子育ての文化の違い、家族でどう尊重しあう?
ひとつ以上の文化の中で育つ子どもはたくさんいます。違う国や地域の出身のふたりの親、ほかの国の伝統を大切にしている祖父母、自分とは違う習慣をもつシッターさん。この重なりは贈りものです。でも同時に、食べもの、眠り、しつけ、敬いかた、「よい子ども時代」とは何か、といったことで正直な違いが出てくることもあります。どちらか一方だけを正しいとするのではなく、敬意をもって違いを扱えるかどうかで、家族みんなの居心地は変わってきます。
違うことは、まちがいではない
まず、本当はただ違うだけのやりかたに、正しい、まちがいの順位をつけるのをやめてみましょう。子どもに何をどう食べさせるか、どう抱き、どう話しかけ、どう寝かせ、どうふるまいを教えるかは、文化によって大きく違います。そして子どもは、その幅広いやりかたのどれのもとでも健やかに育ちます。家族の中の文化の違いは、たいてい愛情の違いではなく習慣の違いだと気づくと、話し合いが始まる前から、よけいな決めつけがずいぶん取りのぞかれます。
心配する前に、興味をもつ
祖父母やパートナーが見なれないことをしたとき、正すより、あたたかくたずねるほうがずっとうまくいきます。「どうしてそうするのか、教えて」は会話を開き、「そうしちゃだめ」は会話を閉じます。理由を知ると、長い歴史とちゃんとした筋道がある習慣であることが多く、ときには喜んでとり入れたくなることもあります。家族がもちこむ文化の違いに本当の興味をもって向き合うと、敬意が伝わり、たいていはみんなが子どもに同じものを願っていることがわかってきます。
習慣と、安全を分ける
ひとつだけ、大切に守りたい線があります。食べもの、行事、ことば、愛情の表しかたなど、文化の違いのほとんどは伝統の問題で、そのすべてに居場所があります。もっと小さな一部が、安全な睡眠、チャイルドシート、赤ちゃんへの食べさせかたなど、今の安全の目安にかかわってきます。習慣が本当の安全のすすめとぶつかるときは、根拠にもとづいて、やさしく話し合う価値があります。伝統と安全を見分けると、文化を大切にしながら、子どもを守れます。
子どもは、いくつもの伝統をもてる
子どもは、一度にいくつもの世界に属することがおどろくほど上手です。片方のおばあちゃんの料理も、もう片方のおばあちゃんの料理も食べ、いくつもの行事を祝い、いくつものことばを聞き、家ごとに違う敬いかたを覚えられます。それで混乱するのではなく、豊かになり、重なりあった強い「自分」の感覚が育ちます。どれかを選ばせるのではなく、ふたつの、あるいはすべての伝統が、自分のものとして受けついでいいものだと、子どもに伝えましょう。
ことばと、ルーツを生かし続ける
家族がひとつ以上のことばや故郷にまたがっているなら、そのルーツを分けあうことは、子どもに手わたせるいちばん価値あるもののひとつです。祖父母には、自分のことばで話し、昔話をし、ふるさとの料理をつくってもらいましょう。いくつものことばの中で育つことは、さまたげではなく財産です。自分がどこから来たかを知っている子は、それを静かな強さとしてもち続けることが多いものです。どの大人にもルーツを分けあう場所をつくると、世代をこえてうすれていくのではなく、根が生き生きと保たれます。
違いは、大人どうしで話し合う
本当に意見が合わないところは、子どもの前でも、こっそりお互いを上書きするのでもなく、大人どうしで落ち着いて、ふたりのときに整理しましょう。自分の理由を説明し、相手の理由を聞き、重なるところを探します。それはたいてい、ぶつかるところより大きいものです。目に見える衝突の多くは、お互いの意図がわかると消えていきます。いっしょに話し合ったうえでの共通のやりかたは、子どもを板ばさみにする習慣どうしの冷戦よりずっといいのです。
あたたかく、そろった姿を見せる
何を決めたにせよ、子どもにとっていちばんいいのは、大人どうしが敬いあっていると感じられることです。お互いのルーツをあたたかく話し、お互いの伝統にいっしょに加わり、子どもの前でどちらかの文化をけなさない。それは違いを敬うことについての、大切な教えになります。大好きな大人どうしがお互いのやりかたを大切にしているのを見て育つ子は、心がひらかれ、安心し、自分のまざりあったルーツに誇りをもてるようになります。
やりかたが本当に心配なとき
敬意とは、何でも認めるということではありません。赤ちゃんの眠り、食事、子どもを傷つけるおそれのあることなど、お世話のやりかたがはっきりした安全の目安とぶつかるなら、やさしく、でもきっぱり伝えるのが正しいことです。個人の好みではなく、今の公的な案内をよりどころにしましょう。害のない習慣なのか本当の危険なのか迷うときは、地域の保健師さんやかかりつけ医が、中立で根拠のある助言をくれます。「今の案内ではこうなっているよ」と伝えると、どちらの文化が正しいかではなく、子どもの安全に目が向きます。
時間をかけて、ともに育つ
ひとつの家族の中で文化をまぜあわせるのは、一度で解決する問題ではなく、子どもが育ち、自分の疑問をもつにつれて変わり続ける関係です。心をひらき、話し続け、お互いの伝統を、さまたげではなく学びのもととして扱いましょう。時間がたつにつれて、多くの家族は、それぞれのルーツのいいところをとった、自分たちらしい心地よいまざりかたを見つけていきます。
文化をまたいで育つ子は、食べもの、ことば、お祝い、居場所の、豊かなたくわえを受けつぎます。大人の役目は勝ち負けを決めることではなく、その糸を敬意をもって織りあわせること。本当に安全のために必要なところでだけ線をしっかり守り、子どもが自分のすべてに根ざして育てるようにしましょう。
ポイント: 家族がもちこむ文化の違いには、好奇心と敬意をもって向き合い、本当の安全の線だけはしっかり守る。そうすれば子どもは、いくつもの伝統に豊かにされて育っていけます。