評価しないで、子どもの絵について話すには
「すてき、じょうずだね!」。愛情いっぱいで、何度も口にすることばです。でも、ほめ言葉でさえ、意図しないメッセージを伝えてしまうことがあります。絵は点数をつけられるものだ、と。評価せずに子どもの絵について話すのは、小さいけれど力のある切りかえです。子どもはのびのびと描きつづけ、自分の考えには価値があると信じられるようになります。
ほめ言葉さえむずかしい理由
「じょうず」が役に立たないなんて不思議に思えますが、たとえ良い評価でも、評価ばかりが続くと、子どもは自分の作品が審査されていると学びます。どの絵もほめられる子は、楽しさのためではなく、ほめられるために描くようになり、いつもの「すてき」がもらえない作品にがっくりすることも。「才能があるね」のような結果へのほめ言葉は、成功を決まったもろいものに感じさせることもあります。めざすのは、お絵かきをテストにしない、あたたかさです。
見えたものをことばにする
評価のいちばんやさしい代わりは、気づいたことを声に出すことです。色、線、形、空間を言ってみましょう。「上のほうに青をたくさん使ったね。この線は紙を横切ってる」。良い悪いの順位をつけずに、本当に見ていることが伝わります。さっと「すてきね」と言われるより、自分がしたことの具体的なところに気づいてもらえたほうが、子どもは本当に見てもらえたと感じます。まずは、あたたかい観察者になることから。
がんばりと、選んだことに気づく
できあがりへの判定より、過程についてのことばのほうが届きます。「長いこと取りくんでたね」「今日は空を緑にしたんだね、おもしろいな」。子どものがんばりと決めたことを大切にすることばです。こうした具体的で過程に目を向けたことばは、子どもが自分で動かせて、またできることを指さすので、しなやかな自信を育てます。大事なのは、大人の目を喜ばせるかではなく、試すこと、選ぶこと、続けることだと、しぜんに伝わります。
ひらいた質問で、好奇心をもって聞く
評価より好奇心。絵が何か、良いかどうかを大人が決めるのではなく、子どもに話してもらいましょう。「この絵のこと、教えて」「ここでは何が起きてるの?」。そして耳をかたむけます。おはなしをまるごと語ってくれる子もいれば、ほとんど話さない子もいて、どちらでもかまいません。ひらいた質問は意味を子どもに返し、自分の作品の専門家として扱います。それこそが子どもに受けとってほしいメッセージです。
意味は、子どもにまかせる
物の名前をつけたり、絵を解釈したりしたくなっても、ぐっとこらえて。「かわいい犬だね」と言ってちがっていることもあるし、絵は見てわかる何かでなければいけない、と伝えてしまいます。何を描いたのか、そもそも何かを描いたのかは、子どもに言ってもらいましょう。「なんでもない、色が好きだっただけ」という答えも喜んで。すべての絵に意味がなくていいのです。そう受けとめることでプレッシャーはなくなり、創造は流れつづけます。
表情と声のトーンにも気をつけて
子どもは、ことばと同じくらい、大人の表情や態度を読みとります。スマホを見ながらの上の空の「うん、いいね」も、大げさすぎる絶賛も、どちらもメッセージを伝えます。目の高さまでしゃがんで、じっくり見て、興味のある声で。本心からの落ちついた関心は、作品に注目する価値があると伝えつつ、演じるためのものにふくらませません。一貫していることも大切です。ある絵は大さわぎ、次は無視、だと、子どもは反応を追いかけるようになります。
「好き?」と聞かれたら
いつか子どもは、「この絵、好き?」「じょうず?」と直接聞いてくるでしょう。評価にすべりこまずに、正直に、あたたかくこたえられます。「あなたは好き?どこがいちばん気に入ってる?」とやさしく返したり、「赤をこんなにたくさん使ったところが好きだな」と見たことでこたえたり。こうすると、目が向くのは子ども自身の満足になります。1枚ごとに大人の判定にたよるより、ずっとじょうぶな土台です。
残すか手放すかは、本人に
できあがった作品の扱いも、ひとつの話し方です。1枚残らずとっておくことにこだわると、できあがりが目的だと伝わることがあります。本人がいいと言うなら、描き終えた絵をあっさり資源ごみに出すことは、つくった時間こそが大事だったことを強めます。飾るか、残すかに子どもの声を。持ち主であることを尊重し、遊びの価値と完成品をそっと切りはなせます。
もっと大きな心配があるとき
絵について話すことは、ふつう健康の問題ではありません。でも、お子さまのことはあなたがいちばんよく知っています。自分の作品のことでずっと強くつらそうにしている、いろいろな場面で自分にとてもきびしい、創作や想像の遊びをすべて避ける、発達や心の健康に広く心配がある。そんなときは、地域の保健師さん、かかりつけの小児科医、園の担任の先生に気軽に話してみましょう。子ども全体を見て、安心や支えをくれます。たいていは、あたたかく評価しない会話だけで、小さなアーティストにはじゅうぶんです。
身につけたい習慣
「大好き」と言ってはいけない、ということではありません。心からの「わあ」はまったくかまいません。身につけたいのは、点数をつけるより、見たことを伝え、がんばりに気づき、好奇心をもちつづけるほうへ傾くこと。たいていの場面でそうしていれば、子どもは自分の考えがそれ自体として大切にされていると学びます。どんなほめ言葉よりもその安心感が、何年も先まで、子どもが描き、試し、自分を信じつづける力になります。
ポイント: 点数をつけるより、見たことを伝え、がんばりに気づき、好奇心で聞く。子どもは見てもらえたと感じ、自分の考えで描きつづけます。