ドリルなしで幼児の集中力を育てる遊び

「集中力をつけさせたい」と思うと、つい市販のドリルやプリントに手がのびます。でも小さな子にとって、机いっぱいのプリントは遠まわりになりがちです。幼児は、じっと座って枠を埋めることではなく、手を動かし、体を動かし、遊ぶことで集中する力を身につけていきます。うれしいことに、ドリルを使わない遊びのほうが、お金もかからず、楽しく、子どもの頭のしくみにもずっと合っています。

ドリルが近道にならない理由

ドリルは、座って、鉛筆を持って、意味のない記号のような線に注意を向けることを求めます。どれも、育ちざかりの体と脳にはかなりの負担です。集中どころかイライラが先に立ち、入学前から「勉強はいやなもの」という気持ちが残ってしまうこともあります。幼児期の集中力は、実際にさわって、自分で動く体験のなかでいちばんよく育ちます。

遊びのほうが長く集中できるのは、夢中になれて、自分で選んだものだからです。プリントには2分ももたない子が、塔を積んだり宝さがしをしたりするときは20分でも平気で続けます。この、自分から進んで長く向きあう時間こそが、注意力のいちばんのトレーニングです。

積み木や「つくる」遊び

積み木、重ねカップ、マグネットブロック、段ボール箱。どれも子どもをぐっと引きこみます。何かをつくるには、考えて、直して、塔がぐらついてもやりつづける必要があり、それがそのまま集中の練習になります。完成というゴールと手ごたえがあるので、子どもは自然と続けます。

少しずつ難しくしていくこともできます。「この前より高くしてみる?」と誘ったり、大人がつくったかんたんな形をまねしてもらったり。お子さまにちょうどいい難しさに合わせると、集中がぐんと伸びる状態が続きます。

分ける、そろえる、小さな世界の遊び

小さな子は分けたり並べたりするのが大好きで、こうした静かな遊びは注意力をとてもよく育てます。ボタンを色ごとに分ける、靴下のペアを探す、マカロニにひもを通す、型はめのおもちゃに形を入れる。どれも「決まりを覚えたまま、最後までやりきる」ことが必要です。家にある物ですぐに始められます。

動物のフィギュアやミニカー、人形を使った小さな世界のごっこ遊びは、また別の集中を育てます。場面をつくり、おはなしを動かしていくあいだ、子どもは何分ものあいだひとつの考えを広げつづけます。がんばっている感じもないまま、集中が伸びていくのです。

料理のお手伝いと本物の仕事

本物の仕事にかかわることは、ドリルなしで集中力を育てるいちばん力強い方法のひとつです。料理では、注ぐ、混ぜる、待つ、手順どおりに進める、が全部そろっていて、最後においしいごほうびが待っています。野菜を洗う、ホットケーキの生地を混ぜる、果物をお皿に並べる。手と頭がいっしょに働きます。

家のちょっとした仕事も役に立ちます。植木に水をやる、ペットにごはんをあげる、お箸を並べる、保存容器にふたを合わせる。はっきりしていて、終わりがある仕事です。本当に役に立つことなので、ひまつぶしに用意した遊びよりも長く集中することがよくあります。

パズル、絵本、静かな集中

ジグソーパズルは昔ながらの集中力づくりの定番です。ゴールがはっきりしていて、少しずつ進んでいく手ごたえがあります。ピースの少ないものから始めて、根気がついてきたら数を増やしましょう。ピースを回したり試したりしながら座っている時間は、粘り強く問題を解く時間です。

絵本の時間も集中を育てます。とくに、途中で絵について話したり、「このあとどうなると思う?」と聞いたり、ページのなかの小さなものを探したりすると効果的です。おはなしを最初から最後まで追えるということは、時間をこえて注意を保っているということ。それは本物の、価値ある力です。

集中を高める体の遊び

集中は、座っているときだけに育つものではありません。体を動かす遊びは、そわそわした子をリセットして、そのあとの集中にそなえてくれます。「船長さんの命令」、音楽が止まったら止まる「だるまさんがころんだ」風の遊び、障害物コース、止まったり動いたりするダンス。どれもよく聞いて体をコントロールする必要があり、注意力と自分をおさえる力がいっしょに鍛えられます。

じっとしているのが苦手な子には、いきなり静かにさせるより、静かな遊びの前にひと暴れさせるほうがずっとうまくいきます。一日のなかで、動く遊びと静かな遊びを交互にすると、集中が切れにくくなります。

楽しく、興味に沿って

何を選んでも、子どもが楽しんでいて、自分にも決める権利があるとき、遊びはいちばん長く注意を引きつけます。恐竜でも、ショベルカーでも、お着がえでも、今夢中になっているものに合わせて遊びを組み立てましょう。時間は短めにして、まだ「もっとやりたい」と思っているうちに切りあげると、集中は「楽しい」と結びついたまま残ります。

予定表も特別な道具もいりません。お子さまが元気で興味があるときに、手を動かすかんたんな遊びをいくつか用意するだけで、どんなドリルよりも集中力のためになります。

相談してみてもいいとき

幼児期の注意力はでこぼこしながら育ち、ほとんどの子は経験と年齢とともに着実に伸びていきます。どんな遊びにもまったく落ち着いて取り組めない、同じ年ごろの子よりずっと動きまわっている、ことばの遅れや理解のゆっくりさもあわせて見られる、といったときは、かかりつけの小児科医や地域の保健師さんに話してみましょう。多くはまだ成長の幅のなかですが、早めに相談すれば安心できたり、支援につながったり、ほかのかんたんな理由がないか確かめたりできます。

ほとんどの家庭では、この道のりは楽しいものです。プリントはしまって、積み木やお鍋やパズルを出し、お子さまに合った手を動かす遊びのなかで、思いきり集中させてあげてください。

ポイント: 手を動かす遊び、本物の仕事、パズル、体を使う遊びは、ドリルよりずっと集中力を育てます。子どもが夢中になり、がんばること自体を楽しめるからです。

UNICEF, How play helps children's development

CDC, Positive Parenting Tips