叱るときのことば、家族みんなでそろえるには

小さな子がかんだり、取りあげたり、貸さなかったりしたとき、大人がどんなことばでこたえるかは、とても大切です。でも、子どものまわりの大人がそれぞれ違うことばを使っていたらどうでしょう。ある人は「やさしい手でね」、ある人は「やめなさい」、ある人は「悪い子だね」。子どもは毎回、新しいメッセージを読みとかなければなりません。共通のひと言を決めるのは小さなことに聞こえますが、伝えたいことが本当に子どもの中に入っていくための、いちばん力のある方法のひとつです。

ことばそのものが大切な理由

しつけが効くのは、子どもをこわがらせて従わせるからではなく、何を期待されているかを理解させ、少しずつ自分をコントロールする力を育てるからです。その学びは、みんなが同じかんたんな形でくり返すと、ずっと早く進みます。そろったことばは、小さな子にとって、はっきりした覚えやすい合図になります。子どもはそれを聞きわけるようになり、やがて自分自身に言い聞かせるようになります。ポジティブな子育てについての公的な案内も一貫して、きびしい対応やころころ変わる対応より、落ち着いた、はっきりした、いつも同じ対応をすすめています。共通のことばは、まさにそれです。

よくある場面のひと言を決める

ほかの大人といっしょに座って、毎日の火種を挙げてみましょう。たたく、かむ、取りあげる、走っていってしまう、帰るのをいやがる。それぞれについて、みんなが使う短くて前向きなひと言を決めます。たたいたら「やさしい手でね」、取りあげたら「順番を待とうね」、ソファにのぼったら「足は床だよ」。共通の台本を前もって少しだけ決めておけば、誰が子どもといても、同じ落ち着いたメッセージが届きます。ひと言は、何をやめるかだけでなく、何をすればいいかを伝えるときに、いちばんよく効きます。

ことばと同じくらい、声の調子も

同じひと言でも、ある大人はあたたかく、別の大人はどなって言うなら、子どもにとってはそろっているとは感じられません。小さな子にとって、声の調子はことばと同じくらい意味をもっています。何を言うかだけでなく、どう言うかもそろえましょう。怒ったり、すがるようにしたりするのではなく、落ち着いて、きっぱり、低めの声で。同じ行動に、ある大人は落ち着いていて、別の大人はかっとなるなら、そろったことばの価値の多くが失われます。共通のことばと、共通の落ち着いた態度、両方をめざしましょう。

そのあとの対応も、そろえる

ことばは半分にすぎず、そのあと何が起きるかもそろっている必要があります。「やさしい手でね」のあと、ある大人は短く気持ちを落ち着ける時間をとり、別の大人は長いお説教、また別の大人は何もしない、というのでは、同じひと言から子どもはまったく違うことを学びます。少し間をおく、おもちゃを少しのあいだあずかる、その場から子どもを離す、など、年齢に合ったかんたんな対応を決めて、はじめから終わりまで見通しのある対応にしましょう。教えてくれるのは、ひと言だけでなく、流れ全体がそろっていることです。

共通の台本を、書いておく

よい心がけも、疲れた午後にはうすれます。決めたひと言の短いリストを冷蔵庫にはったりメモにしたりしておくと、みんなが台本どおりに動けます。とくに、新しく来た人やたまにしか手伝わない人の助けになります。「あの子があれをしたら、何て言うんだっけ?」という問いも、そのさなかに入る前に片づきます。リストは短く、多くても5つか6つにしておくと、本当に覚えて使ってもらえます。

正すだけでなく、励ますことばも

そろったことばは、よいところを口にするときにも使うと、さらに力を発揮します。ほめことばも決めておきましょう。「上手に貸せたね」「待ってくれてありがとう」「やさしくできたね」。子どもは気づいてもらえたことをくり返すので、見たい行動を同じあたたかいことばでいつもほめるチームのもとでは、その行動が増えていきます。正す台本と励ます台本のバランスをとると、「だめ」が続くのではなく、全体が前向きに保たれます。

子どもの成長に合わせて、ことばも変える

2歳の子に合うひと言は、4歳の子には赤ちゃんっぽく感じられますし、大きくなった子はもう少し説明を受けとめられます。共通の台本はときどき見直して、いっしょに書きかえ、年齢に合ったものにしておきましょう。成長につれて、かんたんな指示から、「みんなが使えるように順番こしようね」のような短い理由へと進めていけます。そのときも、ことばは大人どうしでそろえておきます。具体的なことばは成長しても、考えかたは変わりません。

それぞれのあたたかさは、そのままに

しつけのことばをそろえても、大人が入れかえ可能なロボットになるわけではありません。どの大人にも自分らしさ、ユーモア、なぐさめかたがあり、その違いは子どもにとってよいものです。共通の台本は関係の骨組みであって、関係全体の台本ではありません。大事なひと言と対応はぶれずに保ち、そのまわりのすべてには、それぞれの大人のあたたかさを持ちこみましょう。

ふつうの「ためし」をこえる行動のとき

小さな子の手のかかる行動のほとんどは、ふつうの発達の一部で、落ち着いたいつも同じ対応でその大部分に向き合えます。でもときには、それ以上のことが起きていることもあります。乱暴さ、反抗、つらさが激しく、しょっちゅうで、落ち着いた変わらない対応を続けてもやわらがない、年齢にそぐわないように見える、人間関係や家族の暮らしに影響している、という場合は、地域の保健師さんやかかりつけ医に相談してみる価値があります。行動の裏にあるものや、どんな支えが助けになるかを、いっしょに考えてもらえます。

すべての大人に同じことばを使ってもらうのに必要なのは、短い話し合いと冷蔵庫のメモひとつ。それが毎日、実を結びます。親からも、祖父母からも、シッターさんからも、同じ落ち着いた声で「やさしい手でね」を聞く子は、会う大人ごとに新しいメッセージを読みとかなければならない子より、ずっと早くそれを身につけます。

ポイント: 落ち着いた共通のひと言、声の調子、そのあとの対応を、すべての大人でそろえると、ばらばらのメッセージよりずっと早く、子どもは何を期待されているかを学べます。

UNICEF, How to discipline your child the smart and healthy way

NHS, Dealing with child behaviour problems