待てない子に、ちょっと待つ力を育てるには
「ちょっと待ってね」の一言で、小さな子があっという間にかんしゃくを起こすことがあります。2歳、3歳の子にとって、ほんの少し待つことも本当にむずかしく、幼児期のよくあるもめごとの火種のひとつです。がまん強さは、もともとある子とない子がいるのではなく、練習と支えで育つ力です。短い時間を待てるように助けるコツを知っておくと、まだできていない夕ごはんから、ブランコの順番まで、毎日のたくさんの場面がらくになります。
待つのがこんなにむずかしい理由
小さな子は「今」を生きています。衝動をおさえたり、楽しみをあとにとっておいたりする脳の働きはまだ育っている途中で、ほしい気持ちと手に入るまでのあいだがとてつもなく長く感じられます。時間の感覚もほとんどないので、「2分」と「ずっとあと」はほとんど同じ、つまりどちらもがまんできないのです。
これは性格の欠点としてのせっかちさではなく、今の発達の段階です。2歳くらいの子に静かにおとなしく待つことを求めるのは、高い棚に手を届かせることを求めるようなもの。まだそこまで育っていないだけです。その力が育つまで、大人の支えがすきまを埋めてくれます。
ごく短い待ち時間から
待つ力は練習で育ち、練習は小さく始めます。長く待たせることを期待するのではなく、ほんの少し、できる待ち時間から始めて、少しずつのばしていきましょう。おもちゃを手わたす前に数秒待ってもらう。次は、もう少しだけ長く。短い待ち時間に成功すると、もっと長く待つための自信と力がついていきます。
最初の待ち時間は、本当に短く、きっと成功できるものに。ちょっと待てた子は、待つのは終わるし、いいことはちゃんと来ると学びます。それがすべての土台になります。短い時間を待つ練習は、じつは「待つのはのりこえられるし、待つかいがある」と教えることなのです。
時間を目に見えるように
小さな子は時間が流れるのを感じられないので、見せてあげると大きく変わります。砂時計、残りが目でわかるタイマー、いっしょに数えること。どれも、ぼんやりした「ちょっと待って」を、目で見られる具体的なものに変えてくれます。砂が落ちていくのが見えると、はっきりわかる終わりができ、いつまで続くかわからない待ち時間よりずっとがまんしやすくなります。
待ち時間を出来事に結びつけるのもおすすめです。「タイマーが鳴ったら」「この歌が終わったら」なら、子どもにもわかる目印ができ、待ち時間に形と、近づいてくるのが見える終わりができます。
することを用意する
何もせずに待つのが、いちばんつらい待ちかたです。小さな気分転換やお手伝いですきまを埋めると、ずっとらくになります。夕ごはんができるあいだに、お箸を並べる、絵本を見る、かんたんなパズルをする。お散歩なら、赤いものを探したり、歩数を数えたりすると、待ち時間がつらくなく過ぎていきます。
いちばん効くのは、待っているそのものに子どもをかかわらせることです。お昼ごはんを待ちながら、お鍋をかきまぜたり、パンにバターをぬったりしている子は、忙しくて仲間に入っているので、待ち時間はほとんど消えてしまいます。手が忙しいと、心はがまん強くなります。
気持ちをことばにして、落ち着いて
待つと本物のイライラがわきます。それを認めると、子どもは気持ちとつきあいやすくなります。「今すぐほしいのに待つのって、本当にたいへんだよね」。気持ちをことばにすると、わかってもらえたと感じられ、その場の熱が下がることがよくあります。たいへんさにはあたたかく寄りそいながら、待つことはそのままにできます。
親の落ち着きはうつります。短い待ち時間に親がゆったり、さらりとしていれば、子どもはその安定を少し借りられます。あわてたり、文句を言った瞬間にゆずったりすると、待つのは大ごとだ、ねばれば終わる、と教えてしまいます。
文句が出ても、いつもゆずらない
文句を言われた瞬間に折れたくなる気持ちはよくわかります。でもすぐにゆずると、文句は効いて、待つのは効かないと学んでしまいます。待ち時間が妥当で短いなら、気持ちを受けとめながらやさしく待たせておくと、子どもは「自分はのりこえられる」と学べます。そして待ち時間が終わったら、あたたかく約束を果たしましょう。がまんがむくわれると実感できます。
少しでも待てたら、ほめましょう。「順番、じょうずに待てたね」。成功に気づくと力が強まり、次もやりやすくなります。気づいてもらえたがまんは、育っていきます。
ふだんの日に練習を織りこむ
特別な練習はいりません。毎日の暮らしには、自然な短い待ち時間がたくさんあります。ゲームの順番、きょうだいを待つ、レジの列に並ぶ、お湯がわくのを待つ。タイマーや気分転換、そばにいることを添えて、こうした場面をやさしい練習と考えると、プレッシャーなしに少しずつがまん強さが育ちます。
期待は現実的に、年齢に合わせて。2歳になったばかりの子に待てるのはほんの一瞬ですが、年長に近い子ならもっと長く待てます。お子さまがぎりぎりできるくらいの待ち時間にして、ゆっくりのばしましょう。
相談の目安
待つのが苦手なのは幼児期のまったくふつうの姿で、年齢と練習とともに着実によくなります。ただ、同じ年ごろの子よりずっと衝動的で待てない、それがいろいろな場面ではっきり目立つ、毎日の暮らしや学び、友だち関係に明らかに影響している、という場合は、園の先生やかかりつけの小児科医、地域の保健師さんに伝えてみましょう。多くはまだふつうの幅のなかですが、早めの相談で安心や支援につながります。
ほとんどの家庭では、がまん強さは自然に育っていきます。短い待ち時間から始め、時間を目に見せ、すきまを埋め、落ち着いていれば、待つ時間に流れる涙はぐっと少なくなります。
ポイント: 待つ力は育つ力です。ごく短い待ち時間から始め、時間を目に見せ、することですきまを埋め、待てたらほめてあげましょう。