毎晩同じ絵本をせがむのは、なぜ?
ねていても暗唱できて、できればソファの裏にかくしたい本がある。ほかには何もいらないという子をもつ親の、あの独特の疲れを知っているでしょう。何週間も毎晩同じ本をほしがられると、どんなに根気のある親でもためされます。でも安心してください。これは想像力がたりないしるしでも、がんこさでもありません。くり返しは小さな子が学ぶおもな方法のひとつで、ひとつのおはなしへの愛着は、ちゃんとした仕事をしているのです。
くり返しは、小さな脳の学び方
なじみのおはなしを聞くたび、子どもの脳はただからまわりしているのではありません。くり返しが、ことば、記憶、理解を支えるつながりを強めます。一度聞いた本はなぞなぞですが、20回聞いた同じ本は、予想し、身につけ、やがて暗唱できるものになります。毎晩同じ本をほしがるとき、子どもは練習していて、読むたびに理解を少しずつ深め、やがておはなしをまるごと自分のものにします。
予想できることは、安心
小さな子は、たくさんのことが新しく、変わりやすく、自分ではどうにもできない世界に住んでいます。なじみの本はその反対で、毎回まったく同じように進みます。そのたよりがいが本当にほっとさせ、とくに寝る前には、予想できるおはなしが安心して眠りにつく準備を助けます。次に来るものを知っていて、ちゃんと当たる。それが、まだできないことだらけの一日のなかで、満ちたりた「できる」感覚をくれます。
毎回、もっと気づいている
そらで覚えた本から新しいものを受けとれるはずがないように見えるかもしれませんが、くり返し読むことで、新しい層に目を向けられるようになります。すじを追う手間から解放されて、絵の細かいところ、おもしろいことば、登場人物の気持ちに気づきはじめます。くり返しは後もどりではなく、深まることです。読むたびに前の回の上に積みかさなるので、大人がもう次へ行きたくなったずっとあとも、子どもは同じ本をほしがるのです。
同じ本を乗りきる方法
- 子どもに一節をうめてもらい、大人の読む量を減らして子どもの出番を増やす。
- 声を変える、効果音を足す、わざとおかしなまちがいを入れる。
- 「次はどうなる?」と聞いて、語る役をわたす。
- 自分の興味を保つため、毎回新しい細かいところを指さす。
- 「これを読んだら、新しいのを1冊ね」と決めて、やさしく本の食事を広げる。
本棚をやさしく広げる
くり返しが好きな気持ちを大切にしながら、変化を少しずつ入れることはできます。大好きな本を読んでから新しい本を1冊読む、似たリズム、テーマ、登場人物の新しい本を選ぶ、新しい本を大人が何度か読んでなじみにし、だから魅力的にする。お気に入りを禁止する必要はなく、そのとなりにほかの本を出しつづけるだけ。たいていの子は、大切な1冊をすっかり手放すことなく、時間とともに新しいおはなしを喜んでローテーションに加えていきます。
本当にもうあきてしまったとき
子どもが大好きな本に、心底あきてしまうのはまったくふつうのことで、罪悪感をもつ必要はありません。もう無理という夜は、子どもにそらで「読んで」もらっても、朗読の音声をかけても、交換を交渉してもかまいません。ほかの大人に交代してもらうのも。大人の正直な疲れが、くり返しが子どもにしているいいことを減らすわけではないので、自分にやさしく。
お気に入りは、ひとりでに次へ移る
ずっとこの1冊をせがまれつづけるように感じるかもしれませんが、こうした強い愛着はほとんどいつも、ひとりでにうすれていきます。ある日、大好きなおはなしは新しい夢中にそっと入れかわり、古いお気に入りは役目を終えて棚にもどります。それを知っておくと、今の時期がずっと乗りきりやすくなります。おわりを演出したり、本から引きはなしたりする必要はありません。波に乗って、ほかのおはなしもとなりに出しつづけ、子どもの好みがその子のいい時期に広がっていくと信じればいいのです。
相談したほうがいいときについて、やさしいひと言
ひとつのおはなしを強く愛するのはまったくふつうで、たいていは、長めでも一時期のことです。地域の保健師さんやかかりつけの小児科医に気軽に話してみる価値があるのは、同じであることへのこだわりが極端で毎日の暮らしのたくさんの場面に広がっている、小さな変化にとても強く動揺する、コミュニケーション、遊び、発達に広い心配がある、という場合だけです。そうした広い流れのなかでなら、専門家が安心をくれたり、支えを手配してくれたりします。それだけなら、大好きな寝る前の本は、楽しく学んでいる子のしるしにすぎません。
覚えておきたいこと
毎晩同じ本をほしがる子は、行きづまっているのではありません。学び、身につけ、たよれるおはなしに安心を見つけています。くり返しは、ことば、記憶、安心感を育て、読むたびに少しずつ積みかさなります。お気に入りにつきあい、自分を保つ工夫を使い、時間をかけてやさしく本棚を広げましょう。この時期は過ぎていき、いつか、かくしたかったあの本がなつかしくなるかもしれません。
ポイント: 同じおはなしを何度もせがむ子は、くり返しで学び、予想できることに安心を見つけています。つきあいながら、時間をかけてやさしく本棚を広げましょう。
American Academy of Pediatrics, HealthyChildren.org: Reading books with toddlers