身近な音のなかのリズムに、子どもが気づくには
リズムは歌や太鼓のなかだけにあるのではありません。時計のチクタク、蛇口のぽたぽた、道を歩く足音のコツコツ、雨の日のワイパー。ふだんの暮らしの背景で、ずっと鳴っています。だれかが教えてくれれば、子どもはおどろくほど素直にこうしたパターンに気づきます。身近な音のリズムに気づけるようにすることは、一生ものの聞く習慣を手わたすこと。ことば、注意力、まわりの世界とのゆたかなつながりを、静かに支えてくれます。
音に気づくことが大切な理由
ただ聞こえるのではなく、本当に耳をかたむけることは、たくさんの学びを支える力です。音のなかのパターンを聞きとれる子は、おはなしについていく、指示を聞きとる、のちに読むためにことばの中の音を聞きとる、のと同じ注意力を使っています。身近な音は、どこにでもあってただなので、練習にぴったりの材料です。耳をかたむけるだけで、世界まるごとが、いつでもできるやさしい聞く遊びになります。
まずは大人が耳をすます
子どもは大人を手本にするので、最初の一歩は、気づいたことを声に出すことです。立ちどまって「聞いて、雨がポツポツポツっていってるね」「電車がガタンゴトン、ガタンゴトンっていってるの、聞こえる?」。大人がはっきり興味を示すと、子どもも耳をかたむけます。リズムとは何か説明する必要はありません。小さな瞬間に何度もくり返す音のパターンに注意を向けるだけで、そこに見つけられるパターンがあると子どもは学びます。
いっしょに探したい音
しくみがわかったら、小さな音さがしに出かけましょう。毎日の暮らしには候補がいっぱいです。
- ぽたぽたの蛇口、窓にあたる雨。
- 足音。大人のと子どものと、速いのとゆっくりのと。
- 洗たく機の一定のゴウンゴウン。
- チクタクの時計、車のウインカーのカッチカッチ。
- はずむボール、ノックの音、ブルルンと走るバス。
パターンに名前をつけ、声か手拍子でまねして、いっしょに見つけるのを楽しみましょう。習慣にすれば、お勉強だと感じさせずに、身近な音のリズムに気づけるようになります。
音を遊びに変える
気づくことは、すぐに遊ぶことにつながります。ふたりに聞こえる音をまねして、電車のリズムをひざでたたいたり、水のしずくに合わせて手をたたいたり。目をつぶって音を当て、そのなかのリズムを見つける。自分の足音に合わせて行進し、速くしたりゆっくりにしたり。通りすぎる車や、ほえる犬のパターンをたたいてみる。こうした小さな遊びが、ただ聞こえることを、楽しく耳をかたむけることに変え、子どもが自分のリズムで世界にこたえる方法をくれます。
体も使う
リズムは聞くのと同じくらい感じるものなので、気づいた音に合わせて動かせてあげましょう。足音に合わせて足ぶみ、洗たく機に合わせてゆらゆら、ボールに合わせてぴょんぴょん。聞いたパターンと動きを結びつけると、拍の感覚が深まり、小さな子が元気に育つ体を動かす遊びにもなります。体でリズムを感じる子は、聞くだけの子より深く理解でき、動きがあるとすべてがもっと楽しくなります。
一日のなかに通す
いいところは、準備がいらないことです。お散歩では、足音のリズムに耳をすます。台所では、トントン刻む音やぐつぐつのおなべに気づく。車では、ウインカーやワイパーのパターンを見つける。お風呂では、リズムに合わせてぽたぽた、ぱしゃぱしゃ。こうした小さな瞬間をふだんの日にちりばめると、子どもの聞くスイッチが入ったままになり、リズムは特別な遊びではなく、すべてを通る糸だと知ります。
その子の段階に合わせて
赤ちゃんは、おもしろい音がするとじっとして顔を明るくするので、ふたりに聞こえるものに名前をつけ、反応を見てみましょう。小さな子は、リズムをまねしたり、なじみのパターンを見つけたりするのを楽しみます。幼児期の後半なら、音を探しに出かけ、拍をより安定してきざみ、聞こえたものを言いあらわせます。チェックリストではなく好奇心についていき、聞く力がみがかれるにつれて遊びも育てていきましょう。
聞こえについて、やさしいひと言
身近な音で遊ぶことは、子どもが聞こえていて注意を向けていることを、そっと確かめさせてくれます。気づいていいはずの音に反応しない、おもしろい音や大人の声のほうを向かない、すぐそばでないとこたえないように見える、話しはじめるのが遅い、できていた聞くことや話すことができなくなった、という場合は、地域の保健師さんやかかりつけの小児科医に伝えましょう。中耳炎をくり返す子や、よく聞こえていないように見える子も、伝えておく価値があります。早めに聞くのは、いつでも賢明です。
覚えておきたいこと
世界はひそかにリズムでいっぱいで、だれかがやり方を見せれば、子どもは喜んでそれを見つけます。声に出して耳をすまし、いっしょにパターンを探し、声と体でまねして、その習慣をふだんの日に通していきましょう。するどい耳、世界のゆたかな感じ方、そして何年も役に立つ、遊び心のある聞き方を子どもに手わたせます。
ポイント: 暮らしにかくれたリズムを指さして、声と体でまねして、ふだんの聞くことを、いっしょの楽しい習慣にしましょう。