朝の支度が進まない、気が散りやすい子への手助け

「着がえておいで」と送りだして10分後。見に行くと、トレーナーに片腕だけ通したまま、途中で見つけたおもちゃで遊んでいます。気が散りやすい子の朝の支度は、霧を追いかけるように感じることがあります。毎朝くり返しの声かけと、玄関でのばたばたで終わってしまうなら、どうか気を落とさないでください。みんなのストレスを減らせる、実際的な工夫があります。

支度がこんなにむずかしい理由

着がえや朝の支度は、小さな手順の長いつながりです。そしてその一つひとつが、気の散りやすい子にとって、ふらっとどこかへ行ってしまうチャンスになります。もともと集中できる時間は短く、靴下よりおもしろいもの、つまりほぼすべてのものに注意が引っぱられます。いくつもの手順を覚えておきながら、気の散るものに負けない力はまだ育っている途中です。ふらふらするのはふつうのことで、悪い子だからではありません。

朝は、それがもっとむずかしくなります。みんな急いでいて、プレッシャーが大きく、ストレスを感じた子はさらに集中しにくくなるからです。わざとぐずぐずしているのではないとわかると、イライラではなく、段取りと落ち着きでこたえやすくなります。

部屋から気の散るものをなくす

いちばんかんたんなのは、競争相手をなくすことです。着がえる場所から、おもちゃや画面、散らかった物を片づけましょう。テレビがついていたり、大好きなおもちゃが手の届くところにあったりすると、注意は服ではなくそちらへ向かいます。必要な物だけを出して、ほかは見えないところへ。

何もない、つまらない場所で着がえるのは、欠点ではなく強みです。ほかに見るものがなければ、目の前の支度が注意を勝ちとるチャンスがずっと大きくなります。

手順をひとつずつに分ける

「支度して」に押しつぶされてしまう子も、一度にひとつの小さな手順ならずっとうまくいきます。仕事をまるごとまかせるのではなく、最初の手順を伝えて、終わるのを待ち、次を伝えます。「パンツをはこう」。それから「次はシャツね」。終わった手順の一つひとつが小さな成功で、注意をつなぎとめる新しい手がかりになります。

服を着る順番に並べておくと、流れが目で見えます。手順ごとに短いタイマーと競争すると勢いがつき、ゆっくりした支度が「勝ちたいゲーム」に変わる子もいます。

絵の流れ表を使う

字が読めない小さな子も、絵ならよくわかります。絵の流れ表があると、朝のガミガミがぐっと減ります。トイレ、着がえ、歯みがき、靴をはく。手順ごとに写真や絵をのせたかんたんなお支度ボードなら、子どもは次に何をするかがわかり、終わったら印をつけられます。表がリマインダーになってくれるので、親が同じことをくり返さなくてすみます。

次のことばで指示するかわりに、次の絵を指さしましょう。そのうち子どもは自分で表を見るようになり、自分でできる力が育って、毎日の押しあいがらくになります。

時間とペースを整える

気の散りやすい子を急かしても、速くなることはほとんどありません。緊張が高まって、注意がもっと散らばるだけです。できるときは少し時間に余裕をもたせて、朝を穏やかに。数分早く起こす、服を出しておく、かばんの用意をするなど、いくつかの手順を前の晩にすませておくと、朝のプレッシャーが減ります。

少し体を動かして、何か食べたあとのほうが、支度もはかどります。ちょっとした朝ごはんと、しっかり目をさます時間があると、そわそわした子も落ち着いて、注意を向けられるようになります。おなかがすいて半分寝ている子に集中させようとするのは、坂をのぼるようなものです。

そばにいて、あたたかく

親がそばにいることは、注意をつなぎとめる強い支えになります。別の部屋から声をかけるのではなく、となりでいっしょに支度すると、注意がそれにくくなり、それたときもそっと連れもどせます。階段の下から5回目の大声をあげるより、肩に手をおいて「はい、次ね」と軽く言うほうがずっと効きます。

雰囲気はできるだけ明るく。「10数えるうちに、靴を両方はけるかな?」のような挑戦や、ちょっとしたおふざけで、止まってしまうところを越えられます。ほめるのは速さではなく、たどりつけたこと。そうすれば朝が、こわい時間ではなく、協力が育つ時間になります。

少しずつ流れをつくる

毎日同じ手順を同じ順番でくり返すと、気の散りやすい子の頭も流れを覚え、だんだん声かけが少なくてすむようになります。一貫性は心強い味方です。朝が予想しやすく、くり返し練習されているほど、子どもは自動運転で進めるようになり、必要な声かけが減っていきます。

でこぼこの日があるのは当然です。いい流れがあっても、何ひとつうまくいかない朝はあります。疲れているときや体調が悪いときは、なおさらです。それはふつうのことで、やりかたが失敗したわけではありません。

気の散りやすさが目立つとき

気が散りやすいのは幼児期にとてもよくあることで、年齢や段取り、練習とともにたいていよくなります。ただ、同じ年ごろの子よりずっと気が散りやすく、落ち着きがなく、衝動的で、それが家でも園でもはっきり出ていて、学びや毎日の暮らしに明らかに影響している、という場合は、園の先生やかかりつけの小児科医、地域の保健師さんに話してみましょう。多くはまだふつうの幅のなかですが、早めの相談で支援や安心につながり、ほかの原因がないかも確かめられます。

とはいえ、ほとんどの家庭では、段取りが勝ちます。気の散るものを片づけ、手順に分け、絵を使い、時間に余裕をもたせ、そばであたたかく。続けていけば、朝の支度のもめごとはずっと少なくなります。

ポイント: 気の散るものを片づけ、支度をひとつずつの手順に分け、絵の流れ表を使い、そばにいる。そうすれば、短い集中でもゴールまでたどりつけます。

NHS, Attention deficit hyperactivity disorder (ADHD)

CDC, Positive Parenting Tips