「おかえり」を家族の小さな儀式に。帰宅後のぐずりをやわらげる迎え方
園のあと、仕事のあと、一日離れていたあとに、また家族がそろう瞬間は、子どもの一日の中でいちばん気持ちがゆれる時間のひとつで、そしてよくうまくいかなくなる時間です。みんな疲れて、おなかがすいて、バランスをくずしていて、再会がぐずぐずといらいらにとけてしまう。家族の「おかえり」の習慣をつくるとは、そのこわれやすい切りかえに、小さく頼れる形をあげることです。毎回「またそろったね、ここがあなたの場所だよ」と伝える形を。
再会の瞬間が大切なわけ
小さな子にとって、親と離れて、また会うことは、いつもどおりの一日のあとでも、本物の気持ちのできごとです。どうやって再会するかが、その夜まるごとの調子を決めます。急いでいて、うわの空で、いらいらした再会は、子どもを落ち着かなくさせ、べったりにさせることがあります。あたたかく見通しのある再会は、神経を落ち着かせ、心のタンクを満たしてくれます。「おかえり」の習慣は、そのつながりなおしを、偶然まかせではなく、確かなものにする方法にすぎません。
小さく、くり返せるものに
いちばんいい再会の習慣は、大変な日でもできるくらい小さいものです。何より先に子どもの目の高さまでかがんで、ちゃんと抱きしめる。玄関でいつも言う決まったことば。スマホをさわったり夕ごはんにとりかかったりする前の、2分間のまるごとの注目。家族の「おかえり」の習慣をつくるときは、手のこんだものにしたくなる気持ちをこらえましょう。短く、あたたかく、決してかかさない小さなしぐさは、落ち着いているときしかできないすてきなアイデアに勝ちます。
ためしてみたい、かんたんな習慣
- 何より先に、ひざをついて抱きしめ、「会えてうれしいよ」。
- ふたりだけのとくべつなタッチ、ハイタッチ、へんてこなあいさつ。
- 子どもがリードして親がついていく、2分間の「とくべつタイム」。
- その日のことを話してもらいながら、テーブルでいっしょにおやつ。
- 玄関で、みんなでいっしょに言うひと言。
その子と、親の元気に合うものをひとつ選んで、いつも同じようにしましょう。確かさこそが、ねらいです。どうやって家に迎えられるかがはっきりわかっている子は、その確かさを一日じゅう持ち歩いていきます。
正したり指示したりする前に、つながる
再会でいちばんよくある失敗は、段取りと要求から入ることです。靴をぬいで、手を洗って、今日は何したの?そのどれも、90秒は待てます。つながりが先、指示はそのあと。つながりなおせたと感じる子は、やることリストで迎えられた子より、ずっと声かけに応じやすくなります。正す前に、まずつながる。このシンプルなきまりが、多くの家族の帰宅後の1時間を変えてくれます。
帰ってからの「がまんの反動」は想定内
子どもは、園や学校で一日じゅうがんばって自分を保って、親という安全な場所にたどりついた瞬間に、くずれることがよくあります。せっかくのすてきな「おかえり」がこばまれたように感じるかもしれませんが、実はほめことばなのです。親こそが、やっと力をぬける安全な人なのですから。落ち着いた「おかえり」の習慣は、そのくずれにやわらかい着地場所をあげます。涙やふきげんを自分へのこばみと受けとらずに、あたたかさで迎えれば、たいていすぐに過ぎていきます。
このときの小さなおやつと飲みものは、驚くほど効きます。疲れた子はおなかをすかせていることが多く、元気の低さがぐらつきをあおるからです。あたたかい「おかえり」に、食べものと、急がない数分を組みあわせると、夜の用事が始まる前に、体と気持ちの両方が必要としているものをあげられます。
わが家に合わせて
「おかえり」の習慣は、本物の暮らしに合わせて形を変えます。帰ってくるのが親なら、子どもをどう迎えるかが中心になります。帰ってくるのが子どもなら、どう受けとめるかが中心です。ふたつの家を行き来する家族なら、受けわたしのたびに同じ「おかえり」の習慣があると、切りかえがぐんと楽になることがあります。形より、変わらないことのほうが大切です。うまくいくものを選んで、同じままにしておきましょう。
子どもといっしょに育てる
子どもが大きくなるにつれて、習慣は自然に変わっていきます。小さいころのひざをついての抱っこは、小学生になるころには、テーブルでの短いおしゃべりとおやつに、そしてやがて、いっしょにすごす数分といつもの質問になるかもしれません。確かなつながりなおしの瞬間という芯は残して、形は大人になっていくにまかせましょう。続いていくのは、家に帰ることは迎えられることなのだという、子どもの確かな実感です。
支えを求めたいとき
ある程度のべったりや再会のぐらつきは、とくに新しい園や変化のころには、まったくふつうのことです。でも、極端で長く続く、時間がたってもやわらがない別れのつらさがある、朝の別れとお迎えのたびにひどく苦しむ、再会がいつも家族みんなにとってきつすぎる、という場合は、地域の保健師さん、かかりつけ医、園の先生に話してみましょう。安心させてくれたり、やさしい工夫を提案してくれたりします。早めにたずねるのは、いつだって筋の通ったことです。
毎日の「おかえり」が、安心になる
離れている時間といっしょの時間のあいだの切りかえは、時間としては小さくても、気持ちとしては大きなものです。小さく、あたたかく、まったく確かな「おかえり」の習慣をつくり、指示より先につながり、帰宅後のかんしゃくは想定内として、やさしく受けとめましょう。そうすれば、毎日の火種が、子どもが愛されていて、待たれていて、家にいるのだという、毎日の安心に変わります。
ポイント: 再会に、小さく確かなあたたかい習慣を。指示より先につながりましょう。頼れる「おかえり」が、子どもの夜まるごとを落ち着かせます。