歌とわらべうたで、ことばを育てる

「げんこつやまの、たぬきさん」。歌いはじめると、子どもの手がぐるぐる動きだす。歌や手遊び歌、わらべうたは、ことばと体と人とのやりとりを、自然につないでくれます。出発点は、楽しいお気に入りの歌を少しだけくり返すこと。ことばの育ちは、単語の数だけでなく、理解、しぐさ、声、発音、遊び、人とのやりとりのすべてで見ていきます。大切なのは言わせることではなく、ふだんのコミュニケーションをよく知ること。そして必要なときに、迷わず評価につなげることです。

ひと言でいうと

歌はことばをゆっくりにし、役に立つ型をくり返し、次の音や動きを予想しやすくしてくれます。全部のことばを歌えるようになるずっと前から、子どもは見る、体を動かす、音をひとつ入れる、「もう1回」とせがむ、といった形で参加できます。

実際にはどうするか

毎日の流れの中で知っている歌を使い、お気に入りの部分の前で止まって、どんな伝えかたでも受けとめましょう。言わせるのではなく、遊びとして楽しむのがいちばんです。生身の人と順番にやりとりするほうが、うしろで流れている録音の音楽より、ずっとたくさんのことばの機会になります。

はじめに見ておきたいこと

何に心をひかれているのか、どんなしぐさや声、ことばを自分から出しているのか、どこでやりとりがうまくいかなくなるのか。まずはそこに目を向けましょう。工夫を試すときも、絵本、歌、ごっこ遊び、毎日の生活を、問題を出す時間に変えないことが大切です。

歌の楽しみかた

  • 楽しいお気に入りの歌を、少しだけくり返しましょう。
  • 次のことばがわかるところで、止まってみましょう。
  • 動き、声、しぐさも、参加として受けとめましょう。
  • 歌がテストになる前に、やめましょう。

ふだんの楽しい流れの中に、「楽しいお気に入りの歌を少しだけくり返す」と「次のことばがわかるところで止まる」を入れてみましょう。こたえが返ってきたらひと息おいて、言いたいことを受けとめ、ことばをひとつだけ足します。子どもが動いても、しぐさで伝えても、ページを変えても、大人のまねをしなくても、それでかまいません。

4つのステップのつながり

順番としては、「楽しいお気に入りの歌を少しだけくり返す」からはじめ、「次のことばがわかるところで止まる」「動き、声、しぐさも参加として受けとめる」と進み、「歌がテストになる前にやめる」で締めくくります。どの段階でも、子どものこたえを受けとめ、次につながることばを1つお手本で示すだけ。上手に言わせようとしなくて大丈夫です。

家族や保育園と、そろえておくこと

祖父母や保育園の先生とは、「楽しいお気に入りの歌を少しだけくり返す」「次のことばがわかるところで止まる」という最初の2つを決めておきましょう。全員が同じ台詞を言う必要はありません。子どもがわかりやすい反応を受けとれることが大切です。話しことばが育つまでは、どの大人もしぐさとすべての家庭のことばを、伝える力として数えます。

しばらく続けて、ふり返る

最初のステップは、特別にうまくいった日や大変だった日の1回で判断せず、いつもの何回かの機会で試しましょう。メモするのは、状況、子どもの反応、家族への影響。観察がプレッシャーにならないよう、短くていいのです。

見直しのときは、3つめのステップではどうだったかを確かめましょう。役に立ったことは続け、続けられないことは削り、変えるのは1つずつ。健康や安全、発達に気になることがあれば、まず専門家の評価を受けることが優先です。

大人にできること、できないこと

大人が左右できるのは、ことばのやりとりの質。子どもの関心についていく、はっきり話す、間をとる、こたえる。工夫はそれを支えるものですが、決まったことばを引き出すことも、心配なときの専門家の評価に取って代わることもできません。

安全と、子どもの尊厳を守る

安全と尊厳のために、どの工夫も気楽に。動く子を絵本のためにおさえる、言うまで欲しいものを渡さない、画面だけに頼る、はどれも避けましょう。聞こえがあやしい、できていた力が消えた、いらだちが強い、といったときは専門家に相談を。

うまくいかなくなる理由

会話より質問が増える、くり返しを求める、しぐさをわからないふりをする、行きづまっているのに待ち続ける。こうしたことで、工夫の効果は薄れます。こたえるやりとりと専門家の評価は役目が違います。どちらも、発表させる場にはしないでおきましょう。

前進のしるし

何週間かかけて、同じものをいっしょに見る時間、しぐさ、声の種類、自分から言おうとすること、会話のやりとりのしやすさが増えているかを見ましょう。楽しさと参加することも大切で、大人のお手本をそのまま言えたかどうかで成功をはかるものではありません。

記録は短くてかまいませんが、回数だけでなく場面と参加のしかたも書いておきましょう。あとで判断するとき、テストの結果ではなく、ふだんのやりとりを土台にできます。

専門家に相談したいとき

理解、表現、発音、なめらかさ、人とのやりとりのどこかが伸びない、聞こえが心配、いらだちが大きい、力が後戻りした。そんなときは、小児科や言語聴覚士に相談しましょう。診断や、基準に届かなかったという確証は必要ありません。評価では、子どもが使うどのことばも考えに入れてもらいましょう。

覚えておきたいこと

ゴールは、素直に言うとおりにする子や、乱れのない日課ではありません。まずは最初の一歩。つながりと安全を守りながら、長い目で変化の向きを確かめ、一般論でわからないことは、その子を見てくれる専門家に頼りましょう。

ポイント: 「楽しいお気に入りの歌を少しだけくり返す」ではじめて、続けやすい形にし、変化をふり返りましょう。

ASHA, Communication milestones

ASHA, Learning more than one language

CDC, Developmental milestones