はやい、おそい。体を動かしてテンポを感じる
子どもは、はやいとおそいを説明できるずっと前からわかっています。まず体で感じるからです。部屋の向こうまでかけていき、それからスローモーションでぱたりとたおれる子は、ひとことの説明もなしにテンポを学んでいます。体を動かしてテンポを感じる遊びは、走りたい、ドシドシしたい、ゆれたいという子どものしぜんな気持ちを、大人とできるゲームに変え、そのあいだに聞く力と体のコントロールを育てます。
テンポにふれる価値
テンポとは拍の速さのことで、それに気づくのはれっきとした聞く力です。はやい、おそいのペースに動きを合わせるには、音に注意を向けて、体を合うように調整しなければなりません。それは、指示についていく、やがてほかの人といっしょに加わることを支える、聞いてこたえる力と同じものです。速さや変化について話す、親しみやすいことばも手に入り、いそがしい世界を理解する助けになります。
まずは体で感じる
小さな子は、体全体を使うとき、目に見えない考えをいちばんよく学びます。はやいとは何かを説明するのではなく、はやくなってもらいましょう。その場で小きざみの速い足ぶみ、手をくるくる、うさぎのぴょんぴょん。それから、おそくなってもらいます。大きなスローモーションの一歩、とけていくようなだらーんとした動き、ねむたいゆらゆら。考えが筋肉に住みつくと、ことばも形のある何かにくっついて残ります。
かんたんな遊び
- はやい足、おそい足。速く足ぶみして、それからぐっとゆっくりに。変わるたびに声に出して。
- とけるアイス。背すじをのばして立ち、ゆっくり床まで「とけて」、それから速くはね起きる。
- 動物の速さ。ブンブンはちのように飛びまわって、のっしのっし大きなくまのように歩く。
- ワイパー。小雨と大雨のワイパーのように、腕を速く、ゆっくりふる。
- だんだん速く、だんだんゆっくり。ゆっくり始めて少しずつ速くし、またゆっくりにもどる。
音でペースをリードする
大人の声やかんたんな拍で、遊びを動かせます。容器をスプーンで速くたたけば子どもも速くなり、たたくのをゆっくりにすれば子どももゆっくりに。なじみの歌を速く、ゆっくりハミングしても同じです。こうすると、聞こえる音と体の動きが結びつき、それこそがテンポの中心です。子どもにもペースを決める番をあげ、大人がついていけば、リードは行ったり来たりします。
かくれた勝ち点:落ちつくこと
ゆっくりした動きには、静かな力があります。走りまわるのはかんたんでわくわくしますが、わざとゆっくり動くには、子どもがおさえ、息をはき、自分の体を自分で動かす必要があります。ゆっくりの側、大きくおだやかなのびや、やさしいゆらゆらを練習すると、お昼寝の前や元気が爆発したあとに落ちつくための、たよれる道具になります。こうしてテンポ遊びは、気持ちを整える力の、はじめの練習にもなるのです。
一日のなかに
特別な時間はいりません。玄関までの道を速くして、最後の数歩はゆっくりつま先歩きに。速いお片づけのあとに、スローモーションのお片づけ。階段をのぼるのを、ゆっくりした巨人ののぼり方に。ふだんの切りかえにテンポを通すと楽しくなり、速いと落ちついたのちがいを感じる小さなチャンスが何十回も生まれます。
その子に合わせた遊びに
赤ちゃんは、速くやさしくゆらされて、それからゆっくりゆられるのを楽しみ、大人の腕を通してテンポを感じます。小さな子は、そのちがいと、大きなゆっくりとけるのや、思いきり速く走るドラマが大好き。幼児期の後半になると、自分の速さを調整し、大人の変わる拍にこたえ、ブーンと飛んでからふわふわうかぶロケットのような、自分だけのはやいおそいのおはなしを考えることもできます。目の前の子に合う形で。
軽い気持ちで
はやい、おそいに正しいやり方はないので、子どものやり方を直したくなってもこらえて。その子の「ゆっくり」がまだけっこう速くても、それでいいのです。正確さより、気づくことが大切。短めにして、まだやりたがっているうちにやめましょう。めざすのは、速さをいっしょに楽しく感じることで、点数をつける発表ではありません。
元気に過ごすための、やさしいひと言
はやい、おそいの動きは、たいていの子にとって楽しく安全で、小さな子の健やかな発達に必要な、毎日の体を動かす遊びも支えます。速くかけてもテーブルの角にぶつからないよう少し場所をあけ、疲れても押しきるのではなく、子どもの元気についていきましょう。体の動きで心配になるほど苦労している、いつになく体がかたい、またはふにゃふにゃしているように見える、できていた動きができなくなった、ということに気づいたら、地域の保健師さんやかかりつけの小児科医に伝えましょう。
覚えておきたいこと
速さは、子どもが名前をつけられる前から感じとるので、本当に自分のものにできる最初の音楽の考えのひとつです。はやくもおそくもなれる場所をあげ、大人の声やかんたんな拍でペースをリードし、ゆっくりの側がそっとくれる落ちつきを楽しみましょう。1分のかけっこととけるアイスは、学びで、つながりで、落ちつく時間でもあるのです。
ポイント: はやい、おそいを体全体で感じさせ、ペースを決める番を交代し、ゆっくりの側をやさしい落ちつく方法として使いましょう。
WHO, Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under five