子どもに伝わる声かけのコツ:わかりやすい指示の出し方

毎日の小さなもめごとの多くは、ちょっとしたすれ違いから生まれます。大人は自分が受けとりたいように、事情や丁寧さをたっぷりこめて指示を出しますが、小さな子にはもっとずっとシンプルなことばが必要です。わかりやすい指示の出しかたを身につけると、くり返し言わなければならないお願いがぐっと減り、毎日のストレスが驚くほど軽くなります。

小さな子にとっての「わかりやすい」とは

小さな子にとってわかりやすい指示とは、短くて、具体的で、ひとつのことだけを言っているものです。動作と、できれば物の名前が入っています。「積み木を箱に入れてね」はわかりやすい指示です。「おばあちゃんが来る前に、この部屋をいっしょに片づけてくれるかな」は、とても丁寧ですが、わかりやすくはありません。後のほうは、余分なことばのなかに動作が埋もれていて、子どもはそれを探しださなければなりません。

抽象的なことばより、具体的なことばのほうがいつも伝わります。「いい子にしてね」「ちゃんとして」では、何をすればいいのかわかりません。「いい子」はひとつのできることではないからです。してほしい動作をそのまま言えば、実際にすることが見つかります。

「やめて」ではなく「こうしてね」

子どもは、ことばが思いうかばせる絵のとおりに動きます。「こぼさないで」と言うと、こぼす場面が頭にうかびます。「コップは両手で持とうね」なら、うまくいく場面がはっきり見えます。できるときは、避けたいことではなく、見たいことの形でお願いしましょう。そのほうがこたえやすく、雰囲気も前向きなままです。

この小さな切りかえで、いつもしかられている感じも減ります。「やめて」「だめ」「ちがう」ばかりの一日は、みんなをすりへらします。「歩こうね」「やさしい手でね」「おうちの声でね」の一日は、うまくいくほうへと着実に向かっていきます。

質問より、言いきる形で

「そろそろ靴をはこうか?」は、選べるふりをした指示で、子どもはそれに気づきます。本当の答えが「いや」でも結局はくことになるなら、質問の形は必要のない言いあいを生みます。あたたかく、さらりと言いきるほうがわかりやすいのです。「靴をはく時間だよ」。本当の質問は、本当に選べるときのためにとっておきましょう。

とはいえ、指示のなかに本物の選択肢を入れるのは役に立ちます。「赤い靴下と青い靴下、どっちにする?」なら、靴下をはくことは変わらないまま、子どもにも少し決める部分を渡せて、協力しやすくなります。

タイミングと注意

どんなにうまいことばでも、子どもに聞こえていなければ伝わりません。まず注意をこちらに向けてもらいましょう。近くに行き、目の高さに下がって、こちらを見たり顔を向けたりするのを待ってから話します。にぎやかな部屋の向こうからかけた指示は、ほかの音と競争して、たいてい負けてしまいます。

できるときは、タイミングも選びましょう。わくわくする遊びの真っ最中や、疲れきっているとき、おなかがすいているときより、そうでないときのほうがお願いは届きます。「あと2分したら、お片づけしようね」のように切りかえ前に短く予告すると、心の準備ができて反発が減ります。

ことばは少なく、声は落ち着いて

「指示ひとつに、ひと呼吸」は覚えておくと便利です。説明して、理由を言って、念を押して、と全部いっぺんにしていたら、子どもはたぶん途中で糸を見失っています。シンプルに伝えたら、ひと息おいて届くのを待ちましょう。指示のあとの沈黙は弱さではなく、子どもが考えるための時間です。

声のトーンは、ことばと同じくらい大切です。落ち着いて「やってくれると思ってるよ」という声は、協力してくれると信じていることを伝えます。お願いするような声やどなり声は、迷いや大さわぎの合図になり、もっとそれを呼びこみます。あたたかさとわかりやすさがそろうと、声の大きさよりずっと人を動かします。

伝わったか確かめて、最後まで見とどける

少し大きな子なら、やることを言いかえしてもらうと、伝わったことが確かめられ、記憶にも残ります。「最初に何をするんだっけ?」は、テストではなく、やさしい確認です。

そして落ち着いて最後まで見とどけます。タブレットを消してと言ったのに消さないなら、ソファから5回くり返すのではなく、そばに行って、いっしょに消しましょう。静かで一貫した見とどけは「親のことばには意味がある」と教え、やがて言う回数そのものが減っていきます。

うまくいったことに気づく

子どもが指示にこたえたら、そう伝えましょう。「すぐに靴をはいてくれたね、ありがとう」。具体的にほめると、どの行動がうれしかったかがわかり、次もやりやすくなります。気づいてもらえた協力は育ち、あたりまえとして流された協力は、静かにしぼんでいきます。

すべてのお願いを完ぺきなことばで言う必要はありません。いちばん大切な場面でわかりやすい指示を出せればじゅうぶんで、小さなことは不完全でかまいません。

指示にこたえるのがむずかしい状態が続くとき

ほとんどの子は、幼児期を通して指示にこたえるのが着実にじょうずになります。ただ、まわりの子ができるようになる年齢をかなりすぎても、かんたんな指示ひとつにいつもこたえられない、身近な毎日のことばがわかっていないようだ、話すことがはっきり遅れている、音や名前に反応しないことがよくある、といった場合は、かかりつけの小児科医や地域の保健師さんに伝えましょう。中耳炎をくり返したり、滲出性中耳炎があったりすると聞こえがこもり、聞いていないように見えることがあります。かんたんな聞こえの検査で確かめられます。早めの支援は大きな違いを生むので、迷ったら自分の感覚を信じて聞いてみてください。

とはいえ、ほとんどの家庭にとって、変えることはシンプルです。ことばは少なく、動作はひとつ、近くで落ち着いて伝え、やさしく最後まで見とどける。何週間か続けるうちに、毎日のお願いが、もめごとのもとから、たいていはすんなり通るものに変わっていきます。

ポイント: 指示は短く、具体的に、前向きなことばで。近くで落ち着いて伝え、最後まで見とどけると、ことばに重みが出てきます。

CDC, Positive Parenting Tips

AAP HealthyChildren, Discipline and Your Child