毎日のできごとを、家族のおはなしに

バス停でずぶぬれになった日、まんなかがへこんだケーキ、ねこが葉っぱを持って帰ってきて、とても得意げだった朝。こうした小さな瞬間が、子どもが聞くいちばんすてきなおはなしのいくつかの材料です。毎日の暮らしから家族のおはなしをつくるのにお金はかからず、本もいらず、子どもを、わが家がどんな家族かという続いていくおはなしに、静かに織りこんでくれます。ふつうの日も、少しの愛情をこめて語りなおせば、宝物になります。

小さな瞬間が、いちばんいいおはなしになる理由

子どもは、自分自身と大好きな人たちにいつまでも興味があるので、自分に本当に起きたことのおはなしは、どんな昔話よりも心に響きます。毎日のできごとを語りなおすと、子どもは自分の体験を理解し、覚えておき、ことばにする助けを得ます。日々の暮らしからの家族のおはなしは、いっしょの歴史もつくります。「これがわたしたちで、わたしたちはこうするんだ」という感覚で、小さな子にとって深く安心できる、根っこのようなものです。

今起きたことから始める

ドラマチックなできごとはいりません。いちばん泥んこの水たまり、ついにたおれたぐらぐらの積み木の塔、おばあちゃんが来た日。どれもぴったりです。小さなおはなしとして語りなおすだけ。「けさ、玄関でかたつむりを見つけたの、覚えてる?」。はじまりとなかとあたたかいおわりを足せば、自分の暮らしが語る価値のあるおはなしになるのを聞いて、子どもの顔がぱっと明るくなるのが見えます。

毎日をおはなしにする方法

  • 寝る前に、今日の小さな冒険を、自分だけのおはなしの本のように語りなおす。
  • その子自身の歴史について、「あなたが赤ちゃんだったころ」のおはなしをする。
  • 大人の子どものころや、おじいちゃんおばあちゃんの暮らしのおはなしを分かちあう。
  • たいへんだった日を、最後にはうまくいったおはなしに変える。
  • くり返し起きるできごとに、「ホットケーキ大さわぎ事件」のような題名をつける。

子どもを語り手に

しくみがわかったら、いっしょに、あるいはひとりでおはなしを語ってもらいましょう。「公園で何があったか、教えて」とおはなしをゆだねると、ことばと記憶がのびます。子どもの語りはごちゃごちゃですてきで、それがまさにちょうどいいのです。順番や細かいところは直さないで。どんなにばらばらでも、自分の一日を語りなおす子は、話すこと、考えること、のちに書くことを支える力そのものを練習しています。

気持ちを整理するのにも、おはなしを

毎日のおはなしは、暮らしのむずかしい部分を子どもが受けとめるやさしい方法でもあります。こわかった歯医者さん、転んだこと、友だちとのけんかを、あとで落ちついておはなしとして語ると、何が起きたかがわかり、ちゃんとだいじょうぶにおわったと見えてきます。おはなしのなかで気持ちに名前をつけると、「ぷんぷんしたけど、それから気持ちがらくになったね」、お説教のように感じさせずに気持ちの理解が育ちます。

家族の伝説と、内輪のじょうだんを

毎日のおはなしのなかには、家族の定番になるべきものがあります。みんながいっしょに言えるようになるまで何度も語られるおはなしです。テントが風に飛ばされた日、犬がソーセージを食べちゃった誕生日。それが家族を結びつける、いっしょの伝説になります。子どもはこうしたくり返しのおはなしが大好きで、題名でせがむようになります。語りなおすたびに、記憶と、家族の一員だという気持ちと、まぎれもなくわが家だけのおはなしがあるシンプルな喜びが強まります。

寝る前は、こうしたおはなしのしぜんな居場所

眠る前の静かな数分は、一日を語りなおすのにぴったりです。明かりを落として、急がずに、小さなできごとをいっしょにたどれます。会った犬、とんだ水たまり、たおれた塔。こうして一日を終えると、子どもは一日を理解し、いそがしい頭を落ちつかせ、自分の一日は大切で、語る価値があったと感じながら眠りにつけます。

本もいらず、大人の声と、その日がたまたまくれたふつうの宝物だけでできる、画面のない、やさしい落ちつきの時間にもなります。たいしたことが起きなかったように思える日でも、通りすぎた車の色から、お昼のあとにもらえたビスケットまで、子どもがどれだけ覚えていて、入れたがるかに驚くことがよくあります。何がおはなしになるかという子どもの感覚はすばらしく広く、それについていくことが楽しさの半分です。

やさしいひと言

これはあたたかい毎日のつながりで、医学的に気をつけることはありません。いつものように、子どものことば、記憶、理解に広い心配があるときは、地域の保健師さんやかかりつけの小児科医が安心や支えをくれます。そうでなければ、毎日の暮らしからの家族のおはなしは、きまりも道具もまちがえようもない、めずらしい子育ての時間のひとつなので、ただ楽しんでください。

覚えておきたいこと

家族の毎日のふつうのできごとは、つきることのないおはなしの泉で、それを語ることが、子どもにことば、記憶、しっかりした「ここにいていい」という気持ちをくれます。小さな冒険を語りなおし、小さかったころのおはなしを分かちあい、子ども自身の語りを誘い、いちばんいい瞬間を家族の伝説にしましょう。毎日の暮らしからのおはなしが、なんでもない一日を、子どもが大切にして、いつか自分の子どもに語る何かに変えてくれます。

ポイント: 家族の毎日の小さな瞬間を、おはなしとして語りなおしましょう。こうした自分たちだけのおはなしが、本なしで、ことば、記憶、深い「ここにいていい」という気持ちを育てます。

UNICEF, Reading with your children

CDC, Positive Parenting Tips for young children