。
小さな子の記憶がうすれる理由
2歳から5歳くらいの子は、大人が当たり前に思っている、長く覚えておく力がまだ十分に育っておらず、時間の感覚もぼんやりしています。1か月がずっと先のように感じられ、しばらく会っていない人は、本当に頭から消えてしまうことがあります。これはまったくふつうのことで、きずなの強さとは関係ありません。解決策はかんたんです。うすれる前に記憶をつぎ足し続けて、祖父母を毎回覚えなおす人ではなく、子どもの心の中のいつもの家具の一部にしておくのです。
はじめに見ておきたいこと
今、わが子が思い出させるものにどう反応するかを見て、効くものを頼りにしましょう。ある写真で目がかがやく?ある動画が大好き?電話のあとに祖父母のことを聞いてくる?一日の中で、祖父母と結びつけられる自然なきっかけにも目を向けます。祖父母が教えてくれた食べもの、歌ってくれる歌、くれたおもちゃ。子ども自身の好きなものの上に積みあげると、思い出しが定着します。記憶は、気持ちのこもったものにいちばんよくくっつくからです。
記憶を生かし続けるプラン
- 子どもが毎日目にする場所に写真を置く。手にもてる小さなアルバムも。
- 電話のときだけでなく、毎日のふとした瞬間に、自然に祖父母の話をする。
- 連絡は短く、たびたび。顔と声がなじみのままでいられるように。
- 子どもがよく目にするもの、食べもの、歌と祖父母を結びつける。
祖父母を、毎日の暮らしの一部に
いちばん力のある道具は、祖父母をふだんの会話にただ織りこむことです。「じいじも犬が大好きなんだよ」「ばあばが見たら、きっと大笑いするね」「これは、ばあばがつくってくれた毛布だよ」。こうした小さなひと言は、電話だけよりずっとよく、会えないあいだの関係を生かし続けます。祖父母から教わった料理をつくって、その名前を言いましょう。寝る前にその人の歌を歌いましょう。祖父母がこんなふうに毎日の暮らしにぬいこまれていると、子どもは祖父母を「思い出す」というより、そもそも忘れなくなります。
写真、動画、声を使う
目に見える、耳に聞こえる手がかりが、大きな仕事をしてくれます。冷蔵庫の写真、ベッドのそばの小さなアルバム、小さな子が指させる写真立てが、顔を新しいままに保ちます。祖父母が絵本を読んだり、歌ったり、ただ「おはよう」と言ったりする短い動画は、見たいときに何度でも見られて、小さな子には宝物です。子守唄や寝る前のメッセージの録音は、祖父母を毎日の安心の時間と結びつけてくれます。よく見て、よく聞くなじみの顔と声は、うすれません。
カウントダウンと、会えないあいだのつながり
楽しみにできることがあると、関係はうしろではなく前を向き続けます。子どもに見えるカレンダーに印をつけた、次の帰省までのかんたんなカウントダウンは、待つことをわくわくに変えます。小さなやりとりも助けになります。子どもが描いた絵を送り、祖父母がシールや落ち葉を送ってくれる。こうした小さなやりとりが、めったに会えないあいだもつながりを手にとれるものにし、きずなを、よみがえらせる記憶ではなく、生きているものにしてくれます。
親にできることと、できないこと
親にできるのは、思い出しを流し続け、連絡を定期的に保つことです。めったに会えない祖父母があらわれたとき、とても小さな子が少しなじむ時間を必要とするのを止めることはできませんし、それでかまいません。訪問のはじめに少し顔をなじませなおすのはふつうのことで、記憶づくりの失敗ではありません。親の役目は、毎回すぐに思い出せることを約束することではなく、会えないあいだも火種を灯し続けて、すぐにまた燃えあがれるようにしておくことです。
距離が重くのしかかるとき
遠くのきずなを保ち続けるのは、気持ちの面で疲れることもあり、めったに会えないさみしさを認めるのは正直なことです。祖父母に会えなくて子どもが本当に落ちこんでいるように見えるとき、あるいは距離がもっと大きな家族の喪失や別れと結びついていて、子どもがそれに苦しんでいるときは、支えがあります。地域の保健師さん、かかりつけ医、自治体の子育てや家庭の相談窓口が、年齢に合った形で子どもと話す手助けをしてくれます。会いたいと思うのは愛情の形で、やさしく扱うに値するものです。
覚えておきたいこと
遠くに住む祖父母を子どもが覚えていられるようにするのに、劇的な訪問や手のこんだ計画はいりません。必要なのは、毎日の暮らしに織りこまれた、小さく変わらない思い出しです。指させる写真、寝る前の声、あたたかく口にする名前、そして次のぎゅっまでのカウントダウン。火種を静かに灯し続ければ、祖父母は取りもどすべき記憶ではなく、子どもがただ知っている人であり続けます。
ポイント: この年ごろの記憶は、小さな思い出しでつぎ足されます。祖父母の顔、声、名前を毎日の暮らしに織りこんでおけば、めったにない帰省も、自己紹介ではなく、うれしい再会になります。