動画のおしまいを、毎日のたたかいにしないために
毎日のなかで、タブレットを消す瞬間ほど確実にかんしゃくを呼ぶものは、そう多くありません。ついさっきまでごきげんだった小さな子が、次の瞬間にはなぐさめようがないほど泣いている。ボタンをおしただけで大人が泣かせているような気がすることもあるでしょう。なぜ消す瞬間がこんなに大変なのかを知り、やり方を組みなおせば、一日のなかの確実なたたかいのひとつが、ずっとおだやかなものに変わります。
大変なのは、終わるところ
小さな子が画面からの切りかえでつまずくのは、画面そのもののせいではないことがほとんどです。夢中になれて、気持ちが高ぶる活動から、なれる時間もなしにふつうのくらしへいきなり引きもどされる。そこが問題なのです。小さな子は「いま」を生きていて、変化に向けて自分で心の準備をする力はまだほとんどありません。だから、いきなりの「おしまい」は、足もとのじゅうたんを引きぬかれたように感じられます。涙は反抗ではなく、発達のうえでの現実です。そうとらえなおすだけで、根気よくつきあいやすくなります。
消す前に、予告する
いちばん大きな変化は、前もって知らせることです。終わる2、3分前に、何が来るかをはっきり、あたたかく伝えましょう。「あと2分で、タブレットはねんねするよ」。脳が追いつく時間ができます。とても小さな子は時間の感覚がまだあやふやなので、何分という数字より、「このおはなしが終わったら」のような具体的なものとセットにするほうがうまくいきます。
おしまいは、中身にまかせる
見ているとちゅうで画面とたたかうのは、負けいくさです。「もうちょっとだけ」の引力と張りあうことになるからです。番組が終わる、ステージが終わる、歌が終わるといった区切りのいいところで終えれば、あつれきの多くが消えます。ここで自動再生をオフにしておくことが欠かせません。次の回が待ちかまえていると、ひとつ終わった瞬間に言いあいがまた始まってしまいます。中身そのものがおしまいを知らせてくれれば、小さな子にとっての切りかえは、大人が取りあげるものではなく、いっしょに打つピリオドになります。
言いあうより、気持ちに名前を
それでも泣いてしまったら、言いきかせたりお説教したりしたくなる気持ちはこらえましょう。取りみだしている小さな子は、理屈を受けとれません。気持ちに名前をつけるほうが効きます。「おしまいになって、すごくいやだったね。楽しいときにやめるのは、むずかしいよね」。画面を返すということではありません。線は守ったまま、気持ちを受けとめるということです。わかってもらえたとお子さまが感じられ、画面のルールの説明より早く落ちつきます。
やわらかい着地点を用意しておく
画面が何もないところで終わると、衝撃がいちばん大きくなります。行き先があるよう、楽しそうな次のことを用意しておきましょう。おやつ、お風呂、お子さまが手伝うのが好きな用事、外に出ること。「タブレットはおしまい。夕ごはんのお茶をつぐの、手伝って」と言えば、からっぽの空白ではなく、画面から出ていく橋ができます。この習慣ひとつで、消すときのかんしゃくの大部分を防げます。
大人の落ちつきを保つ
小さな子は大人から合図を受けとるので、おしまいの場面で大人がぴりぴりすると、子どもはそれを感じます。抗議されても、さらっとやさしくしていれば、これはふつうのことで、なんとかなることだと伝わります。取引に引きこまれたり、声を大きくしたりすると、たいてい事態は大きくなり、おしまいは交渉できるものだと教えてしまいます。落ちついた、動じない声の調子は、ひそかにいちばん効く道具のひとつです。
流れを予想できるものに
何が来るかわかっていると、子どもの抵抗はずっと減ります。食事の前、お風呂の前、番組をひとつ見たあとなど、画面がいつも同じところで終われば、お子さまはその形を覚えて、毎回ためさなくなります。予想できると、画面からの切りかえのひとつひとつが、新しい交渉ではなく、なじみの流れになります。そしてなじみは、多くの親がおどろくほど、小さな子の気持ちを落ちつけてくれます。
始め方も、ふり返ってみる
始まりがあいまいだったせいで、おしまいが大変になることもあります。小さな子とでも、始める前に何をどれだけ見るか決めておくと、最初から見通しが立ちます。「おはなしを2つ見たら、お風呂だよ」と言っておけば、ゴールラインが早めに置かれ、おしまいは不意うちではなく、お子さまがもう知っていた計画のしめくくりになります。
いつまでもたたかいがおさまらないとき
ある程度もめるのはまったくふつうのことです。でも、画面のおしまいのたびに毎回、つりあわないほどひどく長く取りみだす、どんな変化にもまったく対応できないように見える、という場合は、かかりつけの小児科医や地域の保健師さんに伝えてみる価値があります。消すときのかんしゃくのほとんどはふつうのもので、一貫して続けるうちに消えていきます。ただ、切りかえがとても苦手なことが、専門家がいっしょに理解して支えられる、もっと広い姿の一部であることもあります。
落ちつくまで、時間をかけて
新しいやり方が初日から完璧にうまくいくことはありません。小さな子は、線が本物かどうか確かめるためにこそ、ためしてくるので、最初の数日はおしかえしがあって、そのあとでおだやかなパターンが落ちつくと思っておきましょう。大人と、ほかにお世話する人たちが1、2週間一貫していることが、おしまいはたよれて、やさしくて、交渉するものではないとお子さまに教えます。どんなうまい工夫より、そのたよれる感じこそが、消す瞬間からたたかいを取りのぞいてくれます。
ここがポイント: 画面は区切りのいいところで、はっきり予告してから終えましょう。画面は返さずに気持ちに名前をつけ、やわらかい着地点として、楽しそうな次のことをいつも用意して。
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