「ふたつの指示」にこたえる力を育てる練習

「靴を持って、玄関に置いてね」。大人にはなんでもないことですが、小さな子にはたくさんのことを求めています。ふたつの動作を順番どおりに覚えておいて、両方ともやりとげなければならないからです。つながったふたつの指示にこたえることは、2歳から就学前の時期にかけて見られるようになる、りっぱな発達の目安です。ふたつの指示の練習をしたいなら、毎日の暮らしに材料は全部そろっています。

ふたつの指示が子どもに求めること

ふたつの指示にこたえるには、聞く、理解する、ふたつの手順をワーキングメモリーにとどめる、そして順番に動く、が必要です。小さな頭にはかなりの大仕事。幼児期のワーキングメモリーは小さいので、ふたつ目にたどりつく前にひとつ目がこぼれ落ちてしまいがちです。だから片方だけやって、もう片方を忘れることがよくあります。いいかげんなのではなく、覚えていられる力の端っこでがんばっているのです。

かんたんなふたつの指示にこたえられるようになるのは、たいてい3歳から就学前のどこかですが、ふつうの幅はとても広いものです。やさしく練習するとその育ちを後おしでき、注意力と記憶力が育つにつれて自然に伸びていきます。

すでにできているところから

ふたつ目の手順を足す前に、ひとつの指示がらくにできているか確かめましょう。はっきりした指示ひとつにすんなりこたえられるなら、ふたつをつなげる準備ができています。最初は「コップを持って、流しに置いてね」のように、自然につながっている手順から。つながった手順は同じ考えの糸に乗るので、関係のないふたつの用事よりずっと覚えやすいのです。

伝える順番は動く順番と同じにして、ことばはシンプルで具体的に。「上着を持ってきて、それからかけてね」は、子どもが動く流れと同じなので、行ったり来たりする指示やあいまいなことばより、ずっとわかりやすくなります。

毎日の習慣を練習の場に

特別な時間をとる必要はありません。ふつうの日には練習のチャンスがあふれていて、何度もくり返す習慣の仕事は最適です。着がえ、お片づけ、食事の準備、お風呂。どれも自然に、ふたつの手順の小さなつながりを含んでいます。

こうした場面に、かんたんなふたつのお願いを織りこんでみましょう。「パジャマをベッドに置いて、絵本を1冊選んでね」。よく知っている場面なので記憶の負担が軽く、それぞれの意味を考えるより、ふたつの手順を覚えておくことに集中できます。

遊びにしてみる

遊びは、この力を育てるいちばん楽しい方法で、楽しいと感じるほど子どもは喜んで練習します。聞いて、ふたつのことを順番にする遊びがぴったりです。

  • おかしな指示ごっこ。「つま先をさわって、それから手をパチン」。できたら、どんどん楽しく。
  • 宝さがし。「クッションの下を見て、見つけたものを持ってきてね」。
  • ふたつの動作の船長さんの命令。「船長さんの命令、ジャンプして、それからくるっと回って」。
  • いっしょに料理。「小麦粉を入れて、それからぐるぐる混ぜてね」。
  • ふたつの手順で説明する障害物コース。

こうした遊びは、指示にこたえるのに必要な記憶力と注意力を、プレッシャーやテストの感じなしに、まさにそのまま鍛えてくれます。

覚えている途中は、成功できるように支える

練習中は、少し手を貸すことで、失敗ではなく成功につなげられます。まず注意をこちらに向けてもらい、最初のことばが消えないようにします。ふたつの手順をはっきり伝えたら、ひと息。小さな子なら、手順ごとに身ぶりや指さしをそえると覚えやすくなります。ふたつの手順を言いかえしてもらうと記憶が強まり、伝わったこともわかります。

ひとつ目しかできなかったら、失敗としてあつかわずに、ふたつ目をそっとうながしましょう。「靴、持ってきてくれたね。じゃあ、どこに置くんだっけ?」。その場が前向きなまま、イライラせずに順番を教えられます。

ゆっくり、楽しく進める

ふたつの指示がかんたんになってきたら、少しむずかしいもの、つまり自然なつながりの少ない手順や、いずれは三つ目の手順へとのばせます。でも急ぐ必要はなく、速く進めすぎるとイライラして投げだしてしまいます。お子さまがぎりぎり成功できるところにとどまり、その子のペースで力を育てましょう。

ほめるのは、完ぺきさや速さではなく、がんばったことと最後までやったこと。「ふたつとも、できたね」。成功に気づいてもらえると、また挑戦したくなり、こうした時間がお仕事ではなく、あたたかい時間のままになります。

相談の目安

ふたつの指示にこたえる力は、ゆっくり、でこぼこしながら育ち、ほとんどの子は時間と毎日の練習でたどりつきます。ただ、まわりの子ができるようになる年齢をかなりすぎても、かんたんな指示ひとつにもこたえられない、身近な毎日のことばがわかっていないようだ、話すことが遅れている、音や名前に反応しないことがよくある、といった場合は、かかりつけの小児科医や地域の保健師さんに伝えましょう。中耳炎をくり返したり、滲出性中耳炎があったりすると聞こえがこもり、指示にこたえられないように見えることがあります。かんたんな聞こえの検査で確かめられます。早めの支援は、本当に大きな違いを生みます。

とはいえ、ほとんどの家庭では、この力は自然に花ひらきます。指示はつながりがあってわかりやすく、練習は毎日の習慣と遊びに織りこみ、成功を支え、できたを喜ぶ。少しずつ、お子さまはふたつの手順をらくにこなせるようになっていきます。

ポイント: つながったふたつの手順を選び、注意を向けてもらい、ことばはシンプルに。毎日の習慣と遊びで練習すれば、指示にこたえる力は記憶の育ちとともに伸びていきます。

CDC, Learn the Signs. Act Early.

NHS, Start for Life: Toddler