1回の身長や体重の測定だけでは、成長はわからない
健診の画面に出た1つの数字が、1週間ずっと頭から離れないことがあります。でも成長は写真ではなく動画のようなもので、1枚のスナップ写真はおどろくほど人をまどわせます。成長の心配の多くの裏には、静かな真実があります。1回の身長や体重の測定だけでは、全体のおはなしはわかりません。ぽつんと1つある値には、背景も方向もないからです。
1つの点には方向がない
高速道路のある地点に車がいる、と聞かされたところを想像してみてください。それだけでは、スピードを上げているのか、落としているのか、止まっているのかわかりません。1回の成長の測定も同じです。今どこにいるかはわかっても、着実にのぼっているのか、波と波のあいだでひと休みしているのか、本当に自分の線から離れていっているのかはわかりません。
医療者は、成長を点ではなく線として読みます。何週間か、何か月かにわたる2つか3つの測定が、おはなしの形を見せてくれます。1回の身長や体重の測定だけでは全体がわからない理由は、シンプルです。成長とは動きのことで、1つの点では動きは見えないからです。
1回の値を動かす、たくさんのこと
どの1回の測定にも、それなりの誤差がつきものです。家で測るときはとくに。よくある原因はこうです。
- たくさん飲んだり食べたりしたあと、おむつを替える前に測ると、本当の増えではない数百グラムが加わることがある。
- 体重計の上でじっとしていない幼児や、壁の前でつま先立ちする子。
- 違う体重計や、少し違う器具を使う別の場所。
- 時間帯。子どもは朝のほうが少し背が高く、体重は一日のなかで少しずつ変わる。
- 前回と今回で、服やくつが違う。
どれも子どもの実際の成長は変えませんが、どれでも、1回の数字を、心配させたり、まちがって安心させたりするほど動かすことがあります。
ふつうの成長は、でこぼこ
完璧に測ったとしても、本当の成長はなめらかではありません。子どもは静かな時期をはさんだ波のように育つので、成長曲線には自然に平らなところと急なのぼりがあります。ひと休みの時期に測った1回の値は止まっているように見え、スパートの直後に測った値は飛びあがったように見えます。どちらもふつうのリズムの一部だったとわかるのは、続けて見たときだけです。
病気も、でこぼこを加えます。かぜやおなかのかぜで、1〜2週間体重が止まり、そのあと戻るのはよくあることです。その減りだけを切りとって見るとぎょっとしますが、次の値で戻っているのを見れば、ただの一時的なゆれだとはっきりわかります。動けるようになった赤ちゃんがはいはいやつたい歩きを始めたあとも同じで、体重の増えがゆっくりになるのは、問題のしるしではなく、あれだけ動きまわっていることの代償にすぎません。
身長と体重は、セットで
1つの数字がまどわせるもう一つの理由は、身長と体重が違う問いにこたえていて、並べて読むのがいちばんだからです。体重だけ高いと心配に見えても、同じくらい背も高くて、ただつり合いのとれた体格だと気づくこともあります。体重が低めで心配に見えても、身長も同じくらいの位置にあることもあります。片方だけ、あるいは流れなしで読むと、意味をもたせてくれる背景がはぎとられてしまいます。
流れが本当に見せてくれるもの
時間をかけて測定を追うと、大事な問いにこたえられます。だいたい自分のパーセンタイルにそって進んでいるか。病気のあとに下がっても戻っているか。身長と体重がいっしょに動いているか。全体の方向は、急に下がるのではなく着実か。安心できる流れは、高くても低くても、成長曲線のどこにあってもかまいません。その子自身の、変わらない線であれば。
だからこそ、専門家が1回の結果だけで動くことはめったにありません。1回だけの意外な結果は、結論ではなく、たいていもう一度測るきっかけになります。1つの点だけでは信頼できないからです。
1つの点ではなく、パターンを相談する
意味をもつのは流れなので、動くべきサインもパターンについてのものです。何回かの測定で、体重や身長がパーセンタイルの線を2本分以上またいで下がる、成長が長いあいだ横ばいになる、変化と同時に食欲がない、元気がない、病気が続く、発達の目安に届かない。こうしたときは、かかりつけの小児科医か保健師に相談してみましょう。反対に、1回だけ変わった値が出たときは、誰かが心配する前に、もう一度測って確かめるのがたいていいちばんです。
聞くのに完璧なデータはいりません。何か変だと感じたら、食べかた、元気さ、機嫌について気づいたことを話し、日付のある記録をあるだけ持っていけば、医療者はぽつんとした点ではなく線を見られます。
全体を見て、安心する
実際のメッセージは、心を軽くしてくれるものです。1回の体重や身長の測定が意外な結果だったとしても、ぐるぐる考えこまなくて大丈夫。ひと息ついて、いつもの毎日を続け、少し時間をおいて、ていねいに測った次の値に背景を足してもらいましょう。意外な1回の値の多くは、測るときの誤差か、ふつうのでこぼこだとわかります。
どの数字も軽く持ち、時間をかけた方向を見ましょう。1週間を通してそこそこ食べ、元気に遊び、眠り、発達の目安を重ねている子は、ある1回の測定がどうであれ、すくすく育っている可能性が高いのです。1回の測定だけでは全体はわからないと覚えておけば、毎回の数字に反応せずにすみます。点ではなく流れを信じることが、子どもの成長を見守る、いちばん落ち着いていて、いちばん正確な方法です。
ポイント: 1回の測定には誤差があり、方向もありません。何回かのていねいな測定を、身長と体重いっしょに見た流れこそが、本当のおはなしを語ります。