子ども用はさみ、お勉強にしない始め方
幼児がはじめてはさみを持つのは大きな瞬間です。つい心配してそばをうろうろしたり、先生モードになったりしがち。でも、はさみは気楽なくり返しの遊びのなかでこそ身につく技術です。ねらいは、チョキンと切ることをお絵かきや工作の時間のふつうの楽しみにすること。安全は、きびしいルールの説明ではなく、さりげなく織りこみます。
始めどきの目安
子ども用の安全なはさみで切りはじめるのは、2歳半から3歳ごろの子が多いですが、幅はとても広いものです。準備ができたサインは、はさみに興味を示す、開いたり閉じたりできる手の力がある、「はさみは机で使う」のようなかんたんな約束が守れること。誕生日を待つのではなく、こうしたサインを待ちます。やる気があって、手伝えば基本ができるなら、試しはじめていい時期でしょう。
合うはさみを選ぶ
はさみそのものが大きなちがいを生みます。先が丸くとがっていない、刃が短く小さな手に合った、本当に子ども用の安全なはさみを選びましょう。自分で刃を開けない子には、ばねで自動的に開くタイプが助けになります。左ききの子には左きき用もあります。紙をつぶすだけでなくちゃんと切れるはさみのほうが、イライラが少なく、かえって安全です。切れないはさみと格闘する子は、危ない力の入れ方をしてしまうことがあるからです。
まず、手を育てる
はさみを使うには手の力と、親指を上にした手の協調が必要で、それは毎日のたくさんの遊びで育ちます。ねんどをにぎる、トングやピンセットを使う、プチプチをつぶす、霧吹きで水を出す。どれも、はさみを開け閉めするのにまさに使う筋肉を強めます。楽しく土台をつくっておくと、はさみを始めたとき、格闘するのではなく楽しめるだけの力と動きがそなわっています。
形より、まず一回切り
最初の目標はうんと小さく。細長い紙のはしを、チョキンと一回切るだけです。ぺらぺらの紙より、うすい厚紙やかための細長い紙のほうが扱いやすく、短い帯なら一回で切りおとせて満足感があります。線にそって切ったり、何かをつくったりするのはまだ先。帯を切って紙ふぶきにする、カードのふちに切りこみを入れる、古い封筒をこまかくする。この時期は、チョキンの楽しさがすべてです。
教えこまず、いっしょにやる
となりで自分も紙を切り、授業のような説明ではなく、軽くおしゃべりしましょう。「チョキン、チョキン。ほら、こんなにたくさん」は、「親指を上にして、指をここに」より、ずっとまねしたくなります。持ち方は一度だけやさしく見せて、あとは練習のなかで自分なりのやり方を見つけさせて。最初は変わった持ち方をしていても、たいていは時間とともに落ちつきます。直してばかりだと、はさみがテストのようになってしまいます。
安全は、落ちついてはっきりと
安全は大切ですが、お説教より、いくつかの変わらないわが家のルールにしたほうが伝わります。はさみはすわって、机で使う。切るのは紙だけで、髪や服や肌は切らない。わたすときとしまうときは刃を閉じる。先が丸い子ども用でも指をはさんだり、変なところにつついたりすることがあるので、使うときは必ず大人が見守ります。使わないときは手の届かないところへ。あたたかく、毎回同じように伝えていけば、楽しさをそこなわずに、あたりまえの習慣になります。
目的と遊びをもたせる
一回切りがかんたんになったら、子どもは目的のある切り方が大好きになります。紙でピクニックごっこのごちそうを切る、緑の帯に切りこみを入れて草にする、紙からスパゲッティを切っておもちゃの夕ごはんに。太くはっきりした線にそって切るのはそのあとで、そのときも正確さの練習ではなくゲームとして。目的と遊びがあればやる気は続き、技術はしぜんにみがかれます。
ゆっくり、でこぼこに進むもの
はさみの力は、数日ではなく数か月かけて育ちます。ある日はきれいに切れたのに、次の日は紙をぐちゃぐちゃにする。すぐに疲れる、興味をなくしてどこかへ行ってしまう。どれもふつうのことです。短く、プレッシャーなしで、その子のペースで。きょうだいや園の友だちと比べても、たいてい役に立ちません。気楽に練習できる機会がたっぷりあれば、どの子も自分の時期にできるようになります。
少し相談してみたいとき
ほとんどの子は練習とともに着実に切れるようになるので、たいていは待つだけでじゅうぶんです。ただ、幼児期の後半になって機会もたくさんあったのに、かんたんな一回切りができない、手の力がとても弱く見える、両手をいっしょに使えない、指先の発達全体に心配がある、という場合は、地域の保健師さん、かかりつけの小児科医、園の担任の先生に話してみましょう。時間と遊びがもう少し必要なだけのことも多いですが、確かめることで安心できます。
気楽に続ければ、できるようになる
はさみが得意になる子は、たいてい、はさみが楽しくて、身近にあって、プレッシャーがなかった子です。いいはさみを選び、遊びで手の力を育て、楽しくやって見せ、落ちついたルールをいくつか守って、あとは育つのを待つ。チョキンと切ることを工作机のうれしい遊びのひとつにすれば、子どもは自分から練習します。それこそが、はさみのいちばんの覚え方です。
ポイント: ちゃんとした子ども用はさみで、遊びながら一回切りから。楽しくやって見せ、安全は授業ではなく、落ちついたいくつかの約束で。