テレビのつけっぱなしと、家族の会話
だれもちゃんと見ていないのについているテレビは、家族のくらしのなかで、いちばん見すごされがちな画面の習慣のひとつです。料理をしたり、洗たくものをたたんだり、メールの返事をしたりするあいだ、ずっとうしろで流れていて、だれもくぎづけになっていないので、害がないように感じられます。でも、そのたえまないちらつきとおしゃべりは、お子さまが遊ぶ部屋の空気をつくっています。それを知るだけで、使い方が静かに変わっていきます。
「つけっぱなし」とは、どういうことか
小さな子にとってのつけっぱなしのテレビとは、本当の関心がおもちゃやお絵かき、おやつ、大人のほうにあるあいだに、部屋で番組が流れている状態のことです。いっしょにすわって何かを見るのとはちがいます。テレビは大人のため、あるいはただのにぎやかしとしてついていて、子どもはその空間を出たり入ったりします。だれも子どものために選んだわけではないので、わざわざ見るよりずっと長くついていることがよくあります。
遊びへの影響
研究では、うしろで流れるテレビが、小さな子の注意を小さく何度も引っぱることがくり返し示されています。音楽が流れたり場面が変わったりするたびに、目が一瞬テレビのほうへ上がり、それからまたおもちゃにもどる。これが、子どもが集中力や問題を解く力、想像力を練習している、深くとぎれない遊びを中断させます。子どもがテレビを気にしていないように見えても、画面が近くで光っているあいだは、遊びが短く、浅くなりがちです。
会話への影響
ことばは、毎日のやりとりのなかで育ちます。ふだんの用事をしながら大人と子どものあいだを行き来する、小さなひと言や問いかけです。つけっぱなしのテレビは、まさにそれと張りあいます。部屋が番組の音でいっぱいだと、親は自然と話す量が減り、反応もひと呼吸おそくなります。語彙のほとんどを自分に向けられたことばからつくっていく赤ちゃんや小さな子にとって、その静かなおしゃべりの減少こそが、いちばん大切なところです。
なぜ見すごしてしまうのか
小さな子がつけっぱなしのテレビのなかで育ってしまうのは、それが何も求めないからです。だれもほしがらず、だれも取りあわず、家で過ごす長い一日のさみしくなりがちな静けさをうめてくれる。私たちの多くも、一日じゅうテレビがついている家で育ち、それをなつかしく覚えています。この習慣に気づくのは、罪悪感をもつためではありません。ふだん見えないままのものを、ただ見えるようにするためです。
画面の「音量」を下げる、小さな置きかえ
しーんとした静けさはいりませんし、たいていの家はそれを目指していません。いちばんやさしい変化は、だれも見ていないときはテレビを消して、同じようには注意を引っぱらないものに手をのばすことです。音楽、ラジオ、おはなしの音声、あるいはただの家のふつうの物音。目への引っぱりなしに、にぎやかさをくれます。1日か2日で部屋が落ちついたと感じる親も多くいます。
毎日のおしゃべりを取りもどす
かわりに、ちょっとした瞬間を実況してみましょう。料理をしながらしていることを話す、遊びのなかで色の名前を言う、小さな子にかんたんな質問をする。手持ちぶさたな時間が、ことばの豊かな時間になり、お金もかかりません。いつも演じたり教えたりするということではありません。つけっぱなしのテレビがいつもおしのけていた、ふつうの会話を、部屋に呼びもどすということです。
食事の時間は、とくに守りたい
テレビを消す時間をひとつ選ぶなら、いっしょに食べるときです。食事はもともと会話と順番のやりとりとつながりにあふれていて、部屋の向こうで流れる画面は、そのすべてをしずませてしまいます。家族の食事のあいだテレビを消しておくのは、いちばんシンプルで、いちばん価値のある変化のひとつで、短いおやつの時間でさえ、ずっとなごやかなものになります。
うしろの音が本当に助けになるとき
うしろに少し画面や音があるのが、もっともな取引になるときもあります。病みあがりの親、ばたばたの夕ごはんどき、大事な電話をかけるのにどうしても必要な10分。どれも本当のくらしです。目指すのはゼロではなく、意図をもつことです。禁止するのではなく、だれも見ていないのについている時間を減らすこと。それが、たいていの家族にとって現実的でやさしい目標です。
とても小さな赤ちゃんのために
およそ1歳半未満の赤ちゃんについては、WHOなどの保健機関が、ビデオ通話以外の画面はさけるようすすめていて、つけっぱなしのテレビもこれにふくまれます。赤ちゃんはとくに、テレビがついていることで親の話しかけが減る影響を受けやすいのです。赤ちゃんと家でふたりきりで、大人の声が恋しいときは、音声だけのものなら、お子さまから目への引っぱりを遠ざけたまま、必要なにぎやかさを手に入れられます。
1週間かけて、変化を見る
1日ではなく、ふつうの何日かを通して、遊びが少し長く続くようになったか、お子さまのおしゃべりがふえたか、たえまない音にいらいらしにくくなったかに気づいてみましょう。助けになることは残し、完璧を追いかけないこと。家にはいそがしい時期がありますし、ときどきテレビがつくのは家族のくらしのふつうの一部です。残す価値のある変化は、ただひとつ。テレビがついているのは、だれも消さなかったからではなく、だれかが選んだから、ということです。
ポイント: だれも見ていないテレビは、小さな子に必要な遊びと毎日の会話を静かにけずります。見ていないときは消し、食事の時間は画面なしで守りましょう。
WHO, Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under 5 years