「聞かない」のか「伝わっていない」のか、見分けるには

頼んだことを子どもがしないと、つい反抗だと受けとってしまいます。でも指示を無視したように見える子は、聞こえていなかったのかもしれないし、わからなかったのかもしれないし、動くまで覚えていられなかったのかもしれません。「聞かない」と「伝わっていない」の違いを見分けられると、こたえかたが変わります。できなかった子には助けが、しないと決めた子には線引きが必要だからです。見立てをまちがえると、どちらの場面もこじれがちです。

まったく違う、ふたつの場面

「聞かない」は、聞こえて理解したうえで、しないと決めたことを指します。「伝わっていない」は、メッセージがきちんと届かなかったということ。話しかけられていることに気づかなかった、まわりの音でことばが聞きとれなかった、何のことかわからなかった、動く前に指示を忘れてしまった。外から見るとどれも同じ「やっていない子」ですが、必要なこたえかたは正反対です。

伝わっていないのにペナルティでこたえると、自分ではどうにもならないことで子どもを罰することになります。本当の反抗を伝わっていないものとしてあつかうと、指示はしなくてもいいものだと、意図せず教えてしまうかもしれません。だからこそ、ひと呼吸おいてどちらなのかを考える価値があります。

伝わっていなかったときのサイン

次のようなサインは、こばんでいるのではなく、指示をきちんと受けとれなかった子を示しています。

  • 話しかけたとき、ほかのことに深く夢中になっていて、一度も顔を上げなかった。
  • 音や距離、画面が、親の声と競争していた。
  • 指示の一部だけをして残りを忘れた。覚えておくには長すぎたのかもしれません。
  • 声をかけて確かめると、反抗的というより、本当にぽかんとしていたり、とまどったりしている。
  • 近くに行って、注意を向けてもらい、シンプルに言えば、すんなりこたえる。
  • ことばがむずかしすぎた。抽象的すぎたり、一度に多すぎたりした。

目の高さに下がって、短くはっきりともう一度頼むとこたえてくれるなら、最初の問題はほぼまちがいなく、気持ちではなく伝わりかたにありました。

自分で決めたときのサイン

次のようなサインは、メッセージを受けとったうえで、しないことを選んでいる様子を示しています。

  • はっきり聞こえていた。ちらっとこちらを見たり、手を止めたりしてから、そのまま続けた。
  • 都合がいいときには、同じような指示にすんなりこたえられる。
  • こばむときに、目くばせや笑顔があったり、ためすように親の反応を見ていたりする。
  • ほしいものを出されるなど、条件が変わるとすぐにこたえる。
  • なんでもではなく、主にいやなことのときに起きる。

これがあるからといって、悪い子だというわけではありません。線をためすのはふつうで、健やかなことです。ただ、その場面に必要なのは、理解するための助けではなく、落ち着いた、一貫した線引きだということです。

かんたんな確かめかた

手さぐりで当てる必要はありません。いちばん早いのは、伝わりにくくしているものを取りのぞいて、どうなるかを見ることです。そばに行き、目の高さに下がり、注意を向けてもらって、わかりやすいことばで短くはっきり指示します。そして数秒、届くのを待ちます。

それでこたえるなら、さっきの反応のなさは伝わりかたの問題で、直すべきは指示の出しかたとタイミングです。はっきり聞こえて理解しているのに、まだこばむなら、たぶん自分で決めたことです。落ち着いた線引きと見とどけでこたえましょう。この小さな確かめこそが、ふたつを見分けるかなめです。

見えたことに合わせてこたえる

伝わりかたの問題なら、子どもへのペナルティではなく、親の伝えかたを変えます。まず注意を向けてもらう、ことばを減らす、指示はひとつかふたつの手順に、まわりの音を減らす、こたえる時間をあげる。そうすれば壁がなくなり、子どもはできるようになります。

本当に自分で決めているなら、落ち着いて一貫して。はっきりした指示をひとつ、こたえるための短い時間、それからやさしく見とどけます。何度もくり返すのではなく、そばに行っていっしょにやります。気持ちは受けとめ、線はゆずらず、協力してくれたら気づいてほめましょう。あたたかさと一貫性がそろうと、イライラよりずっと多くを教えられます。

同じ日に両方起きることも

同じ子でも、伝わらないときと、しないと決めるときの両方があり、それが同じ1時間のうちに起きることもあります。疲れ、空腹、刺激の多さは、どれも受けとる力を小さくします。朝の10時には反抗だったお願いが、夕方には本当にいっぱいいっぱいになっているのかもしれません。悪いほうに決めつけず、どちらなのかに興味をもちつづけると、こたえかたは公平に、親子の関係はあたたかく保てます。

少し気にかけたいとき

注意を向けてもらい、お願いをシンプルにしても、まだとてもよく言われたことを受けとれない、聞きまちがいが多い、身近な音や名前に反応しない、話すことが遅れている、中耳炎を何度もくり返した、という場合は、かかりつけの小児科医や地域の保健師さんに伝えましょう。滲出性中耳炎などの聞こえやことばのむずかしさはよくあることで、ふるまいの問題とまちがえられやすいものです。かんたんな聞こえの検査で確かめられます。いろいろな場面で、注意を向けることや理解することのはっきりしたむずかしさが続くときも、安心や支援のために相談してみましょう。

ふだんの暮らしでの学びは、心を軽くしてくれるものです。ペナルティに手をのばす前に、壁を取りのぞいて、子どもが本当にこたえられたのかを確かめる。その小さなひと呼吸で、実際に起きていることにこたえられるようになり、子どもにとって公平で、親にとってもらくになります。

ポイント: 反抗と決めつける前に、注意を向けてもらってシンプルに伝え、こたえるかどうかを見てみましょう。聞かなかったのか、伝わっていなかっただけなのかがわかります。

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