質問ぜめにしないで、音楽で気持ちにふれる
音楽は、ことばより先に、気持ちに直接届くことがよくあります。はずむ曲は気分を上げ、ゆっくりした曲はやわらげる。だれも説明しなくても、子どもはそれを体で感じられます。だから音楽は、小さな子が気持ちを理解するのを助ける、すてきでしぜんな方法です。コツは、質問ぜめにしないこと。「これを聞いてどんな気持ち?」というテストになった瞬間、子どもは開いてほしかったその扉をとじてしまいがちだからです。
質問ぜめが裏目に出る理由
小さな子は、心の中の世界を表すことばを育てている最中で、いきなり聞かれると、つまったり、当てずっぽうになったり、だまりこんだりします。「これは楽しい歌?今かなしい?これはどんな気持ち?」と質問が続くと、感じていた体験が、正解か不正解かの練習に変わってしまいます。気持ちは合格すべきテストではありません。質問ぜめにしなければ、子どもはこたえを披露するのではなく、体験して吸収でき、確かな気持ちの理解はそこから育ちます。
声に出してふしぎがって、気持ちに名前をつける
聞くかわりに、見せましょう。自分の反応に気づいて、軽く口にします。「この速い曲、ぴょんぴょんしたくなるな」「このゆっくりした曲は、おだやかでねむたい感じがする」。音楽と気持ちがつながっていることを見せて、ことばも手わたしています。子どもに何か言うことを求めずに。子どもはこうしたやさしい実況を吸収し、自分のタイミングで、プレッシャーなしに、そのことばを借りはじめます。
今の気分に音楽を合わせる
気持ちにふれるいちばん役立つ方法のひとつは、今子どもが感じている気持ちを音楽にうつしてもらうことです。元気いっぱいのときは、にぎやかな曲をかけて思いきりおどらせて。落ちついてきたら、ゆっくりやわらかい曲を。ちがう気持ちにはちがうエネルギーがあり、音楽は今いるところに来てくれる、ということが、ことばなしに体で伝わります。やがて子どもは、気分に合わせたり変えたりするために、歌に手をのばせると学びます。
遊びながら入る
- 音楽のように動く。強い拍にはドシドシ、やさしい拍にはふわふわ。動きに名前をつけて。
- いっしょに「きもちのプレイリスト」をつくる。いろいろな気分と結びつく歌をいくつか。
- 曲に合わせてお絵かきやなぐり描き。音楽に合わせて速い線、ゆっくりの線を。
- 人形やおもちゃに音楽を「感じて」もらう。気持ちは子どもではなくおもちゃのものに。
- その場で気持ちを歌う。ぴったりのときに「ぷんぷんしてるよ」の歌をつくってみる。
音楽を、落ちつく道具に
気持ちに名前をつけるだけでなく、音楽は子どもが気持ちを扱うのも助けてくれ、それはもっと価値のあることです。ゆっくりしたなじみの歌は、ぐらつきや寝る前の時間をやわらげる、たよれる方法になります。音楽がだんだんゆっくりになって、ぴょんぴょんからゆらゆら、そして静けさへと子どもを導く、落ちつきの流れをつくってもいいでしょう。おだやかなときに練習しておくと、気持ちを話せるようになるずっと前から、大きな気持ちが来たときにたよれる、気持ちを整える確かな道具になります。
子どもにリードさせる
かじとりの余地をあげましょう。歌を選び、おどるか丸くなるかを決め、直されずに、音楽のままに動く。楽しい曲を「こわい」と言っても、ゆっくりの曲を「わくわくする」と言っても、受けとめて。驚くようなこたえでも、感じたことは本物だからです。気持ちは人それぞれで、子ども自身の音楽の受けとり方を大切にすると、心の中の世界は本物で、尊重されていると伝わります。
毎日の暮らしで、プレッシャーなしに
特別な時間はいりません。着がえのときに元気な曲、寝るときにおだやかな曲、ぷんぷんをふりはらう思いつきのおばかなダンス。ふだんの日に通していきましょう。ときどき自分の気持ちを口にし、子どもが話してくれたら歓迎し、あとは音楽に静かな仕事をまかせます。プレッシャーがないことこそが、効きめのもとです。
発達について、やさしいひと言
気持ちを理解してことばにする力は、幼児期を通して、そしてその先もずっと、ゆっくり育つので、待つことが大切で、比べることは役に立ちません。音楽は、その育ちを支える、かんたんで楽しい方法にすぎません。心配になるほどつらそうな、または元気のない状態がずっと続く、気持ちの浮き沈みにとても苦労している、人とのつながりを全体に避ける、できていたことができなくなった、という場合は、地域の保健師さんやかかりつけの小児科医に伝えましょう。ひとつの場面ではなく、全体を見てくれます。
覚えておきたいこと
音楽は気持ちへのしぜんな橋で、そこをわたるいちばんの方法は、問いつめることではなく遊びです。自分の反応を声に出してふしぎがり、子どもの気分に歌を合わせ、むずかしいときにはおだやかな曲を、そして子どもに道を案内させる。質問はやめて、つながりは保つ。子どもは少しずつ、気持ちを表すことばと、気持ちを扱うやさしい道具の両方を手に入れていきます。
ポイント: 音楽で気持ちにふれるなら、声に出してふしぎがり、子どもについていくこと。こたえなければと感じさせる、テストのような質問はしないで。