絵本を丸ごと覚えてしまう子への関わり方

なじみの本を開くと、3歳の子が声に出して「読んで」くれる。ちょうどいいところでページをめくり、1行残らず暗唱して、それでいて文字はまだひとつも読めない。うれしくて、ときにはちょっとふしぎにも感じます。絵本を覚えてしまう子は、本当に学んでいるのか、それともただのかくし芸なのかと考える親もいます。うれしい答えは、これは、はじめての読む力がまさに花ざかりで、本気で励ます価値がある、ということです。

覚えることは、近道ではなく大切な一歩

本をそらで暗唱できることは、子どもがおはなしのしくみをわかっていて、順番を頭にとどめておけて、ページの上のことばは毎回同じだと知っていることを示しています。その最後の気づき、文字には決まったメッセージがのっているということは、読むことの確かな土台のひとつです。子どもが絵本を覚えるのは、よく聞いて、おはなしを深く愛したからで、その注意と記憶と愛情の組みあわせこそ、これからの読む力が積みあがる土台です。

正確さではなく、読んだことをほめる

子どもが覚えた本を「読む」ときは、どんな読み手にもするように、あたたかく、興味をもってこたえましょう。ページをめくらせ、声色をつけさせ、主役をまかせて。ことばがちがっても直したり、まだ本当は読めないことを指摘しようと口をはさんだりするのは避けましょう。読み手になった気持ちで得る自信はかけがえがなく、本物を学びたいというやる気の燃料になります。正確さをとりしまるより、その発表を喜ぶほうがずっと役に立ちます。

文字に、そっと目を向けさせる

覚えることは積みあげていくのにすばらしい段階で、本当の意味で読むことへ橋わたしする小さなひと工夫があります。いっしょに読むとき、ことばの下を指でなぞることです。ページの上のしるしがおはなしを運んでいることを静かに見せ、よく知っている音と、いつか読みとく形を結びつけます。お勉強にする必要はありません。ときどき気楽に行の下を指でなぞるだけで、じゅうぶん役目をはたします。

支えて、広げる方法

  • 覚えた本を、大人、きょうだい、ぬいぐるみに「読んで」もらう。
  • 文の下に指をすべらせて、ことばと音が結びつきはじめるように。
  • とくにことばあそびの本では、止まって次の一節をうめてもらう。
  • くり返し出てくることばを指さして、見てわかるようになるきっかけに。
  • 覚えたお気に入りといっしょに、新しい本もたっぷりさしだしつづける。

次の一歩を急がない

すらすら暗唱するようになると、文字を読みとくことへ強く押したくなります。こらえてみましょう。読む力は何年もかけて育ち、子どもは自分のペースで進みます。この楽しい段階をカードの練習に変えると、それを動かしている熱そのものをしぼませてしまうことがあります。楽しみのために本を分かちあいつづけ、文字への好奇心があらわれたらそれについていき、覚えることがそれだけでしっかりした土台をつくっていると信じましょう。

文字への好奇心についていく

この段階のどこかで、文字を指さして「これなあに?」と聞きはじめる子がたくさんいます。自分の名前の最初の文字から、ということもよくあります。その好奇心があらわれたら、やさしくついていきましょう。その文字の名前を言い、看板やお菓子の箱で見つけて指さし、わくわくを分かちあう。でもペースは子どもにまかせて。練習もテストもいりません。楽しく本を暗唱して、文字に気づきはじめた子は、まさにちょうどいい順番で読むことへ向かっていて、それはプレッシャーではなく自分の興味に動かされています。確かで長続きする進歩は、そこから生まれます。

覚えた本しか読みたがらないとき

ときには、絵本を覚えたあと、ほかの本はいらなくなり、なじみのお気に入りにしがみついて、新しいものをいやがる子もいます。予想できることが、それほどほっとするからです。それでかまいませんし、くり返しには本当に価値がありますが、本の食事をやさしく広げることもできます。古い本といっしょに新しい本を出し、なじみのテーマやリズムをもつ新しい本を選び、新しい本はまず大人が読んで、それもなじみにしていきましょう。やがて、たいていの子は大切な暗唱をやめずに、新しいお気に入りを喜んで足していきます。

発達について、やさしいひと言

絵本を覚える子は、夢中になっている、すてきで安心できるしるしなので、ここはうれしい場所です。何でもそうですが、子どものことば、理解、発達に広い心配がある、または就学の年齢になっても、たっぷりふれているのに文字、音、書かれたものにまったく興味を示さない、という場合は、地域の保健師さん、かかりつけの小児科医、担任の先生に気軽に話してみましょう。必要なところでの早めの支えは、やさしく早く始めるときにいちばんうまくいきます。

覚えておきたいこと

絵本を覚える子は、読むふりをしているのではありません。一人前の読み手がもうすぐやってくることを見せてくれているのです。発表を歓迎し、がんばりをほめ、ことばの下に指をすべらせて音と文字を結び、プレッシャーなしに新しいおはなしを出しつづけましょう。この段階は、はじめての読む力のいちばん心強いしるしのひとつなので、楽しんで、子どものペースで育てていきましょう。

ポイント: 本をそらで暗唱するのは、れっきとした読む力の芽生え。喜んで、書かれたことばにそっと目を向けさせ、練習へ急がず、楽しみのために読みつづけましょう。

American Academy of Pediatrics, HealthyChildren.org: Books & Reading

CDC, Learn the Signs. Act Early: Milestones