じっと聞いていられない子の絵本選び
90秒もするとひざの上からくねくね逃げだしてしまう子だと、読み聞かせはこの子に向いていないのかと心配になるかもしれません。でも、短い集中は幼児期にはまったくふつうで、答えは長くすわらせることではないことがほとんど。たいていは、本と関わり方を変えることです。集中できる時間が短い子に合う本を選べば、毎日のたたかいが、ふたりで本当に楽しめるものに変わります。
まず、期待をリセットする
小さな子のしぜんな集中は、章ではなく分ではかるものです。2、3歳の子の多くはおはなしを最後まで聞いていられず、それは直すべき問題というより、つきあっていく段階です。くねくね、口をはさむ、早めにおしまい、を最初から予想しておけば、読み聞かせが失敗しているとはずっと感じにくくなります。めざすのは本とのあたたかくいい体験で、がまん大会ではないので、短くて楽しい読み聞かせは、長くてピリピリした読み聞かせにいつでもまさります。
棚で探したいもの
いそがしく元気な子には、ほかより合う特徴があります。集中が短い子の本を選ぶときは、こんなものを。
- 1ページのことばが少ない、じょうぶなボードブック。
- ちらっと見ただけで楽しい、はっきりしてごちゃごちゃしていない絵。
- めくるしかけ、さわる手ざわり、穴、鏡など、参加できるしかけ。
- 耳を引っぱってくれる、リズム、くり返し、ことばあそび。
- トラクターでもねこでも、今のマイブームの本。
しかけをめくる、毛の手ざわりにふれる、くり返しのことばを大きな声で言う。そうした子は、聞くだけでなく、することで参加しつづけます。
さわって、動いて、口をはさんでいい
読み聞かせにじっとしていることは必要ありません。積み木を積みながら、立ったまま、お気に入りのページに行ったり来たりしながらでも聞けます。先へ飛びたい、1枚の絵にとどまりたい、本をばたんととじてまた開きたい。そうさせてあげましょう。それが小さな子の本の探り方で、動きをおさえつけると、たいくつな本よりずっと早く読み聞かせが終わってしまいます。お行儀よくすわるきまりではなく、子どもの体についていきましょう。
短く、いいところでやめる
いちばん古いコツがいちばんいいコツです。子どもがあきる前に終わること。まだもっとほしいうちに終わる楽しい1分の読み聞かせが、本とのうれしい結びつきを育てます。かんしゃくになるまでひっぱると、その逆です。長いおはなしを不機嫌な結末まで押しきるより、しかけ絵本を2回読んで明るくやめるほうがずっといいのです。少しずつ、たびたびが勝ちです。
いちばんいい時間に読む
集中は、眠さやおなかのすき具合で上がったり下がったりします。疲れすぎ、腹ぺこ、元気があり余っているときにさしだした本には、ほとんど勝ち目がありません。おやつのあと、お風呂のなか、寝る前の落ちつく時間など、しぜんにおだやかな瞬間におはなしをすべりこませてみましょう。空っぽのときに長くがんばるより、ちょうどいい時間の静かな数分のほうがよく届きます。
ことばを子どもに合わせる
作者の文を手放してもいいのです。文を短くする、ページを飛ばす、子どもが指さしたものの名前を言う、自分のことばで絵について話すだけにする。いそがしい子には、見ているものに合わせた実況のほうが、書いてある行を全部読むより、ずっと注意を引きつけることがよくあります。本はきっかけで、一字一句守らなければならない台本ではありません。
同じ短い本を、何回か続けて
いそがしい子だと、本を1回通すだけでは、ちゃんと受けとる前に終わってしまうことがあります。とても短い本を2、3回続けて読むほうが、長い本に手をのばすよりうまくいくことがよくあります。くり返すたび、ついていくのに必要な力が減るので、子どもはリラックスしてもっと気づくようになり、なじみのことばが子どもをつかまえはじめます。くり返しは短い集中にすばらしく合います。長く集中しなくても、次に来るものを知っている楽しさを味わえるからです。
短い集中を、もう少し見ておきたいとき
短い集中はふつうで、たいていは一時期のものなので、ほとんどの子に必要なのは合う本と気楽な関わり方だけです。それでも、好きな遊びもふくめてほとんど何にも集中できないように見える、同じ年の子よりかなり集中が遅れているように見える、聞こえ、ことば、発達全体にも心配がある、という場合は、地域の保健師さんやかかりつけの小児科医に伝えるのが賢明です。気軽な評価で安心できたり、支えを手配してもらえたりします。聞いて損はありません。
覚えておきたいこと
集中が短いのは、子どもが本をきらいなしるしではなく、その子のつくりに合う本を選ぼうというしるしです。好きなものについての、じょうぶで、参加できて、リズムのある本に手をのばし、時間は短く明るく、動くことも口をはさむことも楽しさの一部に。本が子どもに合えば、集中はひとりでに育ち、読み聞かせは、がまんするものではなく楽しみなものになります。
ポイント: いそがしい子には、好きなものについての、短くて参加できるじょうぶな本を。読み聞かせは短く、まだほしがっているうちにやめましょう。