幼児に楽器をはじめて出すときは

幼児期になると、わざと音を出せる物に夢中になる子が多く、楽器をはじめて出すのにすてきな時期です。この年齢のねらいは、レッスンや技術ではありません。探ること、喜び、そして音楽は自分にもできるという感覚です。この心がまえさえ合っていれば、もしいつか本格的な学びが来ても、その上に積みあげられる、あたたかい土台ができます。

教えることより、探ることから

幼児は、ほかのことをすべてそうして学ぶように、楽器も、さわって、試して、何ができるか見つけて学びます。すぐに「正しい」やり方を見せたくなっても、こらえて。かんたんな楽器をわたしたら、まずは自由にたたかせ、ふらせ、こすらせ、試させましょう。はじめのうちの大人の役目は、持ち方を直す先生ではなく、いっしょに音に気づく、好奇心いっぱいの仲間です。遊び心こそが大事で、音楽を好きになる気持ちはそこに根をおろします。

はじめての楽器に合うもの

かんたんな打楽器が、しぜんな出発点です。技術がいらず、すぐに子どもにこたえてくれるからです。

  • 小さな太鼓か、たたいたりポンポンしたりできるじょうぶな容器。
  • マラカスや、お米を入れた手づくりのボトル。
  • 手首やハンドルにつけた鈴。かんたんにシャンシャン鳴ります。
  • ふるのとたたくのが同時にできるタンバリン。
  • はじめてちがう音にふれる、トーンチャイムや木琴、鉄琴。

たくさん買う必要はありません。家にある音の出る物のかごも、お店の物と同じくらい役に立ち、両方を楽しくまぜている家庭もたくさんあります。

安全で、じょうぶな物を

楽器を出す前に、少し安全のことを考えましょう。はずれる小さな部品がないか、とがったふちがないかを確かめ、持ち手のある物は元気に使われてもこわれないじょうぶさがあるか見ておきます。手づくりのマラカスは、中身が出ないようしっかりとじて。幼児はいつも口に入れる時期は過ぎていますが、遊び方はまだはげしいので、凝ったものより、じょうぶでよくできたもののほうが大切です。

いっしょに音を探る

慣れてきたら、楽器で何ができるかを、すべて遊びのなかでそっと広げていけます。いっしょにふしぎがりましょう。どのくらい小さくできる?どのくらい速く?雨みたいな音になる?かみなりみたいな?つま先歩きみたいな?かんたんなパターンをたたいてまねしてもらい、それから子どもにリードさせて大人がまねします。楽器がただの音を出す物から、伝えあう方法に変わり、練習のように感じさせずに、聞く力と思いどおりに動かす力をのばします。

予定表ではなく、興味についていく

ひとつの楽器に夢中になってずっとそれをほしがる幼児もいれば、1分のうちにマラカスから太鼓、鈴へと飛びまわる幼児もいます。どちらでもかまいません。次に何を試す「べき」かという計画ではなく、子どもの興味についていきましょう。タンバリンが大好きでほかには目もくれないなら、タンバリン名人にさせてあげて。この年齢では、義務でいろいろ試すより、自分からの心からの夢中のほうがずっと価値があり、遊びのままでいられます。

みんなで楽しむ

楽器は、いっしょに遊ぶのにぴったりです。みんながひとつずつ楽器を持って楽しくにぎやかにする家族バンドを始めたり、合図で音楽が止まるストップ遊びをしたり。拍を決めるリーダーを交代で。ほかの人と演奏することで、聞くこと、待つこと、みんなに合わせることを学びます。どれも音楽の外でも大切な力で、楽器がひとりの練習ではなく、いっしょの楽しみの一部になります。

音とは、やさしくつきあう

正直に言えば、楽器はうるさく、それに疲れてしまうこともあります。禁止するかわりに、いつ、どう使うかを形づくりましょう。楽器の時間と静かな時間を決め、いちばん大きくたたくのは顔や耳から離して、音を小さくしたいときはマラカスのようなやわらかい選択肢を。禁止のきまりではなく、一日のリズムとして伝えれば、子どものやる気は保たれ、大人の耳とご近所の気持ちも守れます。

レッスンとプレッシャーについて

幼児期に、本格的なレッスンを急ぐ必要はありません。早くから技術を求めると、子どものしぜんな喜びをしぼませてしまうことがあります。ある楽器に強く、長く心がひかれているようなら、あとで、遊びを大切にしたやさしい教え方でそれを追いかければいいのです。今いちばんの贈り物は、探る自由です。楽器を喜びと自分の考えに結びつけている子は、その前向きな気持ちを、これからのどんな学びにも持っていけます。

発達について、やさしいひと言

音楽遊びは、聞く力、体の協調、注意力をのぞく小さな窓になります。子どもはみんなちがうので、興味やじょうずさがいろいろなのはまったくふつうです。音や音楽に反応しない、大人の声が聞こえていないように見える、年齢から考えてことばを使ったり遊びに加わったりしない、できていたことができなくなった、という場合は、地域の保健師さんやかかりつけの小児科医に伝えましょう。そうでなければ、自分の手で何が起こせるかを子どもが見つけていく姿を、ただ楽しんでください。

いちばん大切なこと

幼児に楽器を出すのは、音楽家を育てるためではなく、火をともすためです。かんたんで安全な楽器を出し、自由に探らせ、いっしょに遊び、興味の向くほうへついていく。プレッシャーは下げて、喜びは上げて。そうすれば、音楽は自分でつくれるものだという、あたたかく長く続く感覚を子どもに手わたせます。

ポイント: かんたんで安全な楽器を出したら、幼児に自由に探らせて。興味についていき、レッスンではなく楽しい遊びのままで。

CDC, Positive Parenting Tips

NHS, Play ideas and reading