リズムをまねすることで、子どもが学んでいること
大人が机を2回たたくと、小さな子がたたき返す。なんでもない、ほかのことのあいだの、ちょっとした瞬間に見えます。でもその小さなやりとりのなかで、子どもはかなり高度なことをしています。よく聞いて、パターンを覚えておいて、それに合わせて体を動かす。リズムをまねすることで何を学んでいるかを知ると、小さな遊びが、一日のなかでいちばんゆたかで、いちばん手間のかからない時間のひとつに変わります。
しっかりした注意で、聞く
リズムをまねするには、まずそれに気づかなければなりません。部屋のざわめきをこして、大人の音とそのタイミングに集中する。これはただ聞こえるのではなく、耳をかたむけることで、のちににぎやかな教室で先生の声を聞きわけるときにたよる力と同じです。リズム遊びは、じっとすわらせたり集中しなさいと言ったりせずに、その筋肉を楽しくきたえてくれます。
パターンを覚えておく
大人のリズムをくり返す前に、子どもはそれを少しのあいだ覚えておきます。短い「トン、トン、休み」を、再現できるまで頭にとどめておかなければなりません。これはワーキングメモリー、つまり頭のなかのメモ帳の働きで、指示についていくときや、のちに暗算や読むことに、みんなが使っているものです。パターンをまねして返すたび、その毎日の力を小さくのばしています。
順番のやりとりと、会話の形
リズムのまねっこには、決まった形があります。わたしの番、あなたの番、またわたしの番。それはまさに、人と話すときのリズムです。ことばがやってくるずっと前から、こうした音楽のやりとりが、伝えあうことには番があって、すきまを待ってこたえるのだと教えます。リズムをやりとりする家族は、会話のマナーを静かにリハーサルしているのです。
耳と体の協調
体の面もあります。音に合わせて手をたたく、足ぶみする、トンとたたくには、耳と動く体がいっしょに働き、タイミングをそろえる必要があります。だいたいでも拍に合わせるのは、小さな子には見た目よりむずかしく、その練習が、着がえ、お絵かき、のちにボールをとるのに使うタイミングと調整の力を支えます。少しずれた拍は失敗ではなく、それこそが練習なのです。
ことばと読むことの根っこ
話しことばには、それ自体のリズムがあります。日本語なら、ことばはひとつひとつの音の拍でできています。リズムに耳をかたむける子は、ことばの中の音を聞きとりやすくなることがよくあります。この音のパターンへの気づきは、ことばを音に分けはじめる、はじめての読むことを支えます。だからリズムのまねっこで学ぶことは、音楽だけでなく、文字の力にまで静かにつながっているのです。
自信とつながり
見すごしやすい、気持ちのごほうびもあります。子どもがたたいたパターンを大人がまねして返すと、気づいてもらえた、自分のアイデアはまねされるほど大事だったと子どもは知ります。「ぼくはできる、みんながこたえてくれる」という感覚への、小さいけれど確かな後押しです。ときどき子どもにリズムをリードさせて大人がまねすれば、力と同じくらい自信も育ちます。
学びがしぜんに起きる遊び方
こうしたことを直接教える必要はありません。いくつかの気楽な習慣が仕事をしてくれます。
- 最初はパターンを短く、2つか3つの拍から、だんだんのばす。
- リードを交代して、子どもがまねする番も、まねされる番も。
- 手拍子、ひざ、容器にスプーンと、いろいろな面と音を使う。
- 正確さではなく挑戦を喜んで、遊びのままに。
- まだ楽しいうちにやめて、もう一回やりたい気持ちを残す。
今のその子に合わせる
赤ちゃんはきれいにまねはしませんが、じっと夢中で見つめ、だいたい拍に合わせて手をふったりはずんだりするかもしれません。小さな子はかんたんなパターンをまねしはじめ、驚きのおわりがあるものが大好き。幼児期の後半なら、長いパターンを覚え、自分でつくり、歌の下で一定の拍をきざむこともできます。パターンは発達の表ではなく子どもに合わせ、成長とともに調整しましょう。
何かおかしいと感じたら
たいていの子はリズムのまねっこを喜んで楽しみますが、ペースはひとりひとりちがいます。時間がたっても音に反応しないように見える、大人の声のほうを向かない、幼児期に入ってもこうしたやりとりの遊びにほとんど興味を示さない、できていたことができなくなった、という場合は、地域の保健師さんやかかりつけの小児科医に伝えましょう。完ぺきな演奏者を探しているのではなく、聞いて、つながる、いつものしるしを見ているだけです。
もっと大きな意味
リズム遊びはお金もかからず1分で終わるのに、聞く力、記憶、協調、順番のやりとり、自信を、いっぺんにきたえます。遊んでいるあいだに、そのどれにも名前をつける必要はありません。子どもとリズムをやりとりし、大人のリードと同じくらい子どものリードについていき、楽しさのなかにたくさんの学びがたたみこまれていると信じましょう。
ポイント: リズムのまねっこは、学びの道具箱がまるごと変装したもの。短いパターンをやりとりし、リードは交代で、正確さではなく楽しさを道しるべに。