くり返し歌うことで、子どもは歌を覚えていく
今週もう40回、同じわらべうたを歌って、これで何か役に立っているのかしらと思ったなら、元気を出してください。そのくり返しは、子どもががんこなのではなく、脳がいちばん好む学び方そのものです。くり返し歌うことと子どもの発達のつながりはよく知られていて、それを知ると、ちょっとうんざりする習慣も、50回目でさえ前向きにとらえられるようになります。
脳はくり返しが大好き
小さな子は、パターンと予想で学びます。はじめて歌を聞くときはすべてが新しく、ただ受けとっているだけ。10回目には何が来るかわかっていて、その予想できる安心が、もっと多くに気づく頭の余裕をつくります。ある言葉、メロディー、歌詞についている動き。くり返すたびに記憶が少しずつしっかりし、やがて歌はその子のものになります。むだどころか、もう一度歌を聞くことこそが学びの仕事なのです。
くり返しにかくれたことば
歌は、ことばを運ぶすばらしい乗り物です。話しことばよりゆっくりで、韻をふみ、くり返し、ことばを動きや気持ちと結びつけます。どれも新しいことばをつかみ、とどめておく助けになります。「おおがたバスにのってます」を100回目に聞く小さな子は、語彙、文のリズム、ことばの音を、覚えるためにできた形で吸収しています。くり返し歌うことと発達のつながりがいちばんはっきり見えるのがここです。歌うことは、子どもがわかることば、そしてやがて使うことばを、静かに育てます。
ことばだけではない
よいことは、ことばよりも広がります。
- 記憶。歌をまるごと覚えておくことは、育っていく記憶のしっかりした練習です。
- 予想。「あたま かた ひざ ポン」のポンの前の間を知っていることが、注意力とわくわくして待つ力を育てます。
- 気持ち。なじみの歌はほっとさせ、子どもの安心感を支えます。
- 自信。知っている一節でいっしょに歌えると、本当にうれしい「できた」になります。
特別なプログラムは何もいりません。同じ少しの歌をたびたび歌えば、ついてくるのです。だから子どもは、あれほどしつこくくり返しをせがむのです。
同じ歌を、もう一回
大人にとって50回目の「きらきら星」はたいくつです。でも子どもにとっては深い満足があります。毎回、知っていることが確かめられ、少しずつ身についていくからです。予想できることは安心で、身につけることはわくわくします。予想できて、やがて自分で歌える歌は、大人がたいていのことを決める世界で、めずらしい「自分で動かせる」感覚をくれます。そう考えると、「もう一回」は歌がちゃんと役目をはたしているしるしです。
くり返しを、大人にとってもらくに
うんざりしてもいいのです。気持ちを保つやさしい方法があります。歌はそのままで、小さなことをひとつだけ変える。速さを変える、ささやき声で歌う、おもしろい声にする、大好きなことばの前でぐっとゆっくりにする。子どもが求める安心できる形は保ちつつ、大人の頭にもちょっぴり新しさを。子どもに一節歌ってもらうなど交代にすれば、くり返しを全部ひとりでかかえなくてすみます。
たくさんではなく、少しをくり返す
意外なことに、少しの歌をたびたび歌うほうが、たくさんの曲を一度ずつ聞くより効果があります。小さな子には、広さより深さ。毎日もどってくる3、4曲のお気に入りは、動きもことばも全部、ちゃんと身につきます。50曲をざっとなぞってもそうはなりません。だから、いつも新鮮にしようとしなくていいのです。少しの歌を子どもがすりへるほど歌い、お気に入りが本当にその子のものになってから、ときどき新しい歌を足しましょう。
そっと確かめたいサイン
くり返しが大好きなのはまったくふつうで、たいていはとてもいいしるしです。そのうえで、全体のようすにも目を向けておきましょう。歌や大人の声に反応しないように見える、長いあいだ新しいことばをまったく覚えない、そろそろと思う年齢になってもなじみのわらべうたにいっしょに加わろうとしない、以前あったことばやできていたことがなくなったように見える、という場合は、乳幼児健診などのいつもの機会に伝えましょう。どれも気軽に話してみて、必要なら聞こえや発達を確かめるきっかけで、それ自体を心配する理由ではありません。
覚えておきたい安心
100回目に感じるほど同じ歌を歌うたび、子どもの記憶、ことば、安心感をいっしょに育てています。根気をためされるくり返しこそが、まさによいことを生んでいるしくみです。くり返し歌うことと発達はとても深く結びついていて、つい申し訳なく思ってしまうことが、じつはいちばん価値ある贈り物のひとつなのです。だから、もう一度歌いましょう。「もう一回」は、学んでいる音です。
ポイント: くり返し歌うことは発達と結びついています。少しのお気に入りをたびたび歌えば、ことば、記憶、安心感が育ちます。「もう一回」は学んでいるしるしです。