いつもの日を特別にする、親子だけの小さなならわし
大人に、子ども時代のいちばんあたたかい思い出をたずねると、高い旅行や大きなプレゼントが出てくることはめったにありません。ずっと多いのは、小さくてくり返されたことです。親がいつもうたってくれた同じへんてこな歌、土曜の朝のホットケーキ、決まったおやすみのことば。こうした小さなくり返しが「ならわし」で、子どもと長く続くきずなをつくる、いちばんシンプルで、お金がかからず、力強い方法のひとつです。
ならわしがよく効くわけ
ならわしとは、いっしょにする小さなことを、同じやり方で、何度もくり返すことです。その魔法は、くり返しにあります。小さな子の世界は予測がつかないと感じられることがあるので、確かにやってくるものは安心の錨になります。親子のならわしは、子どもにふたつの贈りものを一度にくれます。次に何がくるかわかっている心地よさと、これはふたりがおたがいのために守っている時間なのだという、静かな確信です。やがて、ならわしそのものが、親子の関係のしるしになっていきます。
ならわしは、毎日の流れとは違う
ここで、やさしく区別しておきましょう。毎日の流れは実用のためのものです。歯をみがく、服を着る、玄関を出る。ならわしは、その実用の上に、意味とつながりを乗せたものです。寝る前の流れは毎日の流れ。消灯の前にいつもささやく3つのことばは、ならわしです。一日に時間を足す必要はありません。多くの場合、もうある瞬間に、小さくくり返すあたたかさをしみこませるだけで、ふつうの流れが、そっと大切なならわしに変わります。
ためしてみたい、毎日のならわし
いちばんいいならわしは、その家族に合っていて、かんたんに続けられるものです。アイデアのきっかけにいくつか。
- 送りのときのとくべつなさよなら。いつもの手のふり方、ぎゅっとにぎる手、いつも言う3つのことば。
- ふたりだけが知っている、ひみつのタッチやへんてこなあいさつ。
- 毎週の決まりごと。金曜の映画の夜、土曜のホットケーキ、日曜にいつもの場所までお散歩。
- いつも交わす寝る前のひと言。「また明日の朝ね、お月さままで大好き」のような。
- 夕ごはんのときに、ひとりひとつずつ、今日のよかったことを話すありがとうの時間。
小さく、続けられるものに
いちばんよくある失敗は、続けられないほど大きなならわしにしてしまうことです。ひと月で消えてしまう毎週の大冒険より、何年も本当に続けている小さなことのほうが価値があります。力は確かさにあるので、疲れも、忙しさも、きげんの悪さも乗りこえられるならわしを選びましょう。10年間毎晩くり返す10秒のおやすみのことばは、いつのまにか消えてしまう手のこんだならわしより、子どもにとってずっと大きな意味をもちます。
子どもといっしょにつくる
子どもが考えるのを手伝ったならわしは、いっそう特別になります。ふたりのとくべつなことは何にしようか、とたずねて、ときにすてきにへんてこなアイデアについていきましょう。4歳の子が考えたならわしは、どんなに風変わりでも、その子のものだからこそ、特別な魔法を帯びます。子どもは、いったんできたならわしを守り、守らせるのが大好きで、親がひとつ手順を忘れると、きびしく注意してくれます。その「自分のもの」という感覚が、ならわしがちゃんと働いて、親子の関係の感じ方に織りこまれているしるしです。
つらいときのための、ならわしも
いちばん役に立つ親子のならわしのなかには、うまくいかないときに手をのばすものがあります。しかったあとのとくべつなつながりなおし方、子どもが動揺しているときにいつも使う落ち着くことば、悲しいときの決まった抱っこ。こうしたものは、親子どちらにも、近さへ戻るなじみの道をくれます。ならわしは見通しがきくので、気持ちが高ぶっているときでも働き、ぐらつきのあいだの小さくてしっかりした手すりになってくれます。
ふつうの日にも、大きな節目にも
ならわしは、毎日のことも、節目のことも大切にできます。毎日や毎週のならわしと並んで、誕生日、新しい学年や入園の最初の日、季節の移りかわりにまつわる小さな伝統は、自分たちの文化とおはなしをもつ家族、という感覚を子どもにくれます。こうしたくり返しの、意味のある瞬間の中で育つ子は、しっかりした居場所の感覚を育てます。それは、親がさしだせる、いちばん深い安心のひとつです。
決まった流れがつらそうに見えるとき
ほとんどの家族にとって、ならわしはただ楽しいものです。でもひと言そえておくと、小さないつもの流れが変わるだけでひどくかたくなになり、強くつらそうにする、同じであることへのこだわりが毎日の暮らしにさしつかえるほど強い、発達やことば、気持ちの切りかえにもっと広く心配がある、という場合は、地域の保健師さんやかかりつけ医に気軽に話してみましょう。お気に入りの寝る前の歌を心配させたいのではありません。子どもがなじみのものに感じるふつうの心地よさをこえている、と感じたら、親の勘を信じていいのだという、ちょっとした覚え書きです。
ずっと残る贈りもの
子どもの小さいころの一日一日を、親もほとんど忘れてしまうでしょうし、子どもも同じです。残るのは、子ども時代の感触です。そして、その感触にあたたかさと形をくれるのが、ならわしです。ふつうの毎週に静かに織りこまれた、小さくくり返すつながりの瞬間は、子どもが大人になるまで持っていく伝統になり、多くの場合、その子の子どもへと手わたされていきます。自分たちに合うものをいくつか選んで、続けてみてください。そして、ふつうの日々を、子どもがいちばんよく覚えている日々にしていきましょう。
ポイント: 確かにくり返される小さなあたたかさは、毎日の流れを大切なならわしに変え、子どもに安心と居場所と、親との長く続くきずなをくれます。