祖父母といっしょに、わが家の年中行事を
行事やならわしは、子ども時代を静かに支える足場です。毎年同じお正月の料理、わが家だけの誕生日の歌、いつも語られるおはなし。その足場に祖父母がいると、子どもは、研究者が本当の心の健やかさと結びつけているものを手に入れます。強い居場所の感覚、そして自分より大きな物語の一部であるという感覚です。祖父母を織りこむには少し工夫がいりますが、何年にもわたって実を結びます。
ひと言でいうと
祖父母を家族の行事に迎えるには、わきの客席ではなく本当の役割をわたし、祖父母が自分の世代から受けついできたならわしを大切にし、遠くて同じ部屋にいられないときも、その存在を感じられるようにしておくことです。
行事がこんなに大切な理由
くり返される行事は、小さな子に見通しと、安心と、自分らしさをくれます。「うちの家族はこうするんだ」とわかっていることが、安心と自己肯定感を育てます。祖父母がその行事に織りこまれていると、子どもは、自分より前からずっと続く人たちのつらなりの一員だという、つながりの感覚も吸いこみます。世代をこえるこの糸は、親戚がくれるいちばん豊かな贈りもののひとつで、一度の大きな機会ではなく、くり返される共有の瞬間で育っていきます。
はじめに見ておきたいこと
わが家にすでにある行事に目を向けましょう。祖父母を迎えるいちばんかんたんな場所は、もうある行事の中だからです。誕生日、お正月やお盆、ひな祭りやこどもの日、七五三、日曜日の食事、休みの日、寝る前、季節のならわしを見わたします。祖父母自身がもっているならわしにも目を向けましょう。料理のつくりかた、歌、手あそび、自分の子ども時代の話。こうしたものは、放っておくと静かに消えてしまう家族や地域の受けつぎもので、子どもは仲間に入れてもらうのが大好きです。
祖父母を織りこむプラン
- すでにある行事の中で、祖父母に決まった役割をわたす。ひと品つくる、お祝いのある部分を進めてもらう、など。
- 祖父母ならではのものを、子どもに教えてもらう。料理、歌、工作、遊び。
- どんなにシンプルでも、祖父母を中心にした小さな新しいならわしをつくる。
- 遠くの祖父母は、電話、録音、いっしょの準備で、その場にいるように感じられるようにする。
祖父母に本当の役割を
人は、招かれただけでなく、必要とされたときに仲間だと感じます。祖父母をお客さんとして座らせるのではなく、本当に担ってもらう部分をわたしましょう。おじいちゃんはいつもおもちを焼く係、おばあちゃんはいつも栗きんとんをつくる係、寝る前の特別な絵本はばあばが読む。決まった役割は、形と、意味と、中心にいる理由をくれます。子どもはその行事をその祖父母と結びつけるようになり、人と行事が、記憶の中でうれしくからみあっていきます。
祖父母が受けついできたならわしを大切に
祖父母を本当に行事に迎えるには、ならわしの一部を祖父母のものにしましょう。自分が育ったころのお祝いのしかたを教えてもらう、自分のお母さんがつくっていた料理をつくってもらう、歌や言いならわしを伝えてもらう。受けつぎものは、こうして生きのびていきます。ある料理やならわしが何十年も、何世代も前からのものだと知るのを、子どもはとてもおもしろがります。祖父母にとっても、自分の歴史が大切にされていると伝わり、それ自体が贈りものになります。
遠くの祖父母も、行事の中に
距離があっても、誰ものけものにする必要はありません。ビデオ通話でお祝いに参加してもらう、毎年流すために、おきまりのおはなしを読んだ録音をつくってもらう、レシピを送ってもらって電話越しに「いっしょに」つくる。行事の前に電話をして、昔はどうしていたのか聞いてみるのもいいでしょう。遠くにいても、意識して場所をとっておけば、祖父母はわが家の行事の欠かせない一員であり続けられます。
親にできることと、できないこと
親にできるのは、役割をつくり、声をかけ、ならわしを用意することです。乗り気になってもらうことを無理強いはできませんし、すべての祖父母が期待どおりに関わってくれるわけでもありません。自分で選んで、気質から、事情から、あまり関わらない祖父母もいて、それは祖父母が決めることです。うらみに思わず、あたたかく、何度でも扉を開けておきましょう。そして祖父母がいつも参加できなくても、わが家の行事はそのまま続け、子どもの行事の感覚が、ほかの誰かの都合しだいにならないようにしておきます。
義務ではなく、楽しみのままに
行事は、義務ではなく居場所に感じられるものであるべきです。祖父母を迎えることが負担やぎくしゃくのもとに感じはじめたら、軽くしましょう。大切なのはあたたかさとつながりで、完璧に演出された行事ではありません。子どもにも行事をかたちづくってもらうと、かたくならずに育ち、楽しいまま続いていきます。プレッシャーやくらべっこで重くなった大きな行事より、楽しくくり返される小さな本物のならわしのほうが勝ります。
覚えておきたいこと
祖父母を家族の行事に迎えることは、子どもに一生を支えてくれる根っこの感覚をわたすことです。祖父母に本当の役割をわたし、受けついできたならわしを宝物にし、どんなに遠くても場所をとっておきましょう。どの料理か、どの歌か、どのおはなしかより、その下にくり返し流れるメッセージのほうがずっと大切です。あなたは、ずっと昔から続いていて、あなたをしっかり抱きしめている家族の一員なんだよ、というメッセージです。
ポイント: 祖父母には、見物の席ではなく本当の役割を。祖父母が受けついできたならわしを大切にし、どんなに遠くても場所をとっておけば、子どもは長く続く根っこを手に入れます。