目で見る手がかりで「聞く」を助ける方法
ことばは、口にした瞬間に消えてしまいます。集中できる時間が短く、ことばもまだ育っている途中の小さな子にとって、話しことばの指示は理解される前に消えてしまうことがあります。絵や身ぶりや物は消えません。子どもにもうひとつの入り口をくれます。目で見る手がかりを使うと、耳だけで全部を受けとらなくてよくなるので、親子どちらのプレッシャーも軽くなります。
目で見る手がかりが、こんなに役立つ理由
小さな子は、聞いたことより見たことのほうが、理解しやすく、覚えやすいことがよくあります。話しことばの指示は、すばやくことばを処理して覚えておくことを求め、育ちざかりの脳には負担です。絵や身ぶりはその場にとどまり、何度でも見なおせて、ことばが通りすぎてしまっても意味を運んでくれます。
目で見る手がかりは、注意を引きつけ、保つ力もあります。流れるようなおしゃべりは聞きながす子も、絵や指さし、かかげた物にはよく目を向けます。話すことに見るものをそえると、メッセージが届くチャンスがひとつからふたつになります。聞くのが苦手な子には、とくに大きな助けです。
ふだんの身ぶりと指さし
いちばんかんたんな手がかりは、準備がまったくいりません。「靴をはこうね」と言いながら靴を指さす、上着をかかげる、歯みがきのまねをする。それだけで、ぼんやりした指示が具体的なものに変わります。子どもは動作や物を見て、ことばがきちんと入る前から、すぐにわかることがよくあります。
表情や体の動きも手がかりになります。目の高さに下がる、目を合わせる、わかりやすく親しみのある身ぶりをする。どれも「これは大事だよ」と伝え、子どもが集中しやすくなります。いつも手もとにある道具なので、まずはここから始めましょう。
絵の流れ表とスケジュール
毎日くり返す流れには、絵の流れ表が大きな変化をもたらします。手を洗う、着がえる、靴、上着。手順ごとに写真や絵をのせたかんたんな表があれば、子どもは全体の予定と次に何が来るかを見られます。声で何度もリマインドするかわりに次の絵を指させば、子どもは何をするかを自分で読みとります。
効果は聞くことだけではありません。子どもが自分で表を確かめられるので、自分でできる力が育ち、みんなをすりへらすガミガミも減ります。絵ははっきりと、少なめに。玄関や洗面所など、子どもが自然に目を向ける場所に貼りましょう。
実物と、目で見えるタイマー
本物の物は、指示をいきいきとさせます。話しながら歯ブラシやコップや長ぐつをかかげると、ことばが、子どもに見えて手をのばせるものにつなぎとめられます。とくに小さな子には、目の前の物が文よりも多くを語ります。
目で見えるタイマーは、切りかえや待つときにとくに便利です。砂時計や色が減っていくタイマーなら、子どもは時間が過ぎていくのを目で見られます。「あと5分」からはつかめないことです。砂が落ちきるのを見ながら、やめる準備ができるので、つらいことばの予告が、子どもにもわかり、自分で乗りこえられるものに変わります。
かんたんな合図とサイン
決めておいた少しの合図は、静かに落ち着いて意味を運んでくれます。手を上げたら「止まって、見てね」、口に指をあてたら「静かにする時間」、おなじみの終わりの合図。まわりの音を増やさずに伝えられます。話しことばといっしょにかんたんなサインを使っている家庭や園も多く、子どもにはメッセージへのもうひとつの道ができます。
こうした合図は、一貫していて、落ち着いたときに教えておくといちばん効きます。忙しい場面で頼る前に、それぞれの意味を子どもが知っているようにしておきましょう。
ことばのかわりではなく、ことばといっしょに
目で見る手がかりは、話しことばのかわりではなく、いっしょに使うときがいちばん効きます。上着を指さして「上着を着ようね」と言うと、子どもは絵と物とことばを結びつけ、聞く力とことばの両方が育ちます。目で見えるものと何度もセットになっていたので、だんだん話しことばだけの指示にもこたえやすくなっていきます。
手がかりを使うときも、ことばは短くはっきりと。短い指示に身ぶりをそえたほうが、長い説明に絵がうもれているより、ずっとわかりやすいのです。
あたたかく、プレッシャーなく
目で見る支えは思いやりで、たよりすぎでも、遅れているしるしでもありません。多くの子どもも、多くの大人も、見るものがあるほうが指示にこたえやすいのです。遊び心をもって取りいれ、こたえてくれたらほめて、毎日の流れをらくにする道具にしましょう。守らせなければならないものを増やすのではありません。めざすのは、もっとなめらかなやりとりと、親子どちらのイライラも減ることです。
聞く力をもう少し詳しく見たいとき
目で見る手がかりは、ほとんどすべての小さな子の助けになり、聞く力が育っている途中にはとくに便利です。ただ、音や名前に反応しないことがよくある、理解するのに顔をじっと見ることに強く頼っているようだ、聞きまちがいが多い、話すことが遅れている、中耳炎をくり返している、といった場合は、かかりつけの小児科医や地域の保健師さんに伝えましょう。滲出性中耳炎などの聞こえのトラブルはよくあるのに見落とされやすく、かんたんな聞こえの検査で確かめられます。早めの支援は、ことばと学びに本当に大きな違いを生みます。
とはいえ、ほとんどの家庭にとって、目で見る手がかりはただのプレゼントです。伝えかたに、絵と身ぶりと物をいくつか足してみてください。お子さまが親の思いを理解するための、もっとはっきりした、穏やかな道ができます。
ポイント: 短い指示に、絵、身ぶり、実物、目で見えるタイマーをそえましょう。言いたいことを受けとるための、もうひとつの、長く残る通り道になります。