子どもが最後までやりきれないときの手助け
お子さまが積み木を片づけはじめて、3つ箱に入れたところでミニカーを見つけ、ラグの上をブーンと走らせに行ってしまう。お片づけは終わらないまま。見なれた光景なら、それはやる気のなさではなく、ふつうの育ちの姿です。最後までやりきる手助けをするには、始めるのはかんたんなのに、終わらせるのはむずかしい理由を知っておくと役に立ちます。
終わらせるのがむずかしい理由
課題を最後までやるには、小さな子ではまだ育っている途中の力が必要です。目的を覚えておく、気の散るものに負けない、楽しくなくなったことを続ける。どれも子ども時代を通してゆっくり育つ脳の働きにかかっています。2歳くらいの子は「今」を生きているので、もっとおもしろいものが現れた瞬間、もとの課題は静かに消えてしまいます。
幼児期は、集中できる時間も本当に短いものです。1分か2分でふらっと離れていく子は困らせようとしているのではなく、今続けられる力の端っこに来ただけです。それを知っておくと、期待はやさしく、がまんは長くなります。
課題を小さく、はっきりと
大きな仕事やあいまいな仕事は、小さな子をのみこんでしまいます。「お部屋を片づけて」はとても大きな仕事。「車をこの箱に入れてね」ならできます。課題を小さく具体的なひとかたまりに分けると、本当に届く目標になり、届いたうれしさが次へのエネルギーになります。
できるときは、ゴールを近くに。床を全部きれいにするのではなく、まずは赤いおもちゃだけ。終わりが見えて近い課題は、どこまでも続くように見える課題よりずっとやりとげやすいのです。
最初は、となりでいっしょに
小さな子は、ひとりで仕事をまかされないほうがずっと最後までできます。ゆるやかでもとなりで作業すると、子どもはそこにつなぎとめられます。大人がひとつの棚を片づけて、子どもは別の棚、あるいは大人が手わたした物を子どもが箱に入れていく。親がそばにいることが、ふらふらする注意を引きもどすやさしいひもになります。
これは代わりにやってあげることではありません。ひとりではまだ少し届かないことを、できるようにする一時的な支え、いわば足場かけです。だんだん手を引いて、子どもが自分で続けられるようになるのに合わせて、一歩ずつ下がっていけます。
気をそらすものを減らす
課題が止まってしまういちばんの理由は、気をそらすものです。まずは滑走路を空けましょう。テレビを消す、気になるおもちゃを見えないところに移す、きょうだいがまわりでにぎやかにしていないときを選ぶ。おもしろいほかの選択肢が少ないほど、子どもは仕事を最後までやりやすくなります。
タイミングも大切です。おなかがすいて疲れた子には、つまらないことを続ける余力がほとんどありません。ちょっとおやつを食べる、一日のなかで落ち着いた時間を選ぶ。それだけで、できることが大きく変わります。
少しだけ勢いをつける
小さな子は、リズムと遊び心によく反応します。お片づけの歌、カウントダウン、短いタイマーとの競争は、家事をゲームに変え、いつもならふらっと離れてしまうところを越えさせてくれます。「歌が終わるまでに、積み木を全部入れられるかな?」と言えば、課題に形と終わりができます。
手順をおはなしや挑戦にするのもおすすめです。ミニカーは車庫の箱に「おうちへ帰る」、靴下は「相棒を探しに行く」。子どもの遊び好きの力を借りて、わくわくしない仕事を動かすのです。
終わったことに気づいて、ことばにする
課題が終わった瞬間こそ、しっかり受けとめたいときです。お子さまが何かをやりとげたら、何をしたのかをはっきりことばにしましょう。「積み木、ひとつ残らず片づけたね。床がぴかぴかだよ」。これにはふたつの意味があります。最後までやるのがどんな感じかを教えること、そしてやりとげることと親のあたたかい注目を結びつけ、またやりたい気持ちにすることです。
ほめるのは、速さや完ぺきさではなく、がんばったことと最後までやったことに。ぐらぐらでゆっくりでも、自分でやりきった片づけは、ほとんど大人がやった速くてきれいな片づけより、ずっとお祝いに値します。
少しずつ習慣に
続ける力は練習と年齢で育つものです。小さな仕事のひとつひとつを、性格のテストではなく、やさしいトレーニングと考えましょう。毎日の習慣は、何度もくり返すので最適です。靴をしまう、みんなの席にスプーンを並べる、植木に水をやる。どれも、終わりがはっきりした、ひとまとまりの仕事です。
進みかたはでこぼこだと思っておきましょう。ある日はみごとに最後までやって、次の日は全部投げだす。疲れているときや興奮しているときは、なおさらです。それはふつうのこと。大切なのは、何か月もかけてゆるやかに上向いていくことです。
少し気にかけたいとき
ときどき途中でふらっと離れるのは、まったくふつうのことです。ただ、同じ年ごろの子とくらべて、どんな遊びにも落ち着いて取りくむのがずっとむずかしい、ほとんどいつも動きまわっている、大好きな遊びにも一瞬しかとどまれない、あるいはそれにことばや理解の遅れが重なっている、といった場合は、かかりつけの小児科医や地域の保健師さんに話してみましょう。たいていはまだふつうの幅のなかですが、いつも何かが目立つなら早めの相談が安心です。聞こえのむずかしさのような、もっとかんたんな理由がないかも確かめられます。
ほとんどの家庭にとって、やりかたはうれしいほどシンプルです。課題はうんと小さく、そばにいて、気をそらすものを減らし、少し楽しさを足して、終わりを喜ぶ。それをくり返すうちに、お子さまが最後までやりとげる回数は少しずつ増え、大人の手出しは少しずつ減っていきます。
ポイント: 課題を小さくして、となりにいて、気をそらすものを減らし、終わったことをあたたかく受けとめる。そうすると、やりとげること自体がごほうびになっていきます。