ふたつの文化をもつ家族。子どもが両方を自分のものにできるように

ひとつの家の中でふたつの文化が出会うと、子どもが混乱するのでは、ふたつの世界のあいだでどっちつかずになるのでは、どちらにもまるごとは属せないのでは、と心配する親もいます。でも実際には、子どもは大人が思うよりずっと、ひとつより多くのルーツを持っていられます。めざすのは、勝者を選ぶことではありません。ひとつの家族でふたつの文化を大切にするとき、親は子どもに、もっと広く豊かな自分の感覚と、そのすべてを自分のものと言っていい許可を渡しているのです。

どちらか、ではなく、どちらも

いちばん助けになる考え方は、「どちらか」ではなく「どちらも」です。子どもは、平日はひとつの文化、週末はもうひとつ、と分かれたり、気持ちをまっぷたつに分けたりしなくていいのです。両方に、同時に、まるごと属していられます。ルーツを競争ではなく足し算として話すと、みんなのプレッシャーが消え、家族のそれぞれの側を子どもに大切に思ってほしいという、その尊重のお手本を見せられます。

毎日の暮らしに織りこむ

大きなお祭りも大切ですが、毎日の暮らしも同じくらい力強く文化を運びます。食べもの、ことば、音楽、あいさつ、家の小さなくせ。どれも、何の儀式もなしに自分らしさを手わたしてくれます。それぞれの側の料理をつくる、両方のことばの歌を流す、祖父母の母国語のふだんのことばを台所で使いつづける。そうしたことが、ここではどちらの世界もただふつうのことなのだと、静かに子どもに伝えます。

両方を生かしつづけるアイデア

  • 両方の料理を、子どもに手伝ってもらいながら、くり返しつくる。
  • それぞれのことばの大事なことば、歌、わらべうたを、毎日使う。
  • 両方の伝統の主な行事を、小さな形でもお祝いする。
  • それぞれの側の親せきとビデオ通話して、顔と声をなじみのものにしておく。
  • 両方の文化や、いろいろな肌の色が描かれた絵本を読む。

ぜんぶやらなくていいし、完璧にやる必要もまったくありません。本当に続けられる錨を、それぞれの側からいくつか選びましょう。すべてのお祭りやならわしを再現しようと疲れはてるより、いくつかのことを続けるほうが、子どもにしっかりした土台をくれます。

ことばは、テストではなく贈りもの

家族でふたつ以上のことばが話されているなら、自由に使いましょう。ひとつより多くのことばの中で育つ子は、ときどきことばをまぜたり、使い分けるのに少し時間がかかったりすることがありますが、それはまったくふつうで、問題のしるしではありません。家庭のことばが運ぶ、祖父母や国やルーツへのつながりは、単語がきれいに分かれるかどうかを心配するより、ずっと価値があります。

違いには、正直に向き合う

ふたつの文化は、食べもの、行事、しつけ、宗教について、本当に違う考えを持っていることがあります。それを子どもからかくすのではなく、おたがいを尊重した話しあいのお手本を見せましょう。ママの家族はこうする、パパの家族はああする、そしてどちらも愛されていて、どちらも正しい。子どもがそれを見るのはかまわないのです。親どうしがおたがいのルーツを大切にする姿を見ることで、家族の中の違いは安全なもので、自分の一部をこばむよう求められることは決してないのだと学べます。

まわりの家族も巻きこむ

祖父母、おじさんおばさん、家族ぐるみの友人は、それぞれの文化への生きたつながりです。子どもは、ルーツを、それを体現している人たちを通して、あざやかに学びます。祖父母が料理や歌やいくつかのことばを教えてくれることは、どんな本にもできないものを子どもにくれます。親せきが遠くにいたり、もう亡くなっていたりするなら、写真、録音したおはなし、その人の料理をつくることが、つながりを今に保ってくれます。それは、ひとつの家族でふたつの文化を大切にする、いちばん楽しい方法のひとつです。

大きくなったら、子どものリードで

大きくなるにつれて、子どもは自分なりのやり方で自分らしさを探っていき、ある時期には片方の文化をもっと近く感じることもあるでしょう。それは自分が何者かを見つけていくふつうの一部で、もう片方をこばんでいるのではありません。両方へのドアを開けておき、罪悪感をもたせず、両方に根をはった子ども時代が、いつでも戻ってこられる安心の基地になると信じましょう。自分らしさは、決まった設定ではなく、一生の旅です。

子どもがつらそうなとき

たいていの子は、ふたつのルーツをのびのびと、誇りをもって乗りこなしていきます。でもときどき、ルーツについてからかわれたり、仲間はずれにされたり、差別されたりする子や、自分の一部を本当につらく、はずかしく思っているように見える子もいます。しっかり受けとめましょう。率直に話し、その子のまるごとの自分らしさを肯定し、園や学校とつながります。気分の落ちこみ、不安、引きこもりが続くなら、かかりつけ医や心の相談の窓口に話してください。子どもの居場所の感覚は、その子の元気と深く結びついているからです。

長く残るメッセージ

めざすことはシンプルです。どちらの文化も、まるごと自分のものとして持っていていいのだと感じながら、子どもが育つこと。食べもの、ことば、行事、それを運ぶ人たちを通して、ひとつの家族でふたつの文化を大切にするとき、親は何もうすめてなどいません。自分は誰か、という問いへの、もっと大きく、あたたかく、まるごとの答えを、子どもに手わたしているのです。

ポイント: ふたつの文化は「どちらか」ではなく「どちらも」。それぞれの側から続けられる錨をいくつか毎日の暮らしに織りこみ、子どもがそのすべてを自分のものにできるようにしましょう。

UNICEF, Parenting across cultures and identity

NHS, Children and young people's mental health and wellbeing